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第28話 目覚めた脅威
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「走れロボッ!!」
「バウッ!!」
巨大なそれが飛び出した直後、俺はロボに叫びながら腹を両足で強く叩いた。あれはあかん。あのサイズはちょっと洒落にならん。どう見たって、あの徘徊恐竜よりもでかい。直径数百メートルはある世界樹と並んでいるので誤認しそうになるが、飛び出してきた何かも頭部だけで数十メートルはある巨大さだ。
巨大なそれの出現によって一気に世界樹全体が騒がしくなる。モンスターが騒ぐ喧騒は、数キロは上からその混乱を地上まで伝えている。
単純に言って、まじでやばい。
「そのまま駆け上がれ! 『解放』『加速』『脚力強化』『反重力』『跳躍力強化』」
手の甲に刻んだ魔法紋に魔力を流して陣を刻み、ロボに連続で魔法を重ねがけしていく。魔法が重なるごとにロボがぐんと加速していき、やがて世界樹の根本まで降りる際に降った崖に向かって勢いよく跳躍した。
両足がつける足場に着地すると再度跳躍、今度はわずか前脚だけかかるところに足を付き、後ろ足は壁面を蹴り飛ばして上へと加速する。
そしてロボの身体が壁を登りきり、崖の上の陸地に着地する刹那。
「ッ!」
首筋にピリリとするものを感じて俺は後ろを振り返った。振り返ってしまった。
視界を埋める赤。
真っ赤な白目部分に、黒目。その中心の瞳孔は蛇のように縦に長く。黒の中に燦然と輝く金色はまるで飲み込まれそうな──
「ふーっ! 目があってるぅー! 走れロボー!」
ロボが全速力で逃げているというのに。この距離ではいくら視力が良いとは言っても、相手が巨大なモンスターだと言っても、数メートルの大きさしか無い目なんて点のようにしか見えないはずだというのに。
その目に飲み込まれそうになっていた。
おそらくは精神干渉系の魔法か何か。普段からそういう致命的な魔法は回避できるように色々と自分で魔法陣を固定してみたり抵抗力の上がる装備を結構使っているのにも関わらずレジストに数秒かかった。あれはつまりそういうレベルのやばいやつだ。
「流石にやべーっ!! あそこまでガチなのはまじで久しぶりだわ!!」
久しぶりにやばいのを見てしまって、少しばかりテンションが上がっているらしい。口から心の中身が飛び出す。
「逃っげるぞーー!!」
ロボの背中から再度軽く後ろを振り返る。精神干渉にはレジスト出来たし、例え相手が知恵があるにしろないにしろ、もう一度精神干渉の影響を受けることはない。
振り返った先では、世界樹の葉から飛び出した無数のモンスターが、そこから更に外へと向かって飛んでいた。おそらく逃げているのだろう。
隣を見ると、陸地を高速で移動する俺たちの隣を、大量の水棲モンスターどもが泳いで同じ方向に向かっている。
「眠り姫を起こしちまったか?」
そんな厨ニくさいセリフすらスルリと口から出る。明らかにあの巨大なモンスターが原因と思える状況に、背筋がゾッとするものを感じながらも、俺は上がる口角を抑えることが出来なかった。
******
「ふいー」
『ハッハッハッ──』
「お疲れロボ」
一目散に拠点まで逃げ戻ったところで、俺とロボは草原の上にひっくり返って大きく息を吐いていた。ロボに結構ガチで走らせてしまったし、俺はそれに掴まるので結構疲れた。自分の荷物も手に抱えてたから体勢が中途半端だったのだ。
「いやー、やんばいのいたな」
『ガウッ』
世界樹にも強いモンスターはいるだろうとは思っていたが、あのレベルは流石に想定外である。あくまであのエリアの中心は世界樹だと思っていたのだが、あるいは違うのではないかと。そう思ってしまうほどの圧を放つモンスターだった。
「あー、でもそうかー」
一瞬振り返ったときに見えた巨大なあれ、モンスターの姿を思い出して、1つ思い浮かんだことがある。
「世界樹には、ニーズヘッグが食らいついてるんだったっけ」
全体的に青紫の色彩をした、蛇のような龍の姿。胴の長さや頭との太さの差などをみれば形状は蛇に近かったが、その頭部についた冠に角と、何より世界樹をがっしりと掴む鋭い爪の生えた足が、それがただの龍ではないことを示していた。
ぶっちゃけかっこよかった。
「ん? でもそれなら大鷲……フレースヴェルグはいないのか」
まあ流石に神話がそのまんま適応されるとかは考えづらい。が一方で、この世界樹に巨大なドラゴンが棲み着いているという妙な北欧神話との一致は、何かの手がかりになる気がする。この一致が全くの偶然なのか。
あるいは、必然の一致なのか。北欧神話はどこから来たのか。
「いや、大鷲おったら絶対おっかけられてるからいなくて良かったわやっぱり。あのサイズのドラゴンはそう動かんやろ」
と、そこで一息ついたロボが横合いから俺の頭を小突いてきた。
『バウッ』
「おん、腹減ったんやな。肉はベーコンがあるか。腹いっぱい食いたいからそれと……にんにくつかってガーリックベーコンライスにするか」
ちょうど夕方ほどに探索を切り上げて一目散に逃げてきたので、時間としては夕食の時間が近い。
ロボから鞍を外してやり、荷物をとりあえず倉庫の床に放り出した後。必要な食材を取りに行って、俺とロボの分で大量のガーリックベーコンライスを作りに行く。ロボは結構米が気に入ってくれたらしいので、量を穀物で賄えるのは結構助かっているのだ。
「さーてさーてえ、ドラゴンは自分の宝に近寄るものに嫉妬深いと言いますが~。追ってくるかなあ……」
調子よくリズムにのって独り言を口にしていたが、途中で我に帰ってしまった。ぶっちゃけ追ってこられるとまずいなあ。まだこの世界で最強格のドラゴン種というのを1つしか見たことがないからあいつらがどの程度知能があるかは知らないけども。
まあ結構強いモンスター避けのトラップとか仕込んでるわけだし、ダンジョンの入口という安全圏があるわけだし。流石に追ってこんやろ。
考え事をしつつも手を動かして、にんにくとベーコン、ついでにみじん切りにしたたまねぎも炒めていく。米は鍋で炊いているのでもう少しかかるか?
「ロボー、ホイ!」
先に焼いていたでかいベーコンの塊をまるごとロボに放ってやる。キャッチしたロボは勢いよくかじりついて一口で飲み込んでしまった。まあ口のサイズが俺とは全然違うから仕方ないね。
後は米が炊けるのを待つのみ。
手持ち無沙汰になったところでようやく、配信の方を放置してしまっていたことを思い出した。
「バウッ!!」
巨大なそれが飛び出した直後、俺はロボに叫びながら腹を両足で強く叩いた。あれはあかん。あのサイズはちょっと洒落にならん。どう見たって、あの徘徊恐竜よりもでかい。直径数百メートルはある世界樹と並んでいるので誤認しそうになるが、飛び出してきた何かも頭部だけで数十メートルはある巨大さだ。
巨大なそれの出現によって一気に世界樹全体が騒がしくなる。モンスターが騒ぐ喧騒は、数キロは上からその混乱を地上まで伝えている。
単純に言って、まじでやばい。
「そのまま駆け上がれ! 『解放』『加速』『脚力強化』『反重力』『跳躍力強化』」
手の甲に刻んだ魔法紋に魔力を流して陣を刻み、ロボに連続で魔法を重ねがけしていく。魔法が重なるごとにロボがぐんと加速していき、やがて世界樹の根本まで降りる際に降った崖に向かって勢いよく跳躍した。
両足がつける足場に着地すると再度跳躍、今度はわずか前脚だけかかるところに足を付き、後ろ足は壁面を蹴り飛ばして上へと加速する。
そしてロボの身体が壁を登りきり、崖の上の陸地に着地する刹那。
「ッ!」
首筋にピリリとするものを感じて俺は後ろを振り返った。振り返ってしまった。
視界を埋める赤。
真っ赤な白目部分に、黒目。その中心の瞳孔は蛇のように縦に長く。黒の中に燦然と輝く金色はまるで飲み込まれそうな──
「ふーっ! 目があってるぅー! 走れロボー!」
ロボが全速力で逃げているというのに。この距離ではいくら視力が良いとは言っても、相手が巨大なモンスターだと言っても、数メートルの大きさしか無い目なんて点のようにしか見えないはずだというのに。
その目に飲み込まれそうになっていた。
おそらくは精神干渉系の魔法か何か。普段からそういう致命的な魔法は回避できるように色々と自分で魔法陣を固定してみたり抵抗力の上がる装備を結構使っているのにも関わらずレジストに数秒かかった。あれはつまりそういうレベルのやばいやつだ。
「流石にやべーっ!! あそこまでガチなのはまじで久しぶりだわ!!」
久しぶりにやばいのを見てしまって、少しばかりテンションが上がっているらしい。口から心の中身が飛び出す。
「逃っげるぞーー!!」
ロボの背中から再度軽く後ろを振り返る。精神干渉にはレジスト出来たし、例え相手が知恵があるにしろないにしろ、もう一度精神干渉の影響を受けることはない。
振り返った先では、世界樹の葉から飛び出した無数のモンスターが、そこから更に外へと向かって飛んでいた。おそらく逃げているのだろう。
隣を見ると、陸地を高速で移動する俺たちの隣を、大量の水棲モンスターどもが泳いで同じ方向に向かっている。
「眠り姫を起こしちまったか?」
そんな厨ニくさいセリフすらスルリと口から出る。明らかにあの巨大なモンスターが原因と思える状況に、背筋がゾッとするものを感じながらも、俺は上がる口角を抑えることが出来なかった。
******
「ふいー」
『ハッハッハッ──』
「お疲れロボ」
一目散に拠点まで逃げ戻ったところで、俺とロボは草原の上にひっくり返って大きく息を吐いていた。ロボに結構ガチで走らせてしまったし、俺はそれに掴まるので結構疲れた。自分の荷物も手に抱えてたから体勢が中途半端だったのだ。
「いやー、やんばいのいたな」
『ガウッ』
世界樹にも強いモンスターはいるだろうとは思っていたが、あのレベルは流石に想定外である。あくまであのエリアの中心は世界樹だと思っていたのだが、あるいは違うのではないかと。そう思ってしまうほどの圧を放つモンスターだった。
「あー、でもそうかー」
一瞬振り返ったときに見えた巨大なあれ、モンスターの姿を思い出して、1つ思い浮かんだことがある。
「世界樹には、ニーズヘッグが食らいついてるんだったっけ」
全体的に青紫の色彩をした、蛇のような龍の姿。胴の長さや頭との太さの差などをみれば形状は蛇に近かったが、その頭部についた冠に角と、何より世界樹をがっしりと掴む鋭い爪の生えた足が、それがただの龍ではないことを示していた。
ぶっちゃけかっこよかった。
「ん? でもそれなら大鷲……フレースヴェルグはいないのか」
まあ流石に神話がそのまんま適応されるとかは考えづらい。が一方で、この世界樹に巨大なドラゴンが棲み着いているという妙な北欧神話との一致は、何かの手がかりになる気がする。この一致が全くの偶然なのか。
あるいは、必然の一致なのか。北欧神話はどこから来たのか。
「いや、大鷲おったら絶対おっかけられてるからいなくて良かったわやっぱり。あのサイズのドラゴンはそう動かんやろ」
と、そこで一息ついたロボが横合いから俺の頭を小突いてきた。
『バウッ』
「おん、腹減ったんやな。肉はベーコンがあるか。腹いっぱい食いたいからそれと……にんにくつかってガーリックベーコンライスにするか」
ちょうど夕方ほどに探索を切り上げて一目散に逃げてきたので、時間としては夕食の時間が近い。
ロボから鞍を外してやり、荷物をとりあえず倉庫の床に放り出した後。必要な食材を取りに行って、俺とロボの分で大量のガーリックベーコンライスを作りに行く。ロボは結構米が気に入ってくれたらしいので、量を穀物で賄えるのは結構助かっているのだ。
「さーてさーてえ、ドラゴンは自分の宝に近寄るものに嫉妬深いと言いますが~。追ってくるかなあ……」
調子よくリズムにのって独り言を口にしていたが、途中で我に帰ってしまった。ぶっちゃけ追ってこられるとまずいなあ。まだこの世界で最強格のドラゴン種というのを1つしか見たことがないからあいつらがどの程度知能があるかは知らないけども。
まあ結構強いモンスター避けのトラップとか仕込んでるわけだし、ダンジョンの入口という安全圏があるわけだし。流石に追ってこんやろ。
考え事をしつつも手を動かして、にんにくとベーコン、ついでにみじん切りにしたたまねぎも炒めていく。米は鍋で炊いているのでもう少しかかるか?
「ロボー、ホイ!」
先に焼いていたでかいベーコンの塊をまるごとロボに放ってやる。キャッチしたロボは勢いよくかじりついて一口で飲み込んでしまった。まあ口のサイズが俺とは全然違うから仕方ないね。
後は米が炊けるのを待つのみ。
手持ち無沙汰になったところでようやく、配信の方を放置してしまっていたことを思い出した。
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──【いずれ配信要素あり】死んで覚える異世界探索~幾度倒れても目指す道は最強のみ~https://www.alphapolis.co.jp/novel/444931402/316872226作者の別小説です。こちらはアルファポリスで書籍化にチャレンジしてみようと思って出しております。序盤数話一気に投稿していますので、是非読んでみてください。
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