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【 番外編 】ざまぁ、な話。その後の話。
王太子アレクシス 〜 愛しい貴女の事情 〜
しおりを挟む彼女との初めてのお茶会はー。
彼女が聖女サーヤだと証明される出来事とともに即求婚。
そして彼女から衝撃の事実を聞かされ、別れも覚悟したが、結局、彼女の本心と決意を聞き、正式に婚約する運びとなった。
何とも濃密なお茶会だった。
あぁ、そういえば、この半年、カイウスたちの帰還後から落ち着きがなくなっていった城内の原因であろうソレの件もあったな。
あの時の彼女の優美で洗練された浄化をする姿のなんと美しかった事か。
穢れを祓う旅の成功で浄化され、もうこの世に存在しない筈の穢れ。
穢れの目撃が報告され始めたのは三ヶ月ほど前。最初は『まさか!?』と誰もが思った。
聖女ナターシャが瘴気溜まりの地を封印し、彼らが穢れを祓う旅から帰還してまだたったの三ヶ月しか経っていない。
それなのにもう穢れが復活したのか!?
結局は少ない目撃情報に『浄化のやり残しでは?』という意見で一旦、皆が納得した。カイウスたちは国にある十二の神殿を訪れ、穢れを浄化しながら瘴気溜まりの地へと赴いた。しかし、それは全ての穢れを祓い切った訳ではなかったのだろう、と。
だがしかし、その後の穢れの目撃証言は少しづつ増えていった。そして小さな異変は王城でも起こっていたのだ。
そうして偶然か、必然だったのか?理由は何であれ、再び聖女サーヤが召喚された。但し、その事に気付いたのは一部の者のみ。
私はクリスが聖女サーヤであった事に浮かれ、正式に私の婚約者になった事に浮かれていたのだ。
この国の王太子である私は、もっと穢れに対して注意を払い、聖女サーヤが再召喚された本当の意味を考えねばならない立場であったのに。
だから私は再び深い暗闇の深淵を覗く羽目になったのか!?
彼女との二度目のお茶会は、前回から五日後の事だった。前回と同じく庭園の四阿でテーブルを挟んで向かい合うこの距離がもどかしい。
テーブル、要らなくないか?
そんな事を考えて彼女を見れば、何か私に言いたい事があるのか?ソワソワとした雰囲気で私をジッと見つめては直ぐに目を逸らす、を繰り返している。
「クリス。何か私に言いたい事でも?もしかして白亜宮に何か問題でもあっただろうか?」
彼女には正式な婚約者となって直ぐに、母上が婚約者時代に住んでいた白亜宮へと移ってもらった。まだ正式に彼女が私の婚約者に決まった事は公には公表されていない。婚姻の日取りも決定していないが、王太子の婚約者として待遇をする事で既成事実を作り外野を黙らせる目的が私にはあった。
まぁ、宰相と国王にはそう言ってゴリ押ししたが、早く彼女を囲い込みたいだけの事だったのだが。
だって、まだ彼女は私の事は愛してはいないだろう!?
『やっぱり元の世界に戻りたい!』と言われれば、私は受け入れるしかないじゃないか!
「あ、いえっ。とても落ち着くというか、快適に過ごさせて頂いていて、、、。でも、こんな良い待遇を受けて良いのかと。」
「問題が無いのならば良かった。それでは別に何か悩み事でも?
貴女はこの城の中に相談する様な相手はまだ居ないのだろう?
居たとしても貴女が何かに困ったり悩みを打ち明ける一番の相手は、いつも私でありたいのだ。
どんな些細な事でも良い。遠慮せずにどうか私にだけは打ち明けて欲しい。」
彼女の黒というよりは琥珀色に近い瞳を見つめて、私の想いを伝えれば彼女は何かを決心したように小さく頷いた。そして左右に控える侍女と護衛たちを気にする素振りを見せた後、徐に立ち上がり座っていた椅子を持ち上げた。そして向かい側に座っている私の隣に移動してきたのだ。
何故、隣に?
内心驚いている私に気付かずに、彼女は更に驚きの行動に出た!
彼女は他の者には聞かせたくなかったのか、腰を浮かせると私の方へと体を寄せてきた。そしてその愛らしい顔を私の耳元まで持ってくると、その姿を他の者には見せまいとするかのように、小さな愛らしい手で口元を隠し囁いてきたのだ。
「あ、あの、アレクシス殿下の正式な婚約者になってしまってから気付いたのですが、、、。
え~と、王太子の婚約者は、しょ、じゃなくて、、、純潔でなくても大丈夫でしょうか?」
はぅっ!!
か、か、か、彼女の囁き声が耳元でっ!
ふぁっ!?
い、今、彼女の息が頬を掠めたような?
こ、これは甘い誘惑、というやつでは?
私の表情は周囲の者たちにはいつも通りに見えていただろう。だが脳内では『もっと彼女を堪能したい!』と本能のままに手が彼女の腰へと動こうとした瞬間、ふと彼女の言葉が脳内で再生された。
『純潔でなくても大丈夫でしょうか?』
・・・・・・。
何が?
王太子の婚約者?
王太子は私で、婚約者はクリスだ。
王太子の婚約者は、純潔でなくとも良いのか、だと?
そ、それはつまり、、、、。
っ!!
な"ぁぁぁぁあ~~!!!
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