美化係の聖女様

しずもり

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聖女召喚は成功した、、、ハズ?

郷土料理?

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1階の食堂には宿泊客の男性2人と村人の30前後ぐらいの男性が3人同じテーブルで一緒に飲んでいた。エミリーちゃんが言うには宿に泊まっている2人の男性は40代前半ぐらいの冒険者らしい。

偶にこの宿を利用してくれる常連さんとの事。だから村人たちと仲良さそうなのかな?



私たちが降りて来るとメアリーさんにエールと料理を運んでくれと頼まれた。


「おっ、見ない顔だね。新入りさんかい?メアリーさ~ん。こんな若いお嬢ちゃんをどこで見つけてきたの~?」


だいぶ出来上がっているみたいな村人Aさんが厨房に立つメアリーさんに大声で聞いている。お嬢ちゃん・・・もしかして未成年扱い?


「ロンっ煩いよ!リオは宿泊客だけどここに居る間に宿屋を手伝ってくれる事になったんだよ。困らせるんじゃないよ!」


黙々と料理を作るジャックの横で皿に盛り付けているメアリーさんも大声を出す。村人Aさんはロンさんというらしい。


「へぇ~。宿泊客だったのかぁ。おぅ、エミリーは今日も美人だねぇ。エールが更に美味しくなるよ。」


「ボブさん、だったらもっと注文してよ。ボブさんたちが沢山飲んでくれたら私のお小遣いが増えるんだから。」


村人Bさんもといボブさんがエールを運んできたエミリーちゃんにご機嫌で話しかける。


え、お嬢ちゃんと美人・・・。私もお世辞でもいいから美人がいいなぁ。25でお嬢ちゃんは無いわぁ。


ボブさんは私と同じアラサーぐらいに見えるけれどエミリーちゃんに気があるのかな?エミリーちゃんがエールを運んでくる度にニコニコとエミリーちゃんを見ている。


「ジャックさんの料理は美味ぇけどいつも食べてるからなぁ。偶にはもっと違うモン食べてみてぇなぁ。」


「ケニー!文句があるなら食べなくて結構よ!」


メアリーさんはそう言いながらも怒った様子は無いのでよく交わされる会話の内の一つなのかな。まぁ、小さな村で食堂も2軒しか無いからね。常連さんと女将さんのよくあるやり取りってやつだね。


「やぁ~、エールをもっと美味しく飲めるようなツマミが食べたくなるよねぇ。」


「まぁ、こんな辺境の田舎じゃ手に入る食材も限られるしなぁ。」


そんな事を喋りながらワイワイと飲んでいる5人のテーブルを見ると確かに酒の肴っぽい物はあまり無いかも?サイコロステーキっぽい物とか野菜炒めっぽい物に何かの豆。


ジャックさんの居る厨房に入って籠に入っている野菜を見るとじゃがいもがある。さっき鶏肉っぽいのもステーキみたいに焼いていたよね?


「あのメアリーさん、私も料理を作ってお出ししても良いですか?エールに合いそうな料理があるんですけど。」


タダで宿泊させて貰うんだからちゃんと働かないと、とダメ元で聞いてみる。


「いいけど大した食材は無いよ?説明してくれりゃ私もジャックも一緒に作るけど。」


「あ、じゃお願いします。使うのはじゃがいもと鶏肉です。あと幾つかの調味料を使いますが。」



鶏肉はもちろん唐揚げ。飲み屋メニューで必ず注文される定番料理だよね。醤油は無いみたいだからニンニクを細かく刻んで香辛料と酒を少しいれて揉み込む。

少し時間を置いている間にじゃがいもはポテトチップスとフライドポテトにする為に切って水にさらす。数分してからしっかり水気をきっておく。


油は貴重なのかな?とりあえずフライパンに1cmくらい油を入れてもらってジャックさんに揚げて貰った。この世界、『揚げる』と言う調理法はメジャーじゃないのかな?ジャックさんがすごく戸惑っていた。


揚がったじゃがいもにサッと塩振って完成。エミリーちゃんも気になったみたいで出来上がりのフライドポテトを一つ手に取って口に入れると目を丸くしてた。


「さ、ご希望の新メニューだよ!これを食べてどんどんエールを注文して頂戴よ!」


メアリーさんも実はこっそり味見していて『これはイケる!』と張り切ってテーブルに運んで行った。次は唐揚げ。そろそろ味も染み込んだと思うので粉を軽くまぶして油で揚げる。油が少なめなので唐揚げの大きさも少し小さめにした。



出来上がる前からいい匂いがしていたのでエミリーちゃんも給仕そっちのけで厨房に張り付いていた。なんだかロンさんたちも匂いつられてソワソワしている。


唐揚げもメアリーさんがテーブルに運んで行ったらすぐに歓声が上がってた。やっぱり今まで無かった料理なのかな?油で調理するだけの簡単料理なんだけどね。


「うっめぇ!何だよ、これ。じゃがいもってこんなに美味かったのかよ。」


「こっちの肉も旨いぞ。エールに合うな。」


「俺も依頼で国中に出かけるがこんな料理食べた事なかったぜ。」


皆さん、お口に合ったようで何より何より。隣ではエミリーちゃんもハフハフ言いながら唐揚げを食べている。


「リオ、凄いね。コレは故郷の料理なのかい?」


メアリーさんも口をもぐもぐさせて聞いてきた。


「え、そうですね。郷土料理、になるのかなぁ。あ、唐揚げは味付けは調味料を変えてみたり酢にちょっと付けて食べてみても美味しいですよ。レモンがあったら絞ってかけるのもオススメです。」


そう言ったらジャックさんが素早くお酢を皿出して唐揚げをつけて食べ始めた。あ、ジャックさんも結構気に入ってくれてたんだね。表情変わらないから気づかなかったよ。


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