美化係の聖女様

しずもり

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聖女召喚は成功した、、、ハズ?

魔王ってなんですか?

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翌日、昨日の食堂の盛況振りで食材が足りなくなってしまったので昼の営業は泊まり客以外は無しになった。

今泊まっているのは私と冒険者2人で朝から冒険者たちは仕事に行ったので実質休みの様なものだ。

その代わりジャックさんとエミリーちゃんはリンデルさんの所を手伝いに行っている。本当にメアリーさん一家は親切で良い人たちだよね。



そういう訳で客室と食堂をメアリーさんと念入りに掃除した。お昼休憩になった時にメアリーさんに明日アサド村を出て行く事を伝えた。


「2、3日って言ったけれどもっと居ていいんだよ?食堂に来るお客は増えたけど部屋は空いているんだから。」


私がメアリーさんの言葉を気にして出て行こうとしている、と思ったようでメアリーさんは申し訳無さそうにしていた。


「違うんです。私が決めた事なんです。私はこの国の事を全く知らないのでもっと知りたいんです。それに色々な場所を旅してみたいんですよ。」


何故、この世界に来てしまったのかを知りたいとは流石に言えないよね。



「・・・・気づいたらこの国にいた、と言ってたわよね?何か特別な事情があるのかしら?」


少し黙ってからメアリーさんが言った。そう言えば最初に会った時に言ってたな。うっかり忘れてた。ダメじゃん、私。



「えーっと、、、そうですね。私、そう言ってましたね。ははっ、考えても自分でもよく分からないんですよ。何故、森の中に居たのか。

でもここで待っていても理由は分からないなって、その原因を知りたいんです。」


全てでは無いけれどキチンと自分の気持ちを話をした方が良いよね。



「・・・そう。それなら仕方が無いわね。私たちでは力になってあげられない問題だから。」


メアリーさんは少し寂しそうに言って黙った。


「メアリーさんたちにはもう十分助けて貰いました。メアリーさんに会わなかったらこうして呑気に宿屋には居なかったと思いますよ?」


メアリーさんには安心して貰いたくて笑って言葉を返した。そもそも原因答えを見つけられるかも分からない問題だからね。


「・・・あのね、最初に魔獣が何かって聞いてきたでしょ。この国では見た事は無くても魔獣の事は誰でも知っている話なの。

近くの国でも被害や目撃情報は無くても存在を知っているのは普通の事なのよ。滅多に見かける事は無いけれど存在している事は事実だからね。

だからリオが全く知らない事に驚いた。魔獣を知らないなんてどれほど遠い所から来たんだろうってね。

私にはよく分からないけれどリオが知りたいって思ったんだから、森の中に居た理由を知る為に旅をするのも良いと思うよ。ただ、、、。」


そう言ってメアリーさんは一旦口を閉じた。そしてどう言えば良いのか分からないよいに口を開いては閉じを繰り返し、ちょっと言いにくそうにまた話し始めた。



「リオ、魔王の話を知っているかい?」


「まおう、、、ですか?」


いきなり思ってもみない言葉がメアリーさんの口から出てきて呆気に取られる。


「そう。この国で有名な物語に『魔王と勇者』と言う話があるんだよ。」


え、魔王と勇者?確か弟が昔やっていたゲームソフトでそんなのが出てきてた気がするけど、そんなお伽話に出てくるような人物がどうしたんだろう?


「その様子だと知らないようだね。その物語は1000年以上前に世界で起こった本当の出来事なんだよ。

そしてこの国の勇者が魔王を倒したとずっと語り継がれているのよ。魔獣はね、その魔王が作り出した生物って話なの。」


「本当に魔王なんて存在するんですか?」


魔王の3次元の姿が全くイメージ出来ないな。アニメとかゲームのイメージしか思い浮かばないよ。


「そうだよねぇ。私たちも子どもの頃から話を聞いてきたから、神様と同じ様に存在していると信じてきたんだよ。


でもその後も魔王が復活する度にどこからか勇者と聖女様が現れて魔王を倒した、という話はあるのよ。一番新しい話では200年前の7代目勇者の物語だったかしら?」


えぇ?本当に居るんだったら魔王復活しすぎじゃない?倒しても倒しても復活するってそれは倒しきれてないのか、それとも魔王も代替わりしているのか、、、、。


「やっぱり驚くよねぇ。実は何でこんな話をしたのかと言うとね、何年か前からこの国では魔王が誕生しただとか復活したって噂があるんだよ。」


「えぇっ!この国でですか?でもっ、皆さん普通に暮らしていますよね!?」


驚いた。RPGの世界の話がリアルでこの国で?そんな雰囲気全くないんですけど?


「だからまだ噂だけなんだよ。この村の先にはね、勇者の子孫が暮らす勇者村という村があるんだけど、そこの村の連中が何年か前に『魔王が誕生した』だとか言い出してね。


その村は何て言うかちょっと閉鎖的というか変わった村で勇者の子孫だけで村を形成しているらしいの。

本当にそうなのかは知らないよ?村に行くのは構わないけど移住はお断り、村人が他へ移り住むのも認めないって言うような村でねぇ。

まぁ、変にプライドが高い人の集まりなんだろうね。」


メアリーさんのちょっと困ったような呆れたような言い方に何となく察せられた。

そう言う話ってどこにでもあるよね。

華族や財閥があった頃からの高級住宅街で普通に洗濯物を外に干したら『貧乏ったらしい事しないで。景観を損ねる。』とか言われただとか、何代も住み続けていないとずっと余所者扱いだとか。


あれ?ちょっと例えが違う?

まぁ、日本も村八分って言葉があるしね。ちょっと時代を遡れば、村独自の不思議な風習が沢山あったと思う。極端なところではその風習と閉鎖的空間から大量殺人にまで発展した、なんて話もあったっけ。後に小説の題材に使われたとか。


「村人が偶にアサド村に来た時に愚痴というか忌々しいって感じで言っていてねぇ。でもうちらは何言ってるんだろうね、なんて聞き流していたんだよ。

けれどその頃から王都からの冒険者が依頼を受けて年に何度か調査に来るようになってねぇ。


半年ぐらい前からあの森もおかしくなるし魔獣の被害を受けたという話がポツポツ聞かれるようになって私たちも何かおかしい、って思い始めたの。

それで魔王が復活したんじゃないか、と噂を信じる人が増えて来ているんだよ。」


「はぁ。」


魔王の話になるとそれこそ本当に物語やゲームの世界でしか馴染みのない存在に対して実感が湧かなくて生返事になってしまった。


「リオがピンと来ないのもよく分からないよ。私らだって同じようなもんさ。

けどねぇ、魔素が増えてきているのも魔獣の被害の噂が増えてきているのも本当の話だよ。森にも入れなくなるし、この村と隣の街を行き来する間にも魔獣が出たって噂を偶に聞くくらいだからねぇ。

今じゃ馬車や歩いて出かける人は魔除けの草をすり潰してた物を体に塗ったりお香の様に焚いて移動する人が増えているんだよ。効果がどれぐらいあるにか分からないけどね。」


魔除けの草?魔獣が嫌いな匂いでもするのかな。


「その植物をたくさん栽培して道や庭に植えたり出来ないんですか?」


「これも勇者村に関係あってね、勇者村でしか育たない植物で魔除けの香を作るにも勇者の子孫にしか出来ないらしいよ。」


うーん、それは微妙だなぁ。メアリーさんもちょっと疑っていそうな口調だった。まだそんなに被害が出ていないなら効果の証明は難しそうだよね。



「まぁ、魔獣が増えたのは魔王の復活が原因かどうか分からないけどさ、そういう噂がある中で何処ともなく女の子が一人で旅をするのは危険があるって事だよ。

魔獣で無くとも野盗や悪い事を考える人間なんて何処にでも居るからねぇ。」


確かにそうだ。一人旅を日本に居た時の感覚で考えていたけれど、魔獣の事や普通に野盗が居る事さえすっかり忘れていた。

馬車に乗っていれば安心て訳じゃないんだな。でもだからと言って旅をしない訳にもいかない。


「まぁ、そうは言っても旅をしなきゃいけない場合もあるよね。

今日は昼過ぎまでは暇だからさ。聞きたい事があったら何でも聞いてよ。

隣の街に着いたら私の知り合いの宿に泊まれば良いし、リオの荷物を買い取って貰うのにいい店を教えるよ。そこで必要な物も揃えられるからさ。」


私の気持ちを察してくれてメアリーさんはそれから私に色々と教えてくれた。





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