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第37話 やっぱりファンタジーって憧れるよな
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俺の発言の後、じゃあ戦うときにはどう戦えば良いか、強敵と戦うには、なんて質問の数が一気に増えた。
おかげで俺は、移動しながらも戦い方の型やパターン、動きについて解説する羽目になってしまった。
いやまあ無視しても良かったのだが、せっかく自分から焚き付けたのだからと少しばかり付き合ってしまったのだ。
おかげで寝るまでドローンの前で様々な戦い方のレクチャーをする羽目になってしまった。
だがそれも、翌日以降は旅の日程に絡むので全てを断って、ただただひたすらに歩を進め続けた。
途中でロボが飽きて走っていっては獲物を取ってきたり、夜には俺がそれを捌かされたりはしたものの、日があるうちは旅を、日が落ちてからは夜営と配信での雑談を、というルーティーンが見事に出来上がった。
おかげで日中にやたらと話すことを求められることも少なく、夜焚き火を灯し食事をしてから寝るまでの僅かな時間、視聴者と話すことを楽しめるようになってきた。
:そう言えば、あの二人助けるときに10億ふっかけたのなんで
:確かにジョン・ドゥなら自力で簡単に稼げそうだな
:十億が微妙に大金すぎてわからん
:スポーツ選手とかなら普通に貰ってる人多いもんな
「あれはまず二人に覚悟を求めたんだよ。『俺に助けて貰うって、そういうことだよ。俺の時間にはそれだけの価値があるのを奪うんだよ』って。金額についてはぶっちゃけ適当。その辺のギルドとか個人が俺に何かを依頼するのを躊躇う金額でかつ彼女らが将来的にはギリギリ返せそうな金額にした。ちゃんと説明してあげればよかったかな」
あのときは深くは考えずにこんな金額設定にしてしまったけど、どうせなら面倒くさがらずに今みたいな説明ぐらいはしてやれば良かったかもしれない。
いやでも完全に迷惑をかけられた側だったしな……やはりあのぐらいが妥当か。
「うん、やっぱり妥当だったな。俺が迷惑かけられた側だったし」
:一体この一瞬に何があったのか
:思考が急転換してて怖い
:直前まで「説明してあげれば良かった」とか言ってたのに、やっぱあれで良かったって
:実際に10億二人かた受け取るつもりなの?
「そりゃもちろん正当な報酬だし受け取るよ。むしろ受け取らなかったらそのために頑張ってる二人に失礼だろ。使い道は考えてないけど」
本当に考えてないけど。
10億とかどうしよう。
地上にどこか広い土地でも買って豪邸でも建てるか?
そんで敷地を広くすることで他の人と接触しないで良いようにするとか。
それかその10億で探索者育成をしっかりやってくれる学校に投資するのも良いな。
今みたいにダンジョンをただ経験させるだけの遊び程度みたいなのじゃなくて。
:良い魔法具、は自分で手に入れるんだよなあ
:強力なポーション! は自分で拾うよな
:ガチでダンジョン最前線おじさんだから大金で買うものが無くて困る。
:地上の名工に武器の依頼とかしてみたら? 素材次第だけど値段青天井だよ
「む、それはすごくありだな。ああ、いや、でもな……」
その人ちゃんと魔力使えるだろうか。いや、使えないな。
探索者でもちゃんと使える人は稀だし。
でもいい武器を打つなら魔力が使えないとダンジョンでは通用しないんだよな。
そこまで考えたところでひらめいた。
ならば俺が教えてしまえばいいではないか、と。
「うん、ちょっと次地上に出たときには、武器打ってくれる凄い人探すわ。あ、自分で探すから今『この人がおすすめ!』とかいらないからな」
:吉田滝津がおすすめ! っていらないかごめんなさい
:また地上に出て知りたいときに配信で聞いてくれれば答える
:人間国宝で探索者に打ってくれてる人が一人いるはず
:探索者に打つと刀の数の制限無くなるらしいから、打ちやすいんだろ
:だからそういうの今は良いって言われたやん
まあ、一度話題に出てしまうと、こちらが止めようとしても色々とコメントが書かれてしまうのが、この視聴者が多くなった状態の配信だよな。
「じゃ、今夜はおやすみ。また明日な」
:おやすみー
:また明日
:今から寝息配信か
:少しドローンが離れるから寝息は拾えない定期
******
徒歩で歩き続けて一週間程。
:同じ風景飽きてきた
:いや初日とは相当風景変わってるって
:それでも流石に飽きる。空撮の映像でも10分とかで満足だし
:堪え性なさすぎだろ
:なんか面白いものないの?
:まだ緑豊かな方が楽しかった
以前世界樹に行ったときでさえ、歩いた期間は二日。
それに比べて遥かに長い期間歩き続けているので、配信で見ている人たちも相当に減っている。
まあ俺みたいによほど自然とその中を歩くのが好きだ、という類の人でないと、ずっと代わり映えのしない光景を見ているのは飽きるだろう。
とはいえ、代わり映えがしない、というのは嘘である。
旅に出て4日目ぐらいから、歩いている地面の様子や植生が大きく変わってきたのだ。
そこまでは緑豊かな自然だったのが、次第と緑が少なくなり、代わりに茶色やオレンジの大地と砂や岩の地面がむき出しになってきた。
荒れ地エリアに踏み込んだのだ。
そして色々と文句を言われながらも俺がこっちに歩き続けているのには理由がある。
「もうしばらくしたら良いもの見れるから待ってろって」
:そう言われて一日立つんですが
:もう飽きたよ
:というか自然よりモンスターとの戦闘見せてほしい
:それな
視聴者たちは不満たらたらだ。
ちなみにここはあくまで通過点でしか無いし、今から彼らに紹介する良いものも横を通り過ぎるだけでそれ自体が目的地ではない。
そうこうしているうちに、日が天頂に差し掛かる頃に、ようやく俺は、彼らに見せようとしていたものを、小高い岩の上から見下ろしていた。
「どうだ、凄いだろ」
目の前に広がる光景を見ながら、ドローンにそれを示す。
:でっか……
:広いな
:見渡す限り砂の色なんだが
:見せたかったものってこれ?
「いや、砂漠自体ではないな。砂漠は地球にだってあるだろ?」
:それはそう
:なんかファンタジー要素が無いと
:なにかあるの?
俺の言葉にコメント欄からは肯定が返ってくる。
確かに大砂漠はそれだけで日本人にとっては凄いものだが、とはいえ今どきはそれらはテレビや配信サイトなんかで見れるものでもある。
そしてもちろん、俺が見せたかったものはそれだけではない。
目の前に、ずっと奥の方まで続いている砂の海。
ほとんど平坦に見えるそれを構成する砂は、実を言えば、何らかの力を受けてその全体が大きく動き続けている。
ところどころでは波のように砂丘部分が動いているのが見て取れるだろう。
:あれ、なんか動いてない?
:動くってか……砂が流れてる?
:なんだあれ、砂丘が波みたいに動いてるのか
:流砂? でもあんな規模見たこと無いぞ
まさしく海の如くうごめく砂。
それがこの、俺が配信で流すためにやってきた場所だ。
そしてそんな場所だからこそ、現実には存在しないような生物も存在している。
のだが。
「まあ、そううまくはいかんか」
残念ながら今日は見える範囲には顔を出してくれないらしい。
まあ遥か彼方まで広がっている砂漠の中で、小高い岩の丘の上に立つとはいえ俺から見えている範囲はわずかだ。
「ほんとはな、もっととびっきりのものがあったんだけど──」
そう言った直後、遥か遠くの砂丘の向こう側から、勢いよく砂の息吹が吹き出すのが見えた。
それを確認した瞬間俺は、ドローンを掴んで、自身に魔法をかけて空を飛んだ。
:どうしたどうした!?
:また急にドローン掴む。
:普通そんな掴んで動かすものじゃないんだが
:ジョンの動きにドローンがついてこれないんだから仕方ない
「見えた──!」
砂丘の向こう側遥か遠くにわずかにだが見えたそれに口角を上げる。
「配信に映ってるか?」
:なんか砂丘の向こうに岩の塊みたいなのがある
:遠くてほどんど見えないけどなにかあるのはわかる
:何、あれ動いてね?
直後に大山が鳴動した。
砂の海を穏やかに泳いでいたその複数の生物が、体についた小さな動物を振り落とすためか、その身を捩らせながら大ジャンプを決めたのである。
その様は、イルカやシャチが時折見せるそれに似ていたが、規模感が全く違った。
遠く離れたここにまで、わずかに震動が伝わってくるほどの複数の大質量のジャンプ。
以前もっと近くで見たときには、その迫力に俺は呑まれてしまった。
でかく数が多いというのはそれだけでかっこいい。
「ちょっと遠かったなあ。もっと近かったらビビるぐらいかっこいいんだが」
サイズ感としては50メートル以上80メートル未満。
そんな大きさのクジラのような生物が、複数まとめて宙を舞う。
その光景の迫力は推して知るべしだ。
:遠くて小さく見えるけど、あれめっちゃでかくね?
:距離感がわからねえ……
:ジョン、もっと近づいて見せてくれ! 俺達はああいうのが見たい!
:ああいうファンタジーなのを求めてるんですよ!
:砂の海とかもうそれだけでぐああああってくるのに、それを泳ぐ生物がいるとか、何?
視聴者の一部には俺が見せたものの凄さが伝わったらしい。
ならばよかった。
それにしてもドローンのカメラ結構性能が良いんだな。
流石に遠くて碌に映像では捉えられないかと思った。
だが残念。
あれを見るのはここで終わりだ。
「あれを見るのはまた今度な。いつか俺が、この流砂の海を渡れるだけの船を作ることが出来たら、そのときこそ見に行こう」
:船、ふね!?
:一人で作るとか完成しないやつじゃん
:ジョン他にもやりたいことあるんだろ?
:取り敢えず完成しない覚悟だけはした
「見たければ、君等も来て自分たちの目で見たら良い。だろ?」
:そう言われると……
:ぬあああ! ダンジョン行ってくる!
:そっち行くまでに爺さんになってそうなんだよなあ
:ある程度先が攻略されて効率化されないと、今のままのペースじゃ厳しいかな
:でもあれは見たい! ファンタジー見たい!
「まあそこは諸君の頑張りしだいってことで。後は帰りにも立ち寄るから、そのとき運が良ければな」
そう言って、俺は大砂漠に背を向けて小高い岩を降りる。
ここは道中にあったから見に来たが、今回の目的地ではない。
もともと今回の冒険に目的地は無くひたすら歩き続け、気になるものがあったらそれを探索する、と決めているのだが、あの砂漠については事前からその存在については知っていたのである。
だから今回の冒険の対象としては不適格なのだ。
「さて、それじゃあ旅を続けるとするか」
故にまだまだ、旅は続くのである。
おかげで俺は、移動しながらも戦い方の型やパターン、動きについて解説する羽目になってしまった。
いやまあ無視しても良かったのだが、せっかく自分から焚き付けたのだからと少しばかり付き合ってしまったのだ。
おかげで寝るまでドローンの前で様々な戦い方のレクチャーをする羽目になってしまった。
だがそれも、翌日以降は旅の日程に絡むので全てを断って、ただただひたすらに歩を進め続けた。
途中でロボが飽きて走っていっては獲物を取ってきたり、夜には俺がそれを捌かされたりはしたものの、日があるうちは旅を、日が落ちてからは夜営と配信での雑談を、というルーティーンが見事に出来上がった。
おかげで日中にやたらと話すことを求められることも少なく、夜焚き火を灯し食事をしてから寝るまでの僅かな時間、視聴者と話すことを楽しめるようになってきた。
:そう言えば、あの二人助けるときに10億ふっかけたのなんで
:確かにジョン・ドゥなら自力で簡単に稼げそうだな
:十億が微妙に大金すぎてわからん
:スポーツ選手とかなら普通に貰ってる人多いもんな
「あれはまず二人に覚悟を求めたんだよ。『俺に助けて貰うって、そういうことだよ。俺の時間にはそれだけの価値があるのを奪うんだよ』って。金額についてはぶっちゃけ適当。その辺のギルドとか個人が俺に何かを依頼するのを躊躇う金額でかつ彼女らが将来的にはギリギリ返せそうな金額にした。ちゃんと説明してあげればよかったかな」
あのときは深くは考えずにこんな金額設定にしてしまったけど、どうせなら面倒くさがらずに今みたいな説明ぐらいはしてやれば良かったかもしれない。
いやでも完全に迷惑をかけられた側だったしな……やはりあのぐらいが妥当か。
「うん、やっぱり妥当だったな。俺が迷惑かけられた側だったし」
:一体この一瞬に何があったのか
:思考が急転換してて怖い
:直前まで「説明してあげれば良かった」とか言ってたのに、やっぱあれで良かったって
:実際に10億二人かた受け取るつもりなの?
「そりゃもちろん正当な報酬だし受け取るよ。むしろ受け取らなかったらそのために頑張ってる二人に失礼だろ。使い道は考えてないけど」
本当に考えてないけど。
10億とかどうしよう。
地上にどこか広い土地でも買って豪邸でも建てるか?
そんで敷地を広くすることで他の人と接触しないで良いようにするとか。
それかその10億で探索者育成をしっかりやってくれる学校に投資するのも良いな。
今みたいにダンジョンをただ経験させるだけの遊び程度みたいなのじゃなくて。
:良い魔法具、は自分で手に入れるんだよなあ
:強力なポーション! は自分で拾うよな
:ガチでダンジョン最前線おじさんだから大金で買うものが無くて困る。
:地上の名工に武器の依頼とかしてみたら? 素材次第だけど値段青天井だよ
「む、それはすごくありだな。ああ、いや、でもな……」
その人ちゃんと魔力使えるだろうか。いや、使えないな。
探索者でもちゃんと使える人は稀だし。
でもいい武器を打つなら魔力が使えないとダンジョンでは通用しないんだよな。
そこまで考えたところでひらめいた。
ならば俺が教えてしまえばいいではないか、と。
「うん、ちょっと次地上に出たときには、武器打ってくれる凄い人探すわ。あ、自分で探すから今『この人がおすすめ!』とかいらないからな」
:吉田滝津がおすすめ! っていらないかごめんなさい
:また地上に出て知りたいときに配信で聞いてくれれば答える
:人間国宝で探索者に打ってくれてる人が一人いるはず
:探索者に打つと刀の数の制限無くなるらしいから、打ちやすいんだろ
:だからそういうの今は良いって言われたやん
まあ、一度話題に出てしまうと、こちらが止めようとしても色々とコメントが書かれてしまうのが、この視聴者が多くなった状態の配信だよな。
「じゃ、今夜はおやすみ。また明日な」
:おやすみー
:また明日
:今から寝息配信か
:少しドローンが離れるから寝息は拾えない定期
******
徒歩で歩き続けて一週間程。
:同じ風景飽きてきた
:いや初日とは相当風景変わってるって
:それでも流石に飽きる。空撮の映像でも10分とかで満足だし
:堪え性なさすぎだろ
:なんか面白いものないの?
:まだ緑豊かな方が楽しかった
以前世界樹に行ったときでさえ、歩いた期間は二日。
それに比べて遥かに長い期間歩き続けているので、配信で見ている人たちも相当に減っている。
まあ俺みたいによほど自然とその中を歩くのが好きだ、という類の人でないと、ずっと代わり映えのしない光景を見ているのは飽きるだろう。
とはいえ、代わり映えがしない、というのは嘘である。
旅に出て4日目ぐらいから、歩いている地面の様子や植生が大きく変わってきたのだ。
そこまでは緑豊かな自然だったのが、次第と緑が少なくなり、代わりに茶色やオレンジの大地と砂や岩の地面がむき出しになってきた。
荒れ地エリアに踏み込んだのだ。
そして色々と文句を言われながらも俺がこっちに歩き続けているのには理由がある。
「もうしばらくしたら良いもの見れるから待ってろって」
:そう言われて一日立つんですが
:もう飽きたよ
:というか自然よりモンスターとの戦闘見せてほしい
:それな
視聴者たちは不満たらたらだ。
ちなみにここはあくまで通過点でしか無いし、今から彼らに紹介する良いものも横を通り過ぎるだけでそれ自体が目的地ではない。
そうこうしているうちに、日が天頂に差し掛かる頃に、ようやく俺は、彼らに見せようとしていたものを、小高い岩の上から見下ろしていた。
「どうだ、凄いだろ」
目の前に広がる光景を見ながら、ドローンにそれを示す。
:でっか……
:広いな
:見渡す限り砂の色なんだが
:見せたかったものってこれ?
「いや、砂漠自体ではないな。砂漠は地球にだってあるだろ?」
:それはそう
:なんかファンタジー要素が無いと
:なにかあるの?
俺の言葉にコメント欄からは肯定が返ってくる。
確かに大砂漠はそれだけで日本人にとっては凄いものだが、とはいえ今どきはそれらはテレビや配信サイトなんかで見れるものでもある。
そしてもちろん、俺が見せたかったものはそれだけではない。
目の前に、ずっと奥の方まで続いている砂の海。
ほとんど平坦に見えるそれを構成する砂は、実を言えば、何らかの力を受けてその全体が大きく動き続けている。
ところどころでは波のように砂丘部分が動いているのが見て取れるだろう。
:あれ、なんか動いてない?
:動くってか……砂が流れてる?
:なんだあれ、砂丘が波みたいに動いてるのか
:流砂? でもあんな規模見たこと無いぞ
まさしく海の如くうごめく砂。
それがこの、俺が配信で流すためにやってきた場所だ。
そしてそんな場所だからこそ、現実には存在しないような生物も存在している。
のだが。
「まあ、そううまくはいかんか」
残念ながら今日は見える範囲には顔を出してくれないらしい。
まあ遥か彼方まで広がっている砂漠の中で、小高い岩の丘の上に立つとはいえ俺から見えている範囲はわずかだ。
「ほんとはな、もっととびっきりのものがあったんだけど──」
そう言った直後、遥か遠くの砂丘の向こう側から、勢いよく砂の息吹が吹き出すのが見えた。
それを確認した瞬間俺は、ドローンを掴んで、自身に魔法をかけて空を飛んだ。
:どうしたどうした!?
:また急にドローン掴む。
:普通そんな掴んで動かすものじゃないんだが
:ジョンの動きにドローンがついてこれないんだから仕方ない
「見えた──!」
砂丘の向こう側遥か遠くにわずかにだが見えたそれに口角を上げる。
「配信に映ってるか?」
:なんか砂丘の向こうに岩の塊みたいなのがある
:遠くてほどんど見えないけどなにかあるのはわかる
:何、あれ動いてね?
直後に大山が鳴動した。
砂の海を穏やかに泳いでいたその複数の生物が、体についた小さな動物を振り落とすためか、その身を捩らせながら大ジャンプを決めたのである。
その様は、イルカやシャチが時折見せるそれに似ていたが、規模感が全く違った。
遠く離れたここにまで、わずかに震動が伝わってくるほどの複数の大質量のジャンプ。
以前もっと近くで見たときには、その迫力に俺は呑まれてしまった。
でかく数が多いというのはそれだけでかっこいい。
「ちょっと遠かったなあ。もっと近かったらビビるぐらいかっこいいんだが」
サイズ感としては50メートル以上80メートル未満。
そんな大きさのクジラのような生物が、複数まとめて宙を舞う。
その光景の迫力は推して知るべしだ。
:遠くて小さく見えるけど、あれめっちゃでかくね?
:距離感がわからねえ……
:ジョン、もっと近づいて見せてくれ! 俺達はああいうのが見たい!
:ああいうファンタジーなのを求めてるんですよ!
:砂の海とかもうそれだけでぐああああってくるのに、それを泳ぐ生物がいるとか、何?
視聴者の一部には俺が見せたものの凄さが伝わったらしい。
ならばよかった。
それにしてもドローンのカメラ結構性能が良いんだな。
流石に遠くて碌に映像では捉えられないかと思った。
だが残念。
あれを見るのはここで終わりだ。
「あれを見るのはまた今度な。いつか俺が、この流砂の海を渡れるだけの船を作ることが出来たら、そのときこそ見に行こう」
:船、ふね!?
:一人で作るとか完成しないやつじゃん
:ジョン他にもやりたいことあるんだろ?
:取り敢えず完成しない覚悟だけはした
「見たければ、君等も来て自分たちの目で見たら良い。だろ?」
:そう言われると……
:ぬあああ! ダンジョン行ってくる!
:そっち行くまでに爺さんになってそうなんだよなあ
:ある程度先が攻略されて効率化されないと、今のままのペースじゃ厳しいかな
:でもあれは見たい! ファンタジー見たい!
「まあそこは諸君の頑張りしだいってことで。後は帰りにも立ち寄るから、そのとき運が良ければな」
そう言って、俺は大砂漠に背を向けて小高い岩を降りる。
ここは道中にあったから見に来たが、今回の目的地ではない。
もともと今回の冒険に目的地は無くひたすら歩き続け、気になるものがあったらそれを探索する、と決めているのだが、あの砂漠については事前からその存在については知っていたのである。
だから今回の冒険の対象としては不適格なのだ。
「さて、それじゃあ旅を続けるとするか」
故にまだまだ、旅は続くのである。
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──【いずれ配信要素あり】死んで覚える異世界探索~幾度倒れても目指す道は最強のみ~https://www.alphapolis.co.jp/novel/444931402/316872226作者の別小説です。こちらはアルファポリスで書籍化にチャレンジしてみようと思って出しております。序盤数話一気に投稿していますので、是非読んでみてください。
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