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断罪する日 3
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私の突然の言葉にカイウスだけじゃなく、その部屋に居た人たちが動揺してザワついている。
部屋には大臣とか偉い職についているよう見えるおじさんが三人、騎士団と魔術師団の団長っぽい人たちと壁際に二人、騎士が立っていた。
そのいずれも私はまだ顔を合わせた事は無かった。前回はカイウスによって、今回はアレクによって私は会う人を制限されていた。
前回の時はカイウスが私と交流する人を制限したかったからだと思う。私に紹介された人は極限られた人たちで、全てカイウスの手の者だったようだ。
そして今回はまだ公にはアレクの婚約者と発表されていない私は、表向きは" 聖女扱いをされるだろう "とアレクは言っていた。けれど現時点ではまだ私がただの一般の異世界人だから。
というのは建前で、いずれ私が聖女サーヤだと明かす事になるだろう、とそういう配慮からだったのでは、と今にして思う。
「おっ、お前!王子である上に、" 穢れを祓う旅 "を主導し国民の宿願である瘴気溜まりを水晶に封印する事を成功させたこの私になんて無礼な物言をするんだ!
いくら王太子の婚約者になったとはいえ、第二王子に冤罪を着せようとするなど、この場にて即刻、処刑されても文句は言えないのだぞ!
兄上、一体この責任をどう取るおつもりですか?」
怒り心頭で怒鳴りつけてきたカイウスは途中で、アレクを王太子の座から引き摺り下ろす口実を見つけた、とばかりにニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。
「冤罪かどうかはカイウス殿下がよくお分かりではないでしょうか?
因みに瘴気溜まりを封印した水晶はどちらに?」
「お前っ、まだ言うか!
水晶だと?水晶は瘴気溜まりの地に置いて来たにきまっているだろう!」
「あぁ、そうなんですか。
カイウス殿下はナターシャ様を娶る為に聖女の功績を掠め取る事しか考えていなかったのかと思っていました。
ですが、しっかりと" 穢れを祓う旅 "について学ばれていたのですね」
私はにっこりと笑ってカイウスに向かって言ってやる。
「・・・・何が言いたい?」
再び召喚された時からカイウスに対して、私は殆ど口を開く事なく大人しくしていた。アレクとのお茶会の時にだって私はカイウスにもナターシャとも会話をしていない。
きっとカイウスたちからは私は大人しいだけの異世界の平民にしか見えなかったと思う。もっと言えば役立たずの私は全く相手にされていなかった。
それがいきなりズケズケと何かを知っている風な口を聞いてきたのだ。
流石のカイウスも少し警戒の色を顔に浮かべている。
「だって瘴気溜まりを水晶に封印したら" 穢れを生み出す "と言われている場所に水晶を納めないといけなかったでしょう?」
「はっ!?お前は何を言って、、、」
「まさかっ、、、」
私の言葉が理解出来ていないカイウスの後ろで、魔術師たちは何かに気づいたようで小さく呟いている。
「言っている事が分かりませんか?
瘴気溜まりを封印した水晶は、持ち帰ってくるものでもそこら辺に捨てていいものでもないんですよ。
だから貴方の" 穢れを祓う旅 "は失敗です」
「なっ!お前はどこまで私を侮辱すれば気が済むのだ!
・・・いや、待て。
何故、" 穢れを祓う旅 "について知っている。それに水晶の事も、、、。
お前、まさか聖女サーヤの知り合いかっ!?」
ここまで話してカイウスはやっと私に疑い持ったらしい。
でも見当違いだ。
「ふふふ、知り合いではありませんよ。
この場には初めてお会いする方々もいらっしゃいますね。
では改めてご挨拶を。
初めまして、聖女サーヤこと栗栖紗夜と申します。
この度、余興で召喚された出戻りの聖女で御座います」
私は一歩前に出て右手を胸にあてて小さくお辞儀をした。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読み下さりありがとうございます。
「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。
部屋には大臣とか偉い職についているよう見えるおじさんが三人、騎士団と魔術師団の団長っぽい人たちと壁際に二人、騎士が立っていた。
そのいずれも私はまだ顔を合わせた事は無かった。前回はカイウスによって、今回はアレクによって私は会う人を制限されていた。
前回の時はカイウスが私と交流する人を制限したかったからだと思う。私に紹介された人は極限られた人たちで、全てカイウスの手の者だったようだ。
そして今回はまだ公にはアレクの婚約者と発表されていない私は、表向きは" 聖女扱いをされるだろう "とアレクは言っていた。けれど現時点ではまだ私がただの一般の異世界人だから。
というのは建前で、いずれ私が聖女サーヤだと明かす事になるだろう、とそういう配慮からだったのでは、と今にして思う。
「おっ、お前!王子である上に、" 穢れを祓う旅 "を主導し国民の宿願である瘴気溜まりを水晶に封印する事を成功させたこの私になんて無礼な物言をするんだ!
いくら王太子の婚約者になったとはいえ、第二王子に冤罪を着せようとするなど、この場にて即刻、処刑されても文句は言えないのだぞ!
兄上、一体この責任をどう取るおつもりですか?」
怒り心頭で怒鳴りつけてきたカイウスは途中で、アレクを王太子の座から引き摺り下ろす口実を見つけた、とばかりにニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。
「冤罪かどうかはカイウス殿下がよくお分かりではないでしょうか?
因みに瘴気溜まりを封印した水晶はどちらに?」
「お前っ、まだ言うか!
水晶だと?水晶は瘴気溜まりの地に置いて来たにきまっているだろう!」
「あぁ、そうなんですか。
カイウス殿下はナターシャ様を娶る為に聖女の功績を掠め取る事しか考えていなかったのかと思っていました。
ですが、しっかりと" 穢れを祓う旅 "について学ばれていたのですね」
私はにっこりと笑ってカイウスに向かって言ってやる。
「・・・・何が言いたい?」
再び召喚された時からカイウスに対して、私は殆ど口を開く事なく大人しくしていた。アレクとのお茶会の時にだって私はカイウスにもナターシャとも会話をしていない。
きっとカイウスたちからは私は大人しいだけの異世界の平民にしか見えなかったと思う。もっと言えば役立たずの私は全く相手にされていなかった。
それがいきなりズケズケと何かを知っている風な口を聞いてきたのだ。
流石のカイウスも少し警戒の色を顔に浮かべている。
「だって瘴気溜まりを水晶に封印したら" 穢れを生み出す "と言われている場所に水晶を納めないといけなかったでしょう?」
「はっ!?お前は何を言って、、、」
「まさかっ、、、」
私の言葉が理解出来ていないカイウスの後ろで、魔術師たちは何かに気づいたようで小さく呟いている。
「言っている事が分かりませんか?
瘴気溜まりを封印した水晶は、持ち帰ってくるものでもそこら辺に捨てていいものでもないんですよ。
だから貴方の" 穢れを祓う旅 "は失敗です」
「なっ!お前はどこまで私を侮辱すれば気が済むのだ!
・・・いや、待て。
何故、" 穢れを祓う旅 "について知っている。それに水晶の事も、、、。
お前、まさか聖女サーヤの知り合いかっ!?」
ここまで話してカイウスはやっと私に疑い持ったらしい。
でも見当違いだ。
「ふふふ、知り合いではありませんよ。
この場には初めてお会いする方々もいらっしゃいますね。
では改めてご挨拶を。
初めまして、聖女サーヤこと栗栖紗夜と申します。
この度、余興で召喚された出戻りの聖女で御座います」
私は一歩前に出て右手を胸にあてて小さくお辞儀をした。
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ここまでお読み下さりありがとうございます。
「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。
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