【 本編 完結 】結婚式当日に召喚された花嫁は、余興で呼ばれた聖女、でした!?

しずもり

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真実を明らかにする日 1

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「兄上がこの女の無実を証明する?

はっ!どうやって?

まさか、この場で断罪されるのを阻止する為の時間稼ぎですか?」


カイウスが私とアレクを交互に見ながら馬鹿にしたような表情を浮かべている。


その事にムカつくけれど、私も何故、アレクがこんな発言をしたのかは分からない。


「いや、時間稼ぎなどする必要も無い。今すぐこの場でク、、、" 聖女サーヤ "の冤罪を晴らすのだからな」


「へぇ~、それは面白い。さぁ、兄上、今すぐその女の無実を証明してみて下さいよ」


「あぁ、そのつもりだ。

クリス、前に話してくれたようにを皆にも話してやってくれ」


「「はぁっ!?」」


 仲良くない。断じて仲良くないけれど、アレクの言葉に私とカイウスが同時に声を出してしまった。


それほどアレクの言葉は意外だった。


 だって自分が" 私の無実を証明する "なんて言ったのに、証明する段階になったら私に丸投げだよ?
しかも事前に何も聞いていない上での、だ。

せめて私に振る理由を教えて欲しい。、と思ってしまったのは仕方ないよねぇ。


思わずジトッとした目でアレクを見ると、『ん?これでは私が証明する事にはならない?』なんて首を傾げながら呟いている。

それを見たらなんだかアレクが可愛く思えて心の中でクスっと笑ってしまう。

よく分からないけれど、アレクがそう言うのなら言われた通りにあの時の事を話そう!

そう思って部屋にいる人たちを見渡し、あの日の事を思い出しながら話し始める。


「瘴気溜まりを水晶に封印しザラ神殿まで戻った日の深夜、カイウス殿下が魔術師たちを連れて私の部屋にやって来ました。そしてカイウス殿下は私に

『瘴気溜まりを封印し真っ黒に染まった水晶をこのまま城に持ち込む事は出来ない。

穢れの影響を受けないサーヤの世界へと持って行って欲しい。魔術師たちの魔力が回復したらまたこの世界へと召喚するから』

と、そう言いました。

そうして私はカイウス殿下が見守る中で魔術師たちによって元の世界へと戻されました。

元の世界に戻ってみると、驚いた事に私が聖女として召喚された日、時間に戻ってきていました。

 あの日の姿、タンクトップに短パンで、この世界で一年過ごして長く伸びた筈の髪も何故か短くて、で部屋にいました。
それこそただと思ってしまいそうになる程に。

でも水晶があるのを見て夢では無かったのだ、と気付きました」


ここまで話して私はやっとアレクが私に話させた理由に気が付いた。


「こちらで一年過ごしたのに元の世界に戻ったら召喚された時に戻っていただと?

そうだとしてどうしてそれがお前の無実を証明する事になるんだ?」

確かに今の話だけではどうして私が旅の最初に逃げ出していない、という証明になるのかは分かり辛い。でもー。


「カイウス殿下、私は召喚前と変わらない状態で、と言いました。

私がこちらの世界に来る時、私はベッドの上にいました。そして私は気が付けばにこちらの世界に来ていたんです。

そしてザラ神殿で元の世界へと戻された私は着ていなかったタンクトップと短パン姿で、ザラ神殿には無かった筈のと一緒に元の世界へと戻っていたのですよ?」

「それがどうしー」

「サーヤ様のベッド、、、、。」

私の言葉を聞いてもカイウスはピンと来なかったようで何かを言いかけたけれど、先に宰相が何か思い当たる事があるような表情で呟いた。

「そこからは私が話そう。約半年前、カイウスたちが穢れを祓う旅から城に戻る少し前にこの城である事件が起きたのだ。

それは城内ではになったから、話を聞いた者もこの中にも居るだろう。

あぁ、騎士団で一応調査したのだったな。

ルシウス騎士団長、覚えているか?」


「はい、は不思議な事件で結局、何も分からないままだったのですが、サーヤ様の話で謎が解けました」


アレクに名前を呼ばれた金色の髪を短く切り揃えたイケメンが私の方へ微笑みながらハッキリと答えた。

いやぁ~、この世界って本当にイケメンが多いよね。

イケメンの微笑みとか、どんだけの破壊力よ。

でも、さっきまで固い表情で私を見ていた事を思い出すと、今の話で私を" 聖女サーヤ "だとハッキリと理解し話を信じてくれたって事かな。


「私たちがいない間の騒ぎが、この女の無実の証明とどう関係があると言うのですか?

兄上、いい加減にしてくれませんか」


カイウスは少し苛立ったように言ったけれど、たぶん半年前の騒ぎを知っている人たちは気付いたのだと思う。カイウスの話の矛盾に。

その証拠に国王陛下夫妻もその場に居る人たちも、カイウスたちを見る目が厳しいものになった気がする。

「お前はまだ気が付かないのか?

半年前、聖女サーヤは何故かに元の世界へと戻っていた、と言った。

そしてその頃、この城ではが突然消えて無くなった、という騒ぎが起きたのだ。偶々、部屋を掃除しに訪れていたメイドたちの目の前でな。

だ。もしお前たちが言うように、聖女サーヤが旅の始めに元の世界へと戻っていたのなら、ベッドはもっと早くにこの城から消えていた筈なんだよ」


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ここまでお読み下さりありがとうございます。

「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。
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