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第38話 法則と発見
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砂漠に棲まう巨大生物を遠目から目撃した翌日から、俺の旅は山へと入り込んでいった。
これもまた遠目からには見えていたものではあったが、平地よりも遥かに場所の把握が難しい。
残念ながら俺は山の形が遠くから見ただけで構造を見て取れる程山には精通していないのだ。
「山登り好きな人だったらわかったりするもんなの?」
:山登り好きだけどそんな超能力はないです
:でも多分一般人よりはわかってるぞ
:はっきりわかるわけではないけど、あの裏側傾斜急になってそうだな、とかわかる
:山の出来方も自然現象だから、それさえ知ってればわかるよ、と理論だけ言ってみる
「つまり山に詳しい人でもそうそうわからんってことね」
絶賛山の中に入ったせいで迷子になりつつある。
しかも地球の日本にある森のような人工林ではなく、様々な種類の木が好き勝手に生えている天然林なために、足元に巨木の根が張っていたりして歩きにくい。
それでも無理やり踏破して、多少の傾斜ぐらいなら乗り越えられる身体能力があるから先に進むことが出来ているが、これ普通の人間が入った一瞬で山に食われて終わるんじゃなかろうか。
普段歩いているときにみかける生半可な森とはものが違う、山に育つガチの森。
そこに踏み込んでからこっち、ずっと大自然の雄大さと恐ろしさというものを感じ続けている。
「山って、凄いな。そりゃ遭難する人も出るわ」
:山歩き慣れてる人でも遭難するしな
:全部同じような地形に見えてくる
:普通にあの中歩くの怖いんだが
:吸い込まれそうな怖さがある
:家の裏山で遊んでたけど全然違う……
:もしかしてジョン迷子?
「もしかしなくても迷子。迷子てか進む方向性がつかめんから取り敢えず頂上目指してる。後地球の日本にある人工林とこっちの原生林まったく別物だから、こっちに来たとしても気楽に入らない方が良いよ。本当に遭難する」
:まず行けないんでつが
:確かに頂上から見たら行く方向決めやすいか
:人工林と原生林って何?
:でもそこに到達出来る探索者ならジョンと同じぐらい強いから大丈夫じゃない?
:人工林は人間が山の木をほとんど切った後に植林して作った森。原生林はそれ以前の勝手に木が根付いて出来た森。この二つは全く性質が違う。ちなみに日本には原生林はもうほぼ無い。屋久島とかぐらいのハズ。
:博識ニキサンクス
たまにこういう用語が出たときに、俺がわざわざ答えなくてもコメント欄で解説してくれる人がいるのはありがたい。
他の配信だと嫌われる場合もあるらしいが、俺は配信がしやすいので特に咎めることなくそのまましてもらうようにしている。
「よっ、はっ、っと」
『バゥルルルル……』
「悪いなロボ。お前にはちょっと登りにくいな」
『アウッ』
頂上が近づいてくるに連れて、だんだん傾斜が急になってくる。
多分普通こういう山を登るときは、ジグザグに登っていく者だと思うが、残念ながらこの野生の山にそんな洒落た道なんて存在しない。
ので、仕方なく、崖らしきところに手をかけたり、木に投げた綱を引っ掛けたりしながら山を登る。
「ふ、いっと。頂上、頂上か……? 多分頂上っぽい」
:木で何も見ないの草
:森林限界無いんかな。それとも標高が大して高くないのか?
:頂上から道見つけるの失敗やん
:どうするの?
コメント欄の問いにたいして、俺は腕に巻いてあるブレスレットから片手剣を実体化させることで答える。
「こうする」
グルン、と剣に魔力の刃を纏わせて大きく一回転。
周囲に生えている木を薙ぎ払う。
せっかくの山頂だけど、申し訳ないが、視界を開かせるために許してほしい。
:力技過ぎんか!?
:貴重な原生林とは何だったのか
:やはり人類は身勝手、滅ぼさなきゃ(使命感)
:魔法使って飛んだら良いのに
:回りの木切ったけど下から生えてる分があってあんまり良く見えんな
「人類は自然を征服するものだから……。真面目な話、全部を魔法で済ますの嫌いなんよな。昨日も魔法であのモンスター達追っかけても良かったけど、それじゃあ風情が無いだろ? 俺は自分の足を基本にしたいんだよ。だからここも、魔法で飛ぶんじゃなくて、山頂を切り開いて視界を確保する方向で行ってる」
そのまま若干降ったり登ったりしながら、頂上からの視界が確保できるように周囲の木を切り倒して山頂を切り開いていく。
しばらくして、山頂からの周囲に対する眺めが良くなった。
「やっとよく見えるな」
:登山動画見てると山頂に木とか無いけど、なんでそこは木があんの?
:めっちゃ山が続いてるな
:今度は山の中歩き続ける感じ?
:また同じ風景ばっかりか……
:山頂に木が無い山は、森林限界っていって木が生えることが出来る高度より高い場所に山頂があるから。逆に山頂が低い山は普通に山頂にも木が生えてたりするよ
「博識ニキありがとさん。で、こっから移動するけど、ちょっと気になる気配があるんよね。なのでそっちに向かって移動します」
:博識ニキ認知されてるやん
:わあ、あ……
:泣いちゃった
:純粋になんで???
:気になる気配とはなんぞや
「うーん……なんかぼやけた気配が無い、っていうか。本来山が続いているはずの中に、一箇所だけ変な違和感がある感じ、かな。こればっかりは感覚だから説明が難しいんだけど」
明確に言語化出来るものでもない。
ただなにかありそう、というか。
なにかが無さそうだから、むしろそれが不自然でなにかがありそう、というか。
説明は難しいけどそんな感じだ。
取り敢えず、そっちの方向を目指して歩いていくことにする。
見る限りでは、少しばかり急峻な山が連なる方角のようだが。
「それじゃあ、また移動始めるぞ」
そう言い残して、再び原生林の中を歩いていく。
ときに木の根を飛び越え岩から岩へと飛び移り。
巨大な岩が木の根によって支えられている光景なんて、自然の力の凄さを本当に良く感じられて俺は好きだ。
そんな移動を繰り返していると、次第に肌寒さを感じるようになってきた。
「なんか、寒くなってきたな。ロボ、どうだ?」
『バフッ、ゥルルルル……』
荷物から外套を出して纏いながらロボに尋ねると、ロボも警戒しているものの、その正体がわからない、という微妙な返事が返ってきた。
ちなみに以前世界樹に行ったときのようにマントを纏っていないのは、原生林を歩くのには少しばかり邪魔になると考えたからだ。
代わりに今纏った外套の方が、幾分か動きやすい。
:ジョンって寒さ感じるんか
:探索者ってレベル上がってもそういうのは変わらんの?
:モンスターよりも自然環境の方がきついのか
:むしろ凍死しないように気をつけてくれよ。山の夜は寒いぞ
「心配してくれてありがとう。一応言っておくと、レベルが上がるとある程度寒さ耐性は上がるよ。ただ感覚は変わらない。寒くなっても指がかじかんだり凍傷になったりする温度の許容値は変わるけど、寒さを感じる感覚は変わってない、って感じだ。だから今も、感覚としては寒いんだけど体としては別に何も問題はない、って状態」
このあたりは下手に感覚がバグってもよろしくないので、基本的には感覚に従って服を重ね着したり脱いだりするようにしている。
なにせ、身体能力が上がったことで代謝が高まり、寒さに強くなったが暑さには弱くなった、とかではなく、普通に耐久性らしきものが上がって暑さも寒さも両方いけるようになっているのだ。
そのため極端な話日本ならばずっと半袖半ズボンでもいけるのだが、それをしていると、感覚と実際に体に異常をきたす温度の差から、体に異変を与える温度の感知に失敗する可能性がある。
故に、寒いときは一般人と同じく厚着をして、それでも寒いときは、『あ、これは俺の体でも異常がある寒さだ』という認識をするようにしているのだ。
その後歩き続けることしばし。
感じられる寒さはどんどんマシていき、俺はそれに合わせてどんどんマントや厚手の探索用のジャケットなどを纏っていく。
「おかしいな。明らかになんかあるわこれ」
『バフッ』
ロボも同意してくれる。
:なんか、って何?
:なんでそんなことわかるん?
:何がおかしいんだ?
:ロボ可愛いな相変わらず
うむ、ロボはかっこいいのに可愛い。
それは同意だ。
さておき。
「ダンジョンの先の世界って、物理法則が結構ちゃんと機能してるっぽいんだけど、そこに魔法とか魔力とかいう物理法則とは別の法則も働いてる世界なんだよ。で、そういう世界で物理法則的におかしなことがあったら、それはつまり物理法則以外の法則のせいだってわかる」
例えば地球で、真夏の東京の交差点のど真ん中の気温が突然氷点下まで下がることがあるだろうか。
普通に考えればないだろう。
なぜならそれは物理的に有り得ないからだ。
そこに確かに存在する熱エネルギーが消滅することは、物理法則として有り得ない。
もちろん機械を使えば可能性は無いではないかもしれないが、それは除外して。
だが、このダンジョン世界ではそんなことだって起こり得る。
なぜなら物理法則とは別に、魔力という特殊なエネルギーを利用して発動する魔法が存在しているのだから。
魔法によって今存在している激しく運動している分子の分布を偏らせたり、あるいは遠方のエネルギーが極度に低い空気と入れ替えてしまっても良い。
更に言えば、熱力学の第1法則に乗っかっているのかどうかも不明な魔力というエネルギーが存在している時点で、物理法則は完全には成立していないとすら言える。
その魔力の存在だけで物理現象に歪みが生じる可能性すらある。
というか実際に俺はそうなることを知っている。
そして物理法則じゃないということは、つまり魔力関係がなにか働いているな、と推測が出来るわけだ。
「今回で言うなら、いくら山が続くとはいえ、ここまで急激に寒冷化しているのはおかしい。標高も大きく変わってないしな。となると、なにか。例えばそれこそ、冷気がなにかから吹き出していたり、局所的に雪が降っていたり、あるいは──」
そこでちょうど、岩の上へと昇った俺の視界が開ける。
「あるいは、氷で覆われたなにかが存在していたり、な」
そこには、急峻な山々に囲まれるような立地にある一つの都市が、巨大な氷に覆われながら存在していた。
これもまた遠目からには見えていたものではあったが、平地よりも遥かに場所の把握が難しい。
残念ながら俺は山の形が遠くから見ただけで構造を見て取れる程山には精通していないのだ。
「山登り好きな人だったらわかったりするもんなの?」
:山登り好きだけどそんな超能力はないです
:でも多分一般人よりはわかってるぞ
:はっきりわかるわけではないけど、あの裏側傾斜急になってそうだな、とかわかる
:山の出来方も自然現象だから、それさえ知ってればわかるよ、と理論だけ言ってみる
「つまり山に詳しい人でもそうそうわからんってことね」
絶賛山の中に入ったせいで迷子になりつつある。
しかも地球の日本にある森のような人工林ではなく、様々な種類の木が好き勝手に生えている天然林なために、足元に巨木の根が張っていたりして歩きにくい。
それでも無理やり踏破して、多少の傾斜ぐらいなら乗り越えられる身体能力があるから先に進むことが出来ているが、これ普通の人間が入った一瞬で山に食われて終わるんじゃなかろうか。
普段歩いているときにみかける生半可な森とはものが違う、山に育つガチの森。
そこに踏み込んでからこっち、ずっと大自然の雄大さと恐ろしさというものを感じ続けている。
「山って、凄いな。そりゃ遭難する人も出るわ」
:山歩き慣れてる人でも遭難するしな
:全部同じような地形に見えてくる
:普通にあの中歩くの怖いんだが
:吸い込まれそうな怖さがある
:家の裏山で遊んでたけど全然違う……
:もしかしてジョン迷子?
「もしかしなくても迷子。迷子てか進む方向性がつかめんから取り敢えず頂上目指してる。後地球の日本にある人工林とこっちの原生林まったく別物だから、こっちに来たとしても気楽に入らない方が良いよ。本当に遭難する」
:まず行けないんでつが
:確かに頂上から見たら行く方向決めやすいか
:人工林と原生林って何?
:でもそこに到達出来る探索者ならジョンと同じぐらい強いから大丈夫じゃない?
:人工林は人間が山の木をほとんど切った後に植林して作った森。原生林はそれ以前の勝手に木が根付いて出来た森。この二つは全く性質が違う。ちなみに日本には原生林はもうほぼ無い。屋久島とかぐらいのハズ。
:博識ニキサンクス
たまにこういう用語が出たときに、俺がわざわざ答えなくてもコメント欄で解説してくれる人がいるのはありがたい。
他の配信だと嫌われる場合もあるらしいが、俺は配信がしやすいので特に咎めることなくそのまましてもらうようにしている。
「よっ、はっ、っと」
『バゥルルルル……』
「悪いなロボ。お前にはちょっと登りにくいな」
『アウッ』
頂上が近づいてくるに連れて、だんだん傾斜が急になってくる。
多分普通こういう山を登るときは、ジグザグに登っていく者だと思うが、残念ながらこの野生の山にそんな洒落た道なんて存在しない。
ので、仕方なく、崖らしきところに手をかけたり、木に投げた綱を引っ掛けたりしながら山を登る。
「ふ、いっと。頂上、頂上か……? 多分頂上っぽい」
:木で何も見ないの草
:森林限界無いんかな。それとも標高が大して高くないのか?
:頂上から道見つけるの失敗やん
:どうするの?
コメント欄の問いにたいして、俺は腕に巻いてあるブレスレットから片手剣を実体化させることで答える。
「こうする」
グルン、と剣に魔力の刃を纏わせて大きく一回転。
周囲に生えている木を薙ぎ払う。
せっかくの山頂だけど、申し訳ないが、視界を開かせるために許してほしい。
:力技過ぎんか!?
:貴重な原生林とは何だったのか
:やはり人類は身勝手、滅ぼさなきゃ(使命感)
:魔法使って飛んだら良いのに
:回りの木切ったけど下から生えてる分があってあんまり良く見えんな
「人類は自然を征服するものだから……。真面目な話、全部を魔法で済ますの嫌いなんよな。昨日も魔法であのモンスター達追っかけても良かったけど、それじゃあ風情が無いだろ? 俺は自分の足を基本にしたいんだよ。だからここも、魔法で飛ぶんじゃなくて、山頂を切り開いて視界を確保する方向で行ってる」
そのまま若干降ったり登ったりしながら、頂上からの視界が確保できるように周囲の木を切り倒して山頂を切り開いていく。
しばらくして、山頂からの周囲に対する眺めが良くなった。
「やっとよく見えるな」
:登山動画見てると山頂に木とか無いけど、なんでそこは木があんの?
:めっちゃ山が続いてるな
:今度は山の中歩き続ける感じ?
:また同じ風景ばっかりか……
:山頂に木が無い山は、森林限界っていって木が生えることが出来る高度より高い場所に山頂があるから。逆に山頂が低い山は普通に山頂にも木が生えてたりするよ
「博識ニキありがとさん。で、こっから移動するけど、ちょっと気になる気配があるんよね。なのでそっちに向かって移動します」
:博識ニキ認知されてるやん
:わあ、あ……
:泣いちゃった
:純粋になんで???
:気になる気配とはなんぞや
「うーん……なんかぼやけた気配が無い、っていうか。本来山が続いているはずの中に、一箇所だけ変な違和感がある感じ、かな。こればっかりは感覚だから説明が難しいんだけど」
明確に言語化出来るものでもない。
ただなにかありそう、というか。
なにかが無さそうだから、むしろそれが不自然でなにかがありそう、というか。
説明は難しいけどそんな感じだ。
取り敢えず、そっちの方向を目指して歩いていくことにする。
見る限りでは、少しばかり急峻な山が連なる方角のようだが。
「それじゃあ、また移動始めるぞ」
そう言い残して、再び原生林の中を歩いていく。
ときに木の根を飛び越え岩から岩へと飛び移り。
巨大な岩が木の根によって支えられている光景なんて、自然の力の凄さを本当に良く感じられて俺は好きだ。
そんな移動を繰り返していると、次第に肌寒さを感じるようになってきた。
「なんか、寒くなってきたな。ロボ、どうだ?」
『バフッ、ゥルルルル……』
荷物から外套を出して纏いながらロボに尋ねると、ロボも警戒しているものの、その正体がわからない、という微妙な返事が返ってきた。
ちなみに以前世界樹に行ったときのようにマントを纏っていないのは、原生林を歩くのには少しばかり邪魔になると考えたからだ。
代わりに今纏った外套の方が、幾分か動きやすい。
:ジョンって寒さ感じるんか
:探索者ってレベル上がってもそういうのは変わらんの?
:モンスターよりも自然環境の方がきついのか
:むしろ凍死しないように気をつけてくれよ。山の夜は寒いぞ
「心配してくれてありがとう。一応言っておくと、レベルが上がるとある程度寒さ耐性は上がるよ。ただ感覚は変わらない。寒くなっても指がかじかんだり凍傷になったりする温度の許容値は変わるけど、寒さを感じる感覚は変わってない、って感じだ。だから今も、感覚としては寒いんだけど体としては別に何も問題はない、って状態」
このあたりは下手に感覚がバグってもよろしくないので、基本的には感覚に従って服を重ね着したり脱いだりするようにしている。
なにせ、身体能力が上がったことで代謝が高まり、寒さに強くなったが暑さには弱くなった、とかではなく、普通に耐久性らしきものが上がって暑さも寒さも両方いけるようになっているのだ。
そのため極端な話日本ならばずっと半袖半ズボンでもいけるのだが、それをしていると、感覚と実際に体に異常をきたす温度の差から、体に異変を与える温度の感知に失敗する可能性がある。
故に、寒いときは一般人と同じく厚着をして、それでも寒いときは、『あ、これは俺の体でも異常がある寒さだ』という認識をするようにしているのだ。
その後歩き続けることしばし。
感じられる寒さはどんどんマシていき、俺はそれに合わせてどんどんマントや厚手の探索用のジャケットなどを纏っていく。
「おかしいな。明らかになんかあるわこれ」
『バフッ』
ロボも同意してくれる。
:なんか、って何?
:なんでそんなことわかるん?
:何がおかしいんだ?
:ロボ可愛いな相変わらず
うむ、ロボはかっこいいのに可愛い。
それは同意だ。
さておき。
「ダンジョンの先の世界って、物理法則が結構ちゃんと機能してるっぽいんだけど、そこに魔法とか魔力とかいう物理法則とは別の法則も働いてる世界なんだよ。で、そういう世界で物理法則的におかしなことがあったら、それはつまり物理法則以外の法則のせいだってわかる」
例えば地球で、真夏の東京の交差点のど真ん中の気温が突然氷点下まで下がることがあるだろうか。
普通に考えればないだろう。
なぜならそれは物理的に有り得ないからだ。
そこに確かに存在する熱エネルギーが消滅することは、物理法則として有り得ない。
もちろん機械を使えば可能性は無いではないかもしれないが、それは除外して。
だが、このダンジョン世界ではそんなことだって起こり得る。
なぜなら物理法則とは別に、魔力という特殊なエネルギーを利用して発動する魔法が存在しているのだから。
魔法によって今存在している激しく運動している分子の分布を偏らせたり、あるいは遠方のエネルギーが極度に低い空気と入れ替えてしまっても良い。
更に言えば、熱力学の第1法則に乗っかっているのかどうかも不明な魔力というエネルギーが存在している時点で、物理法則は完全には成立していないとすら言える。
その魔力の存在だけで物理現象に歪みが生じる可能性すらある。
というか実際に俺はそうなることを知っている。
そして物理法則じゃないということは、つまり魔力関係がなにか働いているな、と推測が出来るわけだ。
「今回で言うなら、いくら山が続くとはいえ、ここまで急激に寒冷化しているのはおかしい。標高も大きく変わってないしな。となると、なにか。例えばそれこそ、冷気がなにかから吹き出していたり、局所的に雪が降っていたり、あるいは──」
そこでちょうど、岩の上へと昇った俺の視界が開ける。
「あるいは、氷で覆われたなにかが存在していたり、な」
そこには、急峻な山々に囲まれるような立地にある一つの都市が、巨大な氷に覆われながら存在していた。
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──【いずれ配信要素あり】死んで覚える異世界探索~幾度倒れても目指す道は最強のみ~https://www.alphapolis.co.jp/novel/444931402/316872226作者の別小説です。こちらはアルファポリスで書籍化にチャレンジしてみようと思って出しております。序盤数話一気に投稿していますので、是非読んでみてください。
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