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異世界から戻った日
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カイウスの指示によって真っ黒な水晶とともに元の世界に私は戻って来た。
不思議な事にベッドごと異世界へと召喚された私だったのに、戻って来た場所はしっかりとベッドの上だったし私の恰好はタンクトップに短パンだった。
机に置かれた某アイドルグループの日めくりカレンダーに目を向ければ、日付は召喚された日のまま。
あれは夢だった?
そう思った時にベッドからゴトリと何かが落ちた。
フローリングの床に目を向ければ、そこには真っ黒な水晶があった。
えぇっ、夢じゃなかった!?
異世界で一年過ごした筈の、伸びた髪の長さも何故だか元に戻っている。
何もかもが召喚される前のままなのに、真っ黒な水晶だけは私の部屋には存在していなかったモノ。
とりあえず転がり落ちた水晶にヒビが入っていたら危険かも、と慌てて拾ってみれば、真っ黒な水晶はいきなり銀色に光って元の透明な水晶に戻っていた。
その時の馬鹿な私は水晶に何が起こったのかはよく分からないまま、
これで今すぐ再召喚されても大丈夫!
なんて、何も考えずに浮かれていたんだった。
そうして夕飯時、家族全員が食卓についた時に宣言したのだ。
「異世界に聖女として召喚されて一年間過ごしてきたんだよ!
結婚を誓った恋人の王子様がいるのっ。
異世界の準備が出来たら、また異世界に呼び戻されて王子様と結婚する予定なんだ。
だから残された時間を大事な家族や友達と思い出を沢山作って過ごすつもりだよ。」
上機嫌な私の言葉に、美夜お姉ちゃんと妹の真夜、お母さんとお父さんがそれぞれ顔を見合わせた。
「え、紗夜ったら暑さにやられて夢と現実の境が分からなくなった?」
そう言ったのは高校生の美夜お姉ちゃん。
「紗夜姉、まさかの厨二病?」
呆れ気味に言ったのは一つ下の妹の真夜。
「あら、やだ。紗夜はお姫様願望があったのねぇ。」
なんて何故だか嬉しそうに笑うお母さん。
「紗夜は小説家になりたかったのか?」
と言ったのはお父さんだった。
私はその後も何度か正真正銘の本当にあった話なのだ、と異世界での話を何度も繰り返し話した。
けれど誰からの返事も『あ~、ハイハイ。分かったから。』になった頃、異世界での話をする事を止めた。
それは友達に対してもそうだった。いや、友達には二度目で止めた。
だって女の子の友人関係って難しいじゃない?
どんなに仲が良くたって些細なキッカケで友達じゃなくなる事なんてよくある事だったからね。
そうして信じてもらう事を諦めてみれば、恋人だった筈のカイウスの言動や態度に疑問を感じるようになっていた。
半年経つ頃には再召喚される事なんて無いな、とそう理解して、それをストンと受け入れられた。
私なんかに王子様が本気になる訳がなかったのだ。
そしてカイウスとの事は少しづつ忘れていった。
寧ろ忘れられなかったのは、、、。
あの日、部屋の隅にひっそりと飾ってあった水晶を片づけようと、ベッドの下の引き出しを開けた時の衝撃は十年経っても忘れられない。
だって引き出しの中にはー。
不思議な事にベッドごと異世界へと召喚された私だったのに、戻って来た場所はしっかりとベッドの上だったし私の恰好はタンクトップに短パンだった。
机に置かれた某アイドルグループの日めくりカレンダーに目を向ければ、日付は召喚された日のまま。
あれは夢だった?
そう思った時にベッドからゴトリと何かが落ちた。
フローリングの床に目を向ければ、そこには真っ黒な水晶があった。
えぇっ、夢じゃなかった!?
異世界で一年過ごした筈の、伸びた髪の長さも何故だか元に戻っている。
何もかもが召喚される前のままなのに、真っ黒な水晶だけは私の部屋には存在していなかったモノ。
とりあえず転がり落ちた水晶にヒビが入っていたら危険かも、と慌てて拾ってみれば、真っ黒な水晶はいきなり銀色に光って元の透明な水晶に戻っていた。
その時の馬鹿な私は水晶に何が起こったのかはよく分からないまま、
これで今すぐ再召喚されても大丈夫!
なんて、何も考えずに浮かれていたんだった。
そうして夕飯時、家族全員が食卓についた時に宣言したのだ。
「異世界に聖女として召喚されて一年間過ごしてきたんだよ!
結婚を誓った恋人の王子様がいるのっ。
異世界の準備が出来たら、また異世界に呼び戻されて王子様と結婚する予定なんだ。
だから残された時間を大事な家族や友達と思い出を沢山作って過ごすつもりだよ。」
上機嫌な私の言葉に、美夜お姉ちゃんと妹の真夜、お母さんとお父さんがそれぞれ顔を見合わせた。
「え、紗夜ったら暑さにやられて夢と現実の境が分からなくなった?」
そう言ったのは高校生の美夜お姉ちゃん。
「紗夜姉、まさかの厨二病?」
呆れ気味に言ったのは一つ下の妹の真夜。
「あら、やだ。紗夜はお姫様願望があったのねぇ。」
なんて何故だか嬉しそうに笑うお母さん。
「紗夜は小説家になりたかったのか?」
と言ったのはお父さんだった。
私はその後も何度か正真正銘の本当にあった話なのだ、と異世界での話を何度も繰り返し話した。
けれど誰からの返事も『あ~、ハイハイ。分かったから。』になった頃、異世界での話をする事を止めた。
それは友達に対してもそうだった。いや、友達には二度目で止めた。
だって女の子の友人関係って難しいじゃない?
どんなに仲が良くたって些細なキッカケで友達じゃなくなる事なんてよくある事だったからね。
そうして信じてもらう事を諦めてみれば、恋人だった筈のカイウスの言動や態度に疑問を感じるようになっていた。
半年経つ頃には再召喚される事なんて無いな、とそう理解して、それをストンと受け入れられた。
私なんかに王子様が本気になる訳がなかったのだ。
そしてカイウスとの事は少しづつ忘れていった。
寧ろ忘れられなかったのは、、、。
あの日、部屋の隅にひっそりと飾ってあった水晶を片づけようと、ベッドの下の引き出しを開けた時の衝撃は十年経っても忘れられない。
だって引き出しの中にはー。
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