美化係の聖女様

しずもり

文字の大きさ
上 下
6 / 54
聖女召喚は成功した、、、ハズ?

メアリーさんの宿屋にて

しおりを挟む
今、私は納得する気持ちとそれに抗いたい気持ちでモーレツに揺れている。あれから程なくメアリーさん一家の宿屋があるアサド村に着いた。村にある宿屋はメアリーさんの家だけだ。旅人も頻繁に訪れる訳ではないので1軒だけで事足りるらしい。


そんな状態だから勿論宿屋だけではやっていけないそうで1階は食堂も兼ねている。村にある食堂はあともう1軒だけ。メアリーさん曰く『田舎村なんて大体こんなモン』だそうだ。


荷台の2人だけで私を泊めるやり取りを決めてしまって大丈夫だろうか、と心配していたら御者をしていたご主人 ーメアリーさんにお父ちゃんと呼ばれていた人ー にも話は聞こえていた様で特に異存はないと言われてホッとした。因みにご主人の名前はジャックさんで年齢は42歳だそうだ。顎髭を生やしていたので年齢不詳に見える。



 そして冒頭の私の気持ちはメアリーさんたちの娘さんのエミリーさんに会った時の事。メアリーさんが私を娘さんより年下と思った訳がよ~く分かったからだ。エミリーさんはボンッキュッボンなナイスバデーの持ち主でセクシーフェロモン溢れる色気のある美人さんだった。



あれは本当に勝手に溢れ出てるフェロモンだね。どうやったら色気が出るの?と聞いても本人にもきっと分からないだろう。コレを見慣れていたら私なんてお子ちゃまだ。未だ色気とは無縁ですけどいつか溢れ出る事有りますかね?



 そういう訳で日本人は童顔、だけでは無い何かに気付かされモヤモヤとしてしまったのだ。そんな私の気持ちをよそに見た目セクシーダイナマイトなエミリーさん(あぁ、付けが似合わないのが羨ましいなぁ)は異国風味溢れる私の容姿や荷物に興味深々でフレンドリーに話しかけてくれる。



「ねぇねぇリオちゃんっ、その髪飾り可愛いね。ちょっと見せて。」



私の髪は肩下10cmぐらいの長さで会社に行く時はだいたいバレッタを愛用し家ではシュシュかゴムが定番。髪は昨夜のままだったからバレッタをしていた。

外してエミリーさんに渡すとこの世界には無いものだったのか、珍しそうに金具をパチンパチンと何度も弄っていた。どうやら似たような物はあるものの金具で留めるのではなく簪のように棒を通すタイプが主流らしい。



あまりに熱心に見ていたのでそういえば、と借りた部屋の隅に置いたトートバッグの中に手を突っ込んで中を探る。捨てる予定だったプチプラグッズにバレッタも有ったんだよ、確か。



「エミリーさん、もし良かったらこの中から欲しい物があったらプレゼントするよ。」


とバレッタ3個とシュシュ2つを見せる。コレ全てワンコインなんだよね。一応大きい方の硬貨ではあるけれどスーツのクリーニング代のお礼としてはどうなんだろう?それなりの物を強請られ続けて地味に要らないプチプラグッズが増えていったんだよねぇ。せめて私の好みに合致していたら良かったんだけどそんな事に気を回す事はしなかったからなぁヤツは。




「えぇっ!いいの?だってこんなのここら辺じゃ売っているの見た事無いよ?隣の街だって見た事ないもん。」


喋ると年相応で可愛いなぁエミリーちゃんは。(心の中でならちゃん付けでいいか)



「うん、元々貰い物で家にいる時しか使っていなかったんだ。(こんなんでも付けないと煩かったからね。)これは宝石じゃなくてビーズっていう物だから高価な物ではないの。知り合った記念に貰ってくれると嬉しいなぁ。」


どうせ捨てる予定だったしね。そんな物をプレゼントするなんて私の方が申し訳ない。何が嫌だったってこういうプチプラグッズをそれなりの価格の物をって風を装って渡してくるところ。人気商品風のデザインの物を選んで渡してくる事が嫌だった。


私が気づいているとは思っていなかったみたいなのが余計に腹立だしかった。笑顔で受け取って、でも本当は私好みの物を選ぶ気持ちがこれっぽっちも無いんだなって貰う度に悲しかった。プチプラだって私の事を考えて選んでくれた物だったら嬉しく思っていただろうから。



エミリーちゃんは真剣にウンウン唸りながらバレッタを1つ選んで大事そうに手の中にそっとしまい込んだ。本当にごめんね。私にはそんなに大事そうにしてもらう程思い入れも愛着もない物だったんだ。けれどそんな姿を見て貰った時のやるせ無かった気持ちも少しは報われた気がするよ。



その後、エミリーちゃんと一緒に食堂の手伝いをする為に1階に降りていった。前を歩くエミリーちゃんは貰ったばかりのバレッタをつけて、余程嬉しかったのか足取りは弾むように軽やかだった。エミリーちゃん、ワンコイン商品でごめんよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

公爵令嬢の私に騎士も誰も敵わないのですか?

海野幻創
ファンタジー
公爵令嬢であるエマ・ヴァロワは、最高の結婚をするために幼いころから努力を続けてきた。 そんなエマの婚約者となったのは、多くの人から尊敬を集め、立派な方だと口々に評される名門貴族の跡取り息子、コンティ公爵だった。 夢が叶いそうだと期待に胸を膨らませ、結婚準備をしていたのだが── 「おそろしい女……」 助けてあげたのにも関わらず、お礼をして抱きしめてくれるどころか、コンティ公爵は化け物を見るような目つきで逃げ去っていった。 なんて男! 最高の結婚相手だなんて間違いだったわ! 自国でも隣国でも結婚相手に恵まれず、結婚相手を探すだけの社交界から離れたくなった私は、遠い北の地に住む母の元へ行くことに決めた。 遠い2000キロの旅路を執事のシュヴァリエと共に行く。 仕える者に対する態度がなっていない最低の執事だけど、必死になって私を守るし、どうやらとても強いらしい── しかし、シュヴァリエは私の方がもっと強いのだという。まさかとは思ったが、それには理由があったのだ。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...