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真実が語られる日 1
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謁見の間に大きく響く叫び声とケインさんたちの最後の姿に叫びはしないけれど部屋に居る人たちは皆絶句している。
「な、何だ、これは。
サーヤっ!これはお前か?お前が魔術を、、、。」
驚きでケインさんたちを凝視していたカイウスは、青い顔をしながらもまだ私の所為にしたいらしい。
いや、もしかしたら目の前の二人を認めたくないのかも知れない。
だって認めてしまえば、それは自分の罪を認めた事になってしまうから。
「私が魔術を使えない事は殿下もご存知でしょう?」
「あっ、あんた!聖女ならサッサとこいつらを祓いなさいよっ。
穢れを祓う事しか出来ないガキだったくせに!」
カイウスの背から顔だけ出して私に命令してくるナターシャは自分が聖女としての力を持たない事をもう隠すつもりも無いらしい。
もしかして自分は二人の殺害には関与していないのだから、バレたところで大した罪にも問われない、とでも思っているのかも。
だけどカイウス主導だったとしても私の功績をナターシャのものに、とし本人もそれを良しとして聖女の地位を受け入れているのだ。全く罪が無い訳がない。
それに彼女も色々やらかしているらしい。彼女は気付いていないようだけれど。
「カイウス殿下、我々もいつまでも王城に留まれる訳ではありません。
出来ればご自身の口から真実を明らかにして頂きたかった。
例え罪を犯したとしても殿下は我々が忠誠を誓う王家の方でしたのに。」
「なっ、私は何もっ!」
ケインさんがそういうと血塗れだった二人はまた元の姿へと戻り、それから国王両陛下へと向き直ると臣下の礼をした。
「ケインよ。・・・・真実を話してくれるか。」
もうきっと誰もがカイウス殿下たちが犯した罪を理解している。けれどケインさんに語らせる意味をカイウスは理解しているだろうか。
陛下はきっと彼の父親としてカイウスの口から罪を告白して欲しかったに違いない。でもカイウスが真実を語る事はない、と判断した。
この先、国王としての立場でもカイウスの言葉に耳を傾ける事は無いどころか、もう父と子に戻る事は無いのだろう。
「カイウス殿下。あの夜、貴方は聖女サーヤが瘴気を封印した水晶を持って元の世界へと戻る事を決めた、と仰いました。
ずっと元の世界へと戻りたがっていたサーヤ様が使命を終えた今、一刻でも早く帰りたいと願い、王城へと戻ってしまったら引き留められて二度と元の世界へは戻れなくなるのでは、と怯えている。
だから彼女の望みを叶えてあげたいのだ、と貴方はそうも仰いました。
ザラ神殿から王城までは目と鼻の先程度の距離であり、私どもにはサーヤ様が元の世界に戻りたがっているようにも、ましてや怯えているようにも見えなかった。
私とダニエルは少なからずサーヤ様とは交流がありましたから。」
ケインさんはそこまで言うとカイウスから視線を外して私の方を見て微笑んだ。とても優しい目をして。
「う、嘘だ!私はお前たちにそんな事は言っていない。」
カイウスは声を絞り出すようになんとか否定しようとしているけれど、真っ直ぐケインさんたちを見る事はない。
「私たちがこうして姿を現してもまだお認めにならないと?
私たちは何かおかしいと思いつつも貴方の嘘に騙された挙げ句、命を落とす羽目になったというのに。
私たちが騙された事に気付いたのは、元の世界へとサーヤ様を送り出す魔法陣が起動しサーヤ様からの別れの言葉を聞いた時でした。
サーヤ様は私とダニエルを見てこう仰りました。『水晶を向こうに持って行ったらまた戻って来るのでまた会いましょうね。』、と。
サーヤ様が消えてすぐ私たちは貴方に事の真偽を確かめたその結果がこれなのです。」
ケインさんはそう言って両手を少し上げて小首を傾げるとまた血塗れの姿になった。
カイウスはその姿に一瞬怯んで小さく唸るように声を出した。
「違うっ。私、、、は、お前たちを殺してなど、、、いない。」
「はい、殿下は私たちを殺してはいません。」
「ならばっ!」
「ただ、お命じになっただけです。そこのザイルたちと護衛騎士たちにね。」
そう言ってケインさんとダニエルさんは初めてザイルたちと騎士を見た。
「ザイル、俺はお前には素質があると随分と目を掛けてきたつもりだったんだがなぁ。」
「お、俺は、、、。」
ダニエルさんに声をかけられてザイルはビクリと肩を震わして俯いたまま小声で何かを言おうとしてまた口を噤んだ。
「あぁ、ダニエルは将来的に第二の隊長はザイルを、ってよく言っていたよ。
自分は副隊長のままでいい。魔術の才はザイルの方が上だ、俺が補佐をすれば隊長になってもやっていける、ってな。
お前には才能があった。それに驕って他の隊員たちを見下した態度を取っていても個人行動で自分の力をひけらかし隊の和を乱してもずっとダニエルが『俺が責任持って指導するから』と他の隊員たちの怒りや不満を抑えていたのにな。
ザイル、お前には実力があったがそれは個人としてものだ。上に立つ者は実力があるだけでは駄目なんだよ。
だが、そんなに俺やダニエルを蹴落としてまで早く第二部隊の隊長になりたかったのか?」
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ここまでお読み下さりありがとうございます。
エールでの応援もありがとうございます!
「な、何だ、これは。
サーヤっ!これはお前か?お前が魔術を、、、。」
驚きでケインさんたちを凝視していたカイウスは、青い顔をしながらもまだ私の所為にしたいらしい。
いや、もしかしたら目の前の二人を認めたくないのかも知れない。
だって認めてしまえば、それは自分の罪を認めた事になってしまうから。
「私が魔術を使えない事は殿下もご存知でしょう?」
「あっ、あんた!聖女ならサッサとこいつらを祓いなさいよっ。
穢れを祓う事しか出来ないガキだったくせに!」
カイウスの背から顔だけ出して私に命令してくるナターシャは自分が聖女としての力を持たない事をもう隠すつもりも無いらしい。
もしかして自分は二人の殺害には関与していないのだから、バレたところで大した罪にも問われない、とでも思っているのかも。
だけどカイウス主導だったとしても私の功績をナターシャのものに、とし本人もそれを良しとして聖女の地位を受け入れているのだ。全く罪が無い訳がない。
それに彼女も色々やらかしているらしい。彼女は気付いていないようだけれど。
「カイウス殿下、我々もいつまでも王城に留まれる訳ではありません。
出来ればご自身の口から真実を明らかにして頂きたかった。
例え罪を犯したとしても殿下は我々が忠誠を誓う王家の方でしたのに。」
「なっ、私は何もっ!」
ケインさんがそういうと血塗れだった二人はまた元の姿へと戻り、それから国王両陛下へと向き直ると臣下の礼をした。
「ケインよ。・・・・真実を話してくれるか。」
もうきっと誰もがカイウス殿下たちが犯した罪を理解している。けれどケインさんに語らせる意味をカイウスは理解しているだろうか。
陛下はきっと彼の父親としてカイウスの口から罪を告白して欲しかったに違いない。でもカイウスが真実を語る事はない、と判断した。
この先、国王としての立場でもカイウスの言葉に耳を傾ける事は無いどころか、もう父と子に戻る事は無いのだろう。
「カイウス殿下。あの夜、貴方は聖女サーヤが瘴気を封印した水晶を持って元の世界へと戻る事を決めた、と仰いました。
ずっと元の世界へと戻りたがっていたサーヤ様が使命を終えた今、一刻でも早く帰りたいと願い、王城へと戻ってしまったら引き留められて二度と元の世界へは戻れなくなるのでは、と怯えている。
だから彼女の望みを叶えてあげたいのだ、と貴方はそうも仰いました。
ザラ神殿から王城までは目と鼻の先程度の距離であり、私どもにはサーヤ様が元の世界に戻りたがっているようにも、ましてや怯えているようにも見えなかった。
私とダニエルは少なからずサーヤ様とは交流がありましたから。」
ケインさんはそこまで言うとカイウスから視線を外して私の方を見て微笑んだ。とても優しい目をして。
「う、嘘だ!私はお前たちにそんな事は言っていない。」
カイウスは声を絞り出すようになんとか否定しようとしているけれど、真っ直ぐケインさんたちを見る事はない。
「私たちがこうして姿を現してもまだお認めにならないと?
私たちは何かおかしいと思いつつも貴方の嘘に騙された挙げ句、命を落とす羽目になったというのに。
私たちが騙された事に気付いたのは、元の世界へとサーヤ様を送り出す魔法陣が起動しサーヤ様からの別れの言葉を聞いた時でした。
サーヤ様は私とダニエルを見てこう仰りました。『水晶を向こうに持って行ったらまた戻って来るのでまた会いましょうね。』、と。
サーヤ様が消えてすぐ私たちは貴方に事の真偽を確かめたその結果がこれなのです。」
ケインさんはそう言って両手を少し上げて小首を傾げるとまた血塗れの姿になった。
カイウスはその姿に一瞬怯んで小さく唸るように声を出した。
「違うっ。私、、、は、お前たちを殺してなど、、、いない。」
「はい、殿下は私たちを殺してはいません。」
「ならばっ!」
「ただ、お命じになっただけです。そこのザイルたちと護衛騎士たちにね。」
そう言ってケインさんとダニエルさんは初めてザイルたちと騎士を見た。
「ザイル、俺はお前には素質があると随分と目を掛けてきたつもりだったんだがなぁ。」
「お、俺は、、、。」
ダニエルさんに声をかけられてザイルはビクリと肩を震わして俯いたまま小声で何かを言おうとしてまた口を噤んだ。
「あぁ、ダニエルは将来的に第二の隊長はザイルを、ってよく言っていたよ。
自分は副隊長のままでいい。魔術の才はザイルの方が上だ、俺が補佐をすれば隊長になってもやっていける、ってな。
お前には才能があった。それに驕って他の隊員たちを見下した態度を取っていても個人行動で自分の力をひけらかし隊の和を乱してもずっとダニエルが『俺が責任持って指導するから』と他の隊員たちの怒りや不満を抑えていたのにな。
ザイル、お前には実力があったがそれは個人としてものだ。上に立つ者は実力があるだけでは駄目なんだよ。
だが、そんなに俺やダニエルを蹴落としてまで早く第二部隊の隊長になりたかったのか?」
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