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【 番外編 】ざまぁ、な話。その後の話。

元親友のその後 2

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( 紗夜 視点 )


「えっ?ナターシャ様が?」


 聖女クリスのお披露目兼アレクシス王太子殿下の婚約者として公表された私が正式に白亜宮の主になって一ヶ月が経つ。
まぁ、アレクと結婚するまでの短い間ではあるけれどね。


ドレスの着付け以外は自分の事は自分で出来る私だけれど、私にも専属で数人の侍女がついている。
名前をフィーネちゃんという十八歳の若い侍女は、私付きの侍女になる前は神殿で巫女見習いをしていた経歴を持つ。


 八歳の時に光属性を持っている事が分かってから神殿に預けられていた彼女は伯爵令嬢でもあるらしい。

『本来は聖女の世話は神殿側がするべきもの。
聖女様を王宮で保護するというならば、巫女見習いであり伯爵令嬢の彼女が王宮の侍女としてクリス様のお世話をするのが当然。』との神殿側からのゴリ押しでねじ込まれたのがフィーネちゃんだった、とアレクが眉間に皺を寄せて言っていた。


確かに名ばかりの聖女だったナターシャも第二王子の妻だったし、聖女クリスもアレクの婚約者になってしまった。

神官の中には『王家に聖女を取られた。』、『王家は聖女の人気を利用している。』などと王家に対して反感を持つ者もいるという。

聖女サーヤの時だって王宮に滞在していたし大神殿でさえ殆ど行った事はなかった。聖女に必要な事を学んだらすぐに" 穢れを祓う旅 "に出発してたしねぇ。

だから神殿側の気持ちも分からなくはないけれど、でもそれって神殿側も" 聖女 "を利用したかったからそう思うのでは?という気もするんだよね。


だけど神殿から送り込まれてきたフィーネちゃんは神殿側の意向を丸っと無視、というか空気が読めないだけなのか?中々に面白い子である。

「神官様たちから『聖女様に神殿の良さを伝えて、神官たちとするように働きかけてこい。』としつこく言われてきましたけれど、神殿の良さってなんでしょうかね?
深く交流するってどういう意味でしょう?」


なんて事をアレクが居る前でニコニコと笑顔で言ってしまえる天然さんだ。
あの時のアレクの能面のような表情と護衛や侍女たちの青褪めた顔と言ったら、、、。


最初こそフィーネちゃんに対して警戒していた侍女たちや白亜宮の者たちも、そしてアレクさえも今はフィーネちゃんの事を私の侍女として認めている。

そんな天然系のフィーネちゃんはその性格でもって意図せず、白亜宮のみならずこの王宮内で交友関係を広げ続け、貴族や王城内の噂話などをいち早く聞いて私に教えてくれる。

今では私も王宮内オフィスラブのあれこれを知り尽くす程の情報通になっている程だ。


「はい、そうなんです~。ガイナード公爵、、、あ、今は男爵家でしたねぇ。

カイウス殿下とのナターシャ様は男爵邸の離れで暮らしているらしいんですけど、最近様子がおかしいそうですよ?」


今日もニコニコと愛らしい笑顔で話すフィーネちゃんに癒されつつ、話の内容は決して笑顔で話す内容ではないのでは?と苦笑する。


「どんな風におかしいの?」


「あ~、話してくれた人もナターシャ様のところの侍女だか下女をしていた人から聞いたんで正確な話じゃないかもです。

でもナターシャ様が離れで住むようになってから、ナターシャ様付きの侍女たちが次々と辞めてしまわれたそうなんですよ。

皆、『ナターシャ様がブツブツと独り言を言ってて気味が悪い。』みたいな事を言ってたそうですよ。

あと、離れにナターシャ様が住むようになって薄気味悪い声が聞こえるようになったとか女性の笑い声が聞こえるとか?」


最後は小首を傾げながら言うフィーネちゃんの言葉に何となく状況を察する。
ナターシャ様は過去に色々とやらかしているからなぁ~。

「そういうのって" 穢れ "の仕業か何かですかねぇ。

でもナターシャ様も聖女なんだからご自分で何とかすれば良いのに。

ん~、何とかしようとしている姿が気味が悪く見えたとか?」


フィーネちゃんも独り言のようになって元巫女見習いらしい意見を言っているけれど、は" 穢れ "では無いからなぁ~。


私はナターシャ様の事を思い出す時、元親友の顔も頭に思い浮かぶ事が多い。勿論、懐かしいなどと思ったからではない。

私には幽霊ではないモノも視えるって気付いたキッカケが元親友ってだけ。

元親友も時々、からの怨嗟の念を体に纏わりつかせていたんだよね。ハッキリと姿が視える程ではなかったけれど。



(元親友はるか 視点)


紗夜が婚約した。


紗夜から直接報告を受けた時には、普通に『おめでとう!良かったじゃない。』って自然に口から言葉が溢れた。


だけど紗夜と別れてマンションに戻ると、どうしてだか胸の奥がザワリとして不快な気分になった。


私はまだ若い。

まだ結婚する気も無いし声を掛ければ直ぐに飛んでくる男たちも沢山いる。

周りにいる友だちだって結婚している子なんてまだそんなにいないから、焦ってもいないし羨ましくもないのに、、、。


「何で嫌な気分になんのよ。」


ーーーー


口をついて出た独り言にが耳元で囁いた。


そうよ、いつもしてた事じゃない。

今は偶々彼氏もいないし会社じゃもう目ぼしい男もいなくなったんだもの。
最近、退屈だからイライラしてたんだわ、きっと。


私が婚約者あげなきゃ駄目なのよ。


そう考えたら気分が良くなって、サークル仲間で作っていたメッセージグループに『紗夜の婚約祝い』を提案したらアッサリ実現した。


サークル仲間の内、紗夜と仲が良かった数人で祝いの席を設ければ、紗夜と一緒にやって来た男は平々凡々な男だった。


コレのどこが良かったのかしらね?


益々気分が良くなって、『これなら奪うまでもない?紗夜は一応、親友枠だしね。』とは思ったものの、私よりもちょっと良い会社に入った紗夜の同僚なら会社内でもっと良い男がいるんじゃないかと気づいちゃったのよね。


紗夜ので紹介してもらうのもアリか。


取り敢えずコッソリと男に連絡先を聞けば、下心があるのか無いのか、アッサリと教えてくれた。


紗夜が結婚式の準備で忙しくし始めた頃を見計らって男に連絡すればホイホイとやって来る。チョロすぎる。

一度寝てしまえば、二度も三度も同じ事。

平凡男の割には自分に自信があるみたいでキモいし会った次の日には何でか必ず体調崩す事が多かった。
サッサと他の男を紹介して欲しかったのに『会社では僕と気の合う奴って居ないんだよね。』とかドヤ顔で言う意味が分からない。


あんまりウザいから予定より早く紗夜に暴露してやった。


顔面蒼白になる紗夜が面白くてだいぶ話を盛ったんだけど、それを誰かに撮影されてたなんてね。


身バレしてからは、会社に行っても女性社員だけじゃなく男性社員からの視線も冷たくなったし誰も話しかけて来ない。

半月もしない内に勤め先も住んでる場所もバレて嫌がらせを受けるようになった。

昔、登録していたSNSのアカウントにもバンバンと通知が来るようになったけど、飽きて使ってなかったから登録削除する為のIDもパスワードも忘れてしまってどうにも出来ない。


会社の上司からは無理矢理に有給を取らされた。仕事しなくていいのは楽だけど、何処にも行けないなら意味が無い。


私が悪い訳じゃないのにこんな面倒な事になるなんて腹が立ったので、紗夜の男に文句を言おうと何度も電話した。


やっと電話に出たと思ったら『今、紗夜と新婚旅行のやり直しをしているんだ。金輪際連絡しないでくれ!』とか意味が分からない事を言われた。
全国区で赤っ恥をかいて頭がおかしくなったんじゃない?


本当、何で私がこんな目に遭わないといけないのよ。

紗夜の婚約者になんか手を出すんじゃなかった。

私が知っている紗夜の歴代の彼氏の中で一番冴えない男だったのに、どうして奪おうなんて思ってしまったんだろう。

そんな事をしたら紗夜だって今まで周りに居た子たちみたいに離れていく、と少し考えたら分かる事だったのに。


「今まで紗夜の彼氏を奪おうなんて思った事もした事もなかったのに。

どうしてこんな事をしちゃったんだろう、、、。」


ポツリと呟いたらまた耳元でが聞こえた。


ーー  ーー




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