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【 番外編 】ざまぁ、な話。その後の話。
元親友のその後 3
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( 紗夜 視点 )
元親友とは高校が一緒で大学も一緒。
だけど別に仲が良くて進学先を一緒にした訳じゃない。ただの偶然だ。
高校では高一の時に同じクラスだったかなぁ?というぐらいの認識で、違うグループにいたので会話すらした事がなかったと思う。
それにその頃の私はまだ自分の能力に振り回されていて、高校の友だちと過ごす事ってあまり無かったんだよね。
だから同じ大学に進学していたと知ったのは、大学で入会したサークルでの顔合わせの時だ。
サークルの集まりで偶に私を見てくる事があったから『どこかで見た事ある?』という感じだったんだと思う。
まぁ、そんな感じで当初は、会えばペコリと挨拶を交わす程度の友だち付き合いとも呼べないような間柄だった。一度も挨拶を返された覚えは無いんだけれどね。
それなのに何故、親友と呼ばれるようになったのか?
ある日を境に元親友が私に近付いてくるようになったからだ。
構内のベンチで具合が悪そうに座っている彼女に声を掛けた事がきっかけで懐かれたように思う。
それも無理もない事だなぁ、と思うんだよね。
その時に見かけた彼女の頭から肩にかけてベッタリと黒いモヤのような見るからにヤバそうな何かが纏わりついていた。
顔見知り程度の間柄の人ではあったけれど、視えてしまう私には無視出来ないソレに気が付いて、思わず声を掛けて隣に座って背中を摩るようにして祓った。
暫く摩っている内にその黒いモヤの様なモノは無くなったのでホッとしたら、彼女も急に体調が良くなった事に驚いているようだった。
この時、私はその黒いモヤを悪い霊になりかけたモノだと思っていた。" 穢れ "を見てきたからそうと勘違いしてしまったのだけど、暫くしてソレが霊とは違うモノだと気が付いた。
親しくなってからは、会う度に黒いモヤを纏っている彼女にそれとなく聞いてみれば、中学生ぐらいから偏頭痛と肩こりに悩まされるようになったという。
いつもはそうでも無いのに、時折、体調を崩す程だと言っていたけど原因は確実にソレだと思った。
頻繁に顔を合わせるようになると、黒いモヤが亡くなった人の霊では無い事に気付いた。
それと同時に他のサークルメンバーや彼女と同じ学科の子たちが、元親友が居ない時に話しかけてくる彼女に関する話で、ソレが生きた人間からの怨みの念なんだろうな、と理解した。
だから何度も祓っても気がつけば元親友に纏わりついていたのだ。
一緒に過ごすようになれば彼女の性格に難があるのはすぐに事実だとよく理解出来た。私を見る目付きに嘲りの色が浮かぶ事はあったし、態度や言葉の端々に私を下に見ている事に嫌でも気付く。
最初は『何かに憑かれていて放っておけないなぁ。』という気持ちで一緒にいたけれど、段々と絆されてしまったんだろうなぁ。
だって一緒にいて" 楽しい "と思う時間が数えきれない程あったのも事実だから。
だから彼女の難アリの部分も含めて付き合ってきたつもりだ。勿論、友だちだとして何度も彼女を諌めもした。
その結果かどうか分からないけれど、私に彼氏が出来た時に手を出そうとする素振りも見せなかったし、周りの子たちとの関係も少しづつ改善されていたように見えた。
社会人になった頃からは黒いモヤは少しづつ視えなくなっていたしね。
相変わらず『偏頭痛と肩こりが~。』みたいな事は言っていたのは気になったけど、会う機会も減ってたし、黒いモヤばかりが原因ではなかったのか、と思っていたんだけれどなぁ。
そう言えば最後に会った時にも黒いモヤは視えなかったっけ。
だからまさかあんな風に裏切られとは予想もしていなかったんだよねぇ。
まぁ、霊に好かれやすい元婚約者と恨まれるような事ばかりして黒いモヤを纏わりつかせている元親友って案外お似合いかもね。
二人の事はショックだったし腹も立った。今思い出しても二人の裏切り行為は許す事など出来ないと思う。
でも二人との縁は私がこちらの世界へ来た事で完全に切れた。だったらいつまでもそれに拘っているのも時間の無駄だ。放っておけなかった事ももう私にはどうする事も出来ないし心配する気持ちも起こらない。
まぁ、せめて少しは" 自業自得 "とか" 因果応報 "なんて言葉がピッタリな目に遭っているといいな、と思ってしまうのは仕方ないよね。
( 元親友 視点 )
『だってあの人、邪魔だったのよね。』
「えっ?誰?」
不意に耳元で聞こえた声に横を向いても後ろを見ても誰も居ない。当たり前だ。だって此処は私の部屋だもの。
誰も居ない筈なのに聞こえたその声はとても愉しそうだった。クスクスと笑い声も聞こえた気がする。
『やっと!やっとわたしたちの好きに出来るわ!』
「私たち?ねぇ、誰よ!勝手に人の家に入り込むなんて犯罪よ!」
何処からか聞こえる声に苛ついて大声を上げる。その途端、クスクスと笑い声が部屋中に響いてきた。
その笑い声が一人では無い事に気付いて急に恐怖を感じ、座ったままの状態で後退る。
『あら、ずっとあなたの傍に居たじゃない。』
一人暮らしの部屋に呼んでもいないのに誰かが居る筈なんてない。
もしかしてつけっぱなしのテレビの音の所為かと無理矢理に納得させてテレビに視線を移した途端にフッとテレビの電源が消える。
「ヒッ。だ、誰なの?悪い冗談は止めてっ!
あ、もしかして紗夜でしょう?アンタ、失踪したと思ったら婚約者を取られた腹いせにこんな事するなんて最低よ!
そうか、そうなのね?失踪したはいいけれど、大騒ぎになっちゃって戻るに戻れなくなったんでしょう?
" 全部、私が悪かった。あの動画も失踪も結婚式の余興だった。親友は協力しただけ。"って皆の前で言いなさい。
そうしたら許してあげなくもないわよ。さぁ!早く出てきなさいよ。」
そんな訳ない。紗夜が私の家に居るなんてある訳ないと頭では分かっているのに、そう思わないとゾワゾワとした嫌な気配に意識が飲み込まれてしまうと本能的に感じる。
『ふふふ。
あぁ、やっぱりあなたは変わらないわねぇ。
紗夜って人、本当に邪魔だった。いつもいつも追い払われて。そうすると暫くの間、アンタには近づけなくなるしさ。
だからアンタから引き離した。』
「ヒィッ。紗夜っ、いい加減にして!!!」
またも耳元で囁かれた言葉とともに、不意に背後から私の両肩に誰かが手を乗せてきた。
もう紗夜ではないと分かっているのに紗夜であって欲しいと願ってしまう。
『コレって肩こり?』
笑い声とともに肩に乗せられていた手に力が入った気がしてヒュッと息を飲む。
「な、何を?」
『あははは。
私たちにアンタを殺す力なんて無いよ~。
本人が無意識に飛ばした怨みの念なんて所詮" 偏頭痛と肩こり "ぐらいにしか思われないからねぇ。』
声は同じなのにガラリと変わった口調に忘れた誰かが頭をよぎって気を取られ、言われた言葉が頭を素通りしていく。
『だから私たち、一つになったんだぁ。一つになったら形が出来て、はぁちゃんに話しかけられるようになった。
ずっと機会を待って、あの人に気付かれないようにこの部屋で待ってた。』
はぁちゃん。
私をそう呼んでいたのは中学の時のー。
『あなたが性格悪くて良かったわ。ちょっと囁いただけで、親友を簡単に裏切るのだもの。
あぁ、あなたもそう言っていたわね。
" ちょっと囁いただけです。"って。
本当、凄い効果よね。あなたは簡単に親友を裏切って、あなたに囁かれた彼は私との婚約を破棄した。』
婚約破棄された?それってー。
「ど、どうして先輩の事を知って、、、。」
先輩はこんな声じゃない。そもそも私の家なんて知る筈もない。
何で?どうして?
ちょっと人のモノに手を出しただけじゃない。
私が声をかけたって、男がその気にならなきゃいいだけの事でしょ。
悪いのは私じゃなくて男どもでしょう?
なのに紗夜の婚約者を寝とっただけで責められて、ワケの分からないモノがごちゃごちゃ言ってくるなんて。
「私は悪くない。悪くない。悪くない!
なのに、何で皆、私を責めるのよ!!」
大きな声でそう叫べば、クスクスと笑う声も肩に置かれていた手もフッと消えて部屋はシンと静かになった。
「何だ、やっぱり気のせいじゃない。
馬鹿みたい。私が誰かに恨まれる訳ないじゃない。
男が勝手に私の方がいい、って寄ってくるだけ。
全部気のせいよ。偏頭痛だって肩こりだって関係ない。
紗夜が居なくなったのだって私には関係ない。
そう、だから私は悪くはー。」
『残念。
気のせいじゃないよ。今までのもこれからも。
あの人が居なくなったから、これからは私たちが親友になってあげる。
ずっと傍にいてあげる。私たち、ちょっと重いかもしれないけれど大丈夫。
偏頭痛と肩こり程度だから。』
耳元で囁かれた声と同時にズシリと肩に何かにのしかかられたような感覚が襲う。
そうして静かになった部屋に唐突に聴こえてきたテレビの音にビクリと大きく肩を揺らす。
肩、、、これはただの肩こりじゃないの?
頭が痛いって思っていたのも肩が重いって思ってたのも" 偏頭痛と肩こり "ではないっていうのなら一体何だっていうの?
口から出そうになった言葉に慌てて両手で口を塞ぐ。
嫌だ。誰かから答えが返ってきてしまったら?
誰も居ない筈のこの部屋に私以外の誰かが居るなんて。
どうしよう。家に居るのが怖い。
だけど、外に出るのも怖い。外に出ても肩が重かったら?
本当に何かが傍にいるなんて気付きたくない。
ねぇ、何で?どうして私がこんな目に遭わなくちゃいけないの?
紗夜。
紗夜、どうにかしてよ!
あの時みたいになんとかしてよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読み下さりありがとうございます。
元婚約者と元親友の名前はどちらも名前を出すつもりはなかったのですが、元婚約者の話では元親友又はあの女などで全て通すには無理があるかなぁ、と名前だけ付けました。
結局、元親友は反省もしていないし" 自分は悪くない "と言って現実から目を背けたまま。頭の隅っこでは気付いていてもその存在を認めてしまったらー、な感じで怯えたままいずれは引き篭もりになりそう。でも家でも安心出来ず、、、。
まだナターシャ、カイウスの番外編も予定しているのですが、次話はアレクシスの番外編の予定です。
元親友とは高校が一緒で大学も一緒。
だけど別に仲が良くて進学先を一緒にした訳じゃない。ただの偶然だ。
高校では高一の時に同じクラスだったかなぁ?というぐらいの認識で、違うグループにいたので会話すらした事がなかったと思う。
それにその頃の私はまだ自分の能力に振り回されていて、高校の友だちと過ごす事ってあまり無かったんだよね。
だから同じ大学に進学していたと知ったのは、大学で入会したサークルでの顔合わせの時だ。
サークルの集まりで偶に私を見てくる事があったから『どこかで見た事ある?』という感じだったんだと思う。
まぁ、そんな感じで当初は、会えばペコリと挨拶を交わす程度の友だち付き合いとも呼べないような間柄だった。一度も挨拶を返された覚えは無いんだけれどね。
それなのに何故、親友と呼ばれるようになったのか?
ある日を境に元親友が私に近付いてくるようになったからだ。
構内のベンチで具合が悪そうに座っている彼女に声を掛けた事がきっかけで懐かれたように思う。
それも無理もない事だなぁ、と思うんだよね。
その時に見かけた彼女の頭から肩にかけてベッタリと黒いモヤのような見るからにヤバそうな何かが纏わりついていた。
顔見知り程度の間柄の人ではあったけれど、視えてしまう私には無視出来ないソレに気が付いて、思わず声を掛けて隣に座って背中を摩るようにして祓った。
暫く摩っている内にその黒いモヤの様なモノは無くなったのでホッとしたら、彼女も急に体調が良くなった事に驚いているようだった。
この時、私はその黒いモヤを悪い霊になりかけたモノだと思っていた。" 穢れ "を見てきたからそうと勘違いしてしまったのだけど、暫くしてソレが霊とは違うモノだと気が付いた。
親しくなってからは、会う度に黒いモヤを纏っている彼女にそれとなく聞いてみれば、中学生ぐらいから偏頭痛と肩こりに悩まされるようになったという。
いつもはそうでも無いのに、時折、体調を崩す程だと言っていたけど原因は確実にソレだと思った。
頻繁に顔を合わせるようになると、黒いモヤが亡くなった人の霊では無い事に気付いた。
それと同時に他のサークルメンバーや彼女と同じ学科の子たちが、元親友が居ない時に話しかけてくる彼女に関する話で、ソレが生きた人間からの怨みの念なんだろうな、と理解した。
だから何度も祓っても気がつけば元親友に纏わりついていたのだ。
一緒に過ごすようになれば彼女の性格に難があるのはすぐに事実だとよく理解出来た。私を見る目付きに嘲りの色が浮かぶ事はあったし、態度や言葉の端々に私を下に見ている事に嫌でも気付く。
最初は『何かに憑かれていて放っておけないなぁ。』という気持ちで一緒にいたけれど、段々と絆されてしまったんだろうなぁ。
だって一緒にいて" 楽しい "と思う時間が数えきれない程あったのも事実だから。
だから彼女の難アリの部分も含めて付き合ってきたつもりだ。勿論、友だちだとして何度も彼女を諌めもした。
その結果かどうか分からないけれど、私に彼氏が出来た時に手を出そうとする素振りも見せなかったし、周りの子たちとの関係も少しづつ改善されていたように見えた。
社会人になった頃からは黒いモヤは少しづつ視えなくなっていたしね。
相変わらず『偏頭痛と肩こりが~。』みたいな事は言っていたのは気になったけど、会う機会も減ってたし、黒いモヤばかりが原因ではなかったのか、と思っていたんだけれどなぁ。
そう言えば最後に会った時にも黒いモヤは視えなかったっけ。
だからまさかあんな風に裏切られとは予想もしていなかったんだよねぇ。
まぁ、霊に好かれやすい元婚約者と恨まれるような事ばかりして黒いモヤを纏わりつかせている元親友って案外お似合いかもね。
二人の事はショックだったし腹も立った。今思い出しても二人の裏切り行為は許す事など出来ないと思う。
でも二人との縁は私がこちらの世界へ来た事で完全に切れた。だったらいつまでもそれに拘っているのも時間の無駄だ。放っておけなかった事ももう私にはどうする事も出来ないし心配する気持ちも起こらない。
まぁ、せめて少しは" 自業自得 "とか" 因果応報 "なんて言葉がピッタリな目に遭っているといいな、と思ってしまうのは仕方ないよね。
( 元親友 視点 )
『だってあの人、邪魔だったのよね。』
「えっ?誰?」
不意に耳元で聞こえた声に横を向いても後ろを見ても誰も居ない。当たり前だ。だって此処は私の部屋だもの。
誰も居ない筈なのに聞こえたその声はとても愉しそうだった。クスクスと笑い声も聞こえた気がする。
『やっと!やっとわたしたちの好きに出来るわ!』
「私たち?ねぇ、誰よ!勝手に人の家に入り込むなんて犯罪よ!」
何処からか聞こえる声に苛ついて大声を上げる。その途端、クスクスと笑い声が部屋中に響いてきた。
その笑い声が一人では無い事に気付いて急に恐怖を感じ、座ったままの状態で後退る。
『あら、ずっとあなたの傍に居たじゃない。』
一人暮らしの部屋に呼んでもいないのに誰かが居る筈なんてない。
もしかしてつけっぱなしのテレビの音の所為かと無理矢理に納得させてテレビに視線を移した途端にフッとテレビの電源が消える。
「ヒッ。だ、誰なの?悪い冗談は止めてっ!
あ、もしかして紗夜でしょう?アンタ、失踪したと思ったら婚約者を取られた腹いせにこんな事するなんて最低よ!
そうか、そうなのね?失踪したはいいけれど、大騒ぎになっちゃって戻るに戻れなくなったんでしょう?
" 全部、私が悪かった。あの動画も失踪も結婚式の余興だった。親友は協力しただけ。"って皆の前で言いなさい。
そうしたら許してあげなくもないわよ。さぁ!早く出てきなさいよ。」
そんな訳ない。紗夜が私の家に居るなんてある訳ないと頭では分かっているのに、そう思わないとゾワゾワとした嫌な気配に意識が飲み込まれてしまうと本能的に感じる。
『ふふふ。
あぁ、やっぱりあなたは変わらないわねぇ。
紗夜って人、本当に邪魔だった。いつもいつも追い払われて。そうすると暫くの間、アンタには近づけなくなるしさ。
だからアンタから引き離した。』
「ヒィッ。紗夜っ、いい加減にして!!!」
またも耳元で囁かれた言葉とともに、不意に背後から私の両肩に誰かが手を乗せてきた。
もう紗夜ではないと分かっているのに紗夜であって欲しいと願ってしまう。
『コレって肩こり?』
笑い声とともに肩に乗せられていた手に力が入った気がしてヒュッと息を飲む。
「な、何を?」
『あははは。
私たちにアンタを殺す力なんて無いよ~。
本人が無意識に飛ばした怨みの念なんて所詮" 偏頭痛と肩こり "ぐらいにしか思われないからねぇ。』
声は同じなのにガラリと変わった口調に忘れた誰かが頭をよぎって気を取られ、言われた言葉が頭を素通りしていく。
『だから私たち、一つになったんだぁ。一つになったら形が出来て、はぁちゃんに話しかけられるようになった。
ずっと機会を待って、あの人に気付かれないようにこの部屋で待ってた。』
はぁちゃん。
私をそう呼んでいたのは中学の時のー。
『あなたが性格悪くて良かったわ。ちょっと囁いただけで、親友を簡単に裏切るのだもの。
あぁ、あなたもそう言っていたわね。
" ちょっと囁いただけです。"って。
本当、凄い効果よね。あなたは簡単に親友を裏切って、あなたに囁かれた彼は私との婚約を破棄した。』
婚約破棄された?それってー。
「ど、どうして先輩の事を知って、、、。」
先輩はこんな声じゃない。そもそも私の家なんて知る筈もない。
何で?どうして?
ちょっと人のモノに手を出しただけじゃない。
私が声をかけたって、男がその気にならなきゃいいだけの事でしょ。
悪いのは私じゃなくて男どもでしょう?
なのに紗夜の婚約者を寝とっただけで責められて、ワケの分からないモノがごちゃごちゃ言ってくるなんて。
「私は悪くない。悪くない。悪くない!
なのに、何で皆、私を責めるのよ!!」
大きな声でそう叫べば、クスクスと笑う声も肩に置かれていた手もフッと消えて部屋はシンと静かになった。
「何だ、やっぱり気のせいじゃない。
馬鹿みたい。私が誰かに恨まれる訳ないじゃない。
男が勝手に私の方がいい、って寄ってくるだけ。
全部気のせいよ。偏頭痛だって肩こりだって関係ない。
紗夜が居なくなったのだって私には関係ない。
そう、だから私は悪くはー。」
『残念。
気のせいじゃないよ。今までのもこれからも。
あの人が居なくなったから、これからは私たちが親友になってあげる。
ずっと傍にいてあげる。私たち、ちょっと重いかもしれないけれど大丈夫。
偏頭痛と肩こり程度だから。』
耳元で囁かれた声と同時にズシリと肩に何かにのしかかられたような感覚が襲う。
そうして静かになった部屋に唐突に聴こえてきたテレビの音にビクリと大きく肩を揺らす。
肩、、、これはただの肩こりじゃないの?
頭が痛いって思っていたのも肩が重いって思ってたのも" 偏頭痛と肩こり "ではないっていうのなら一体何だっていうの?
口から出そうになった言葉に慌てて両手で口を塞ぐ。
嫌だ。誰かから答えが返ってきてしまったら?
誰も居ない筈のこの部屋に私以外の誰かが居るなんて。
どうしよう。家に居るのが怖い。
だけど、外に出るのも怖い。外に出ても肩が重かったら?
本当に何かが傍にいるなんて気付きたくない。
ねぇ、何で?どうして私がこんな目に遭わなくちゃいけないの?
紗夜。
紗夜、どうにかしてよ!
あの時みたいになんとかしてよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読み下さりありがとうございます。
元婚約者と元親友の名前はどちらも名前を出すつもりはなかったのですが、元婚約者の話では元親友又はあの女などで全て通すには無理があるかなぁ、と名前だけ付けました。
結局、元親友は反省もしていないし" 自分は悪くない "と言って現実から目を背けたまま。頭の隅っこでは気付いていてもその存在を認めてしまったらー、な感じで怯えたままいずれは引き篭もりになりそう。でも家でも安心出来ず、、、。
まだナターシャ、カイウスの番外編も予定しているのですが、次話はアレクシスの番外編の予定です。
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