【 本編 完結 】結婚式当日に召喚された花嫁は、余興で呼ばれた聖女、でした!?

しずもり

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聖女が真実を知らずに帰った日

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「穢れを祓う旅では2名の魔術師が命を落としている」


アレクの言った言葉に意味が分からず思考が停止する。

ハッキリ言って穢れを祓う旅で、魔術師彼らが命の危険に晒される場面など一度も無かった。

だって穢れを祓う場に彼らは立ち会った事など一度も無かったのだから。

何しろ毎度深夜にカイウスと二人で出向いていたからね。

最後に瘴気溜まりを水晶に封印する時だって立ち会っていないよ?


彼らが仕事したのって、旅の途中で野盗に襲われかけたとか休憩中に穢れが私目当てで近寄って来ちゃった時ぐらいじゃない?


王宮魔術師ってエリート集団だよ?流石に野盗なんて子どもと大人の差以上に力の差があるから彼らにかすり傷一つ付けられずにお縄になっていたぐらいだ。


当然、王都に一番近いザラ神殿まで戻って来た時だって誰一人欠けずにいたのだ。そして六人掛かりで私を元の世界へと戻す儀式を行ってくれたのだ。

それでどうして二人も亡くなっているの?


「あの、アレクシス様。亡くなった二人の魔術師の死因は何だったのでしょうか?」


もしかして無茶な方法で儀式をして命を落としたのだろうか。
もしそうなら私にも責任がある。カイウスに言われるがまま元の世界に戻った事は私の意思ではないけれど、それが原因なら間接的に私が殺した事になる、、、の?


私の所為で人が亡くなったかも知れない事実に、足元からジワジワと冷たく重い何かが迫ってくるような圧迫感を感じる。『怖い!』そう思った瞬間にギュッと両手が強く握られた。

テーブル越しに私の両手に乗せられた手は、先程と同じく当然アレクの両手もので、無表情だと言われているアレクの顔には、私を心配しているのがハッキリと分かるほど表情に出ていた。


「アレクシス様、ありがとうございます。私は大丈夫です。

一体、魔術師のどなたが、どうして亡くなったのか、教えて下さい」


今はアレクの事を軽々しく愛称で呼ぶ気にはなれない。穢れを祓う旅で人が二人も亡くなったのだ。今はこの国の王太子として、そして穢れ祓う旅に出た聖女として接する事が良いように感じた。


「・・・・・王宮魔術師団第ニ部隊ケイン・パルム隊長と副隊長ダニエル・ペインだ。

聖女の代わりに穢れを祓い続けたナターシャ嬢も最後の瘴気溜まりを封印するのには苦戦を強いられたようだ。

魔術師とともに一丸となって、ナターシャ嬢が水晶に瘴気溜まりを封印する手助けをしていた最中に、ナターシャ嬢を庇って襲ってきた穢れにやられたのだそうだ。

王都まで道のりは長く遺体を連れ帰る事も叶わず、その場で埋葬し二人の形見だけ持ち帰って来た、とカイウスが涙ながらに語っていた」


嘘、嘘、嘘っ!!全部、嘘じゃん。


カイウス、ふざけんなっ!


!!


カイウス、嘘だけじゃなくアンタ、人殺しまでしているの!?



穢れを祓う旅ではカイウスがいつも私の側に居たから、他の同行者とは殆ど関わりが無かった。
けれど亡くなった二人は、旅の最初に私の所に来て小娘の私にそれは丁寧な挨拶をしてくれた。

初めての馬車旅にダウン寸前だった私に休憩場所に到着すると、それとなく体調を確認しに来てくれたのもケインさんたちだった。

穢れを祓う時だって私とカイウスだけでは危険だから一緒に行く、と進言していたのもケインさんたちだ。

他の四人はカイウスと年が近かったのか、元々の知り合いだったのか、カイウスと話している場面をよく見たけれど、その姿を見てケインさんたちは眉間に皺を寄せていたのを覚えている。


それに私はザラ神殿まで二人が生きていた事を知っている。

瘴気溜まりを封印する時でさえ、私とカイウスだけで行う事に反対の意を唱えていたのもケインさんたちだ。

そのケインさんたちですらその場に立ち会っていなかったのだから死ぬ訳ないじゃない!!


「うっ、、、」


私の目からボタボタと大粒の涙が溢れる。

私を元の世界へと戻す儀式の時、二人は困惑したような私に話しかけたそうな表情をしていたのを思い出す。

私の直ぐ側にはカイウスが居て、その時は珍しく他の魔術師四人も別れの挨拶を、と私の近くに来ていた。

あれはケインさんたちを私の側に近寄らせない様にしていたんだ。余計な事を喋らせないように、って。

馬鹿な私は律儀な二人が挨拶をしたくても私の周りには他の人たちが居て近寄れないのだ、と仕方ないな、とそう思っている顔だと思っていた。

だから魔法陣を囲むように立つ魔術師たちが呪文を唱え終わり、陣が発動する瞬間に二人向かって言ったのだ。

「ケインさん、ダニエルさん!水晶を向こうに持って行ったらまた戻って来るのでまた会いましょうね」


と。

戻って来たら言えなかった旅のお礼を言おうと思っていたのだ。あの旅でカイウス以外に私に気遣う言葉掛けてくれたのは二人だけだったから。

別に無視された訳でも疎外感を感じていた訳でも無い。私の世話をしてくれた侍女たちとも話はしていた。
けれど誰かが自分を気遣ってくれる気持ちが単純に嬉しかった。
ただそれだけの事だった。


その感謝の気持ちを伝えたい相手二人が、もうこの世には居ないってどういう事よっ!


心の中でカイウス罵倒し続ける。


やっぱり、、、二人は私の所為で死んだんだ。


「クリスの所為では断じて無い。

クリス、二人は本当に瘴気溜まりを封印する際に亡くなったのか?」


アレクがハンカチを私の頬にソッと当てながら、既に答えが分かっている表情で尋ねる。


ハッキリと言わなくちゃ。


私はグッと目に力を入れて泣くのを止める。大きく深呼吸をしてアレクを正面から見つめる。


「ケインさんとダニエルさんは瘴気溜まりの場所で死んでなんかいません。ザラ神殿までは確実に生きていました。

誰一人欠ける事なく一緒にザラ神殿まで戻ったところで、私はカイウスに水晶を元の世界に持っていくように、とお願いされ、一旦、日本に戻る事になりました。
また再召喚するから、とカイウスに言われて」


ーーーーーーーーーーーーーーー


ここまでお読み下さりありがとうございます。

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