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第20話 この世界の話
しおりを挟む前回から感想が来て作者はとても嬉しいです!
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昨日の配信では、武器の紹介をした後うどんを食べた。うどんはなかなかに美味しかった。このダンジョンの先の世界のモンスター、全体的に美味しい肉が取れるモンスターがかなり多いように思う。魔力の関係などがあるのか、いつかわかれば良いなと思っている。が、俺は美味しければ結局それで良いのだ。
さて、次の配信はどうしようか。
「まあ別に配信自体は良いんだけどな」
『ガウッガフッ、ハグハグ』
隣で大きな肉の塊に食らいついているロボの脇腹を撫でつつ、そんな独り言を呟く。
配信。という作業。趣味?
俺にとってそれが何かまだはっきりとはわからないが、取り敢えず楽しくやることはできている。こういう距離感での人との関わりはかなり楽しいし。
ただ、何を配信するべきか。否、何が配信していいものなのか、というのはまだ悩ましいところだ。
「マグナリアは流石に衝撃がでかすぎる、っていうか地上への影響が大きすぎてどう出せば良いものか躊躇うしなあ。世界樹あたりならまあ自然の地形ではあるけど……でもあそこもエルフの集落跡あるし」
あまり遠くないところに凍土があるがそこにもダンジョン世界の人類の痕跡は普通にあるし。というかあそこはまるごと冷凍保存されてるようなものだし。かと言って雪山はアホほど遠い。流砂の大砂漠もファンタジー的には素晴らしい景観だが、俺でもまだ踏み込めていない領域だ。そこにただ見学のためだけに行くというのも何かもやもやする。
「難しいなあ」
このダンジョンの中の世界。そこには、人類の痕跡が残っている。俺のようにダンジョンの外からやってきた人類ではなく、もともとこの世界にいた人類の痕跡だ。痕跡というか、普通にまだ綺麗な大都市だったり、何かに対する監視塔であったり、集落であったり、打ち捨てられた魔導機械であったり。そういう人類の存在の証がそこかしこに残っている。
そのそれぞれを詳しく調べたい、というのも今の俺の目的の一つだ。例えばマグノリア、という名前の発音だけがわかっている都市には、大聖堂や図書館、そして巨大な城などが存在している。なんらかの宗教的な建物があったり書物がある以上、調べれば情報は出てくる、あるいは何がしかが見えてくるはずだ。まあ字が読めるかと言われると首を傾げたくなるのだが。
「言語学者の人と話してみればよかったかな」
今更ふと思いついたが、それはまた地上に行くタイミングで考えよう。いつになるかわからないが。
それよりも今考えたいのは、そのどこまでを配信にのせて良いか、ということだ。今は見る人が少ない俺の配信だが、見ている人たちが情報を広める可能性もあるし、アーカイブ自体はチャンネル登録者への限定公開で残している。
そういう中で、ダンジョンの先に人類がいた、という情報は大きな騒ぎを起こさないだろうか。まあ俺はダンジョンの先にいれば地上がどれだけ大騒ぎになったところで迷惑を被ることも無いんだが、今のそれなりに楽しい配信ができなくなるのはもったいないとも思う。
そうなると、結局配信の内容をどうしようか、ということに話が戻ってくるのだ。
加えて、俺があちこちに好き勝手遊びに行くばかりで、細かなマップや集落の場所などの調査をちゃんとやっていないという問題もある。下手に配信をしたまま歩き回っていると、大都市などメジャーな人類の痕跡を避けていても、猟師小屋とか木こり小屋みたいなちょっとした人類の建造物に行き当たってしまう可能性が出てくる。
「まあ、そこまで考えるのは流石に違う気もするけどな」
かと言ってそこまで気にしてまで配信をしたいかというと、それでは絶対いずれ精神的にボロが出るのは経験からわかっているのやりたくない。気を使いすぎて疲れてしまうのだ。そうなると、気になりつつも適度に無視していく、というバランス感覚が求められる。
結局難しく考えてもあまり良い考えは思いつかず。ひとまず、当面はなるべく明らかな建造物を避けつつ探索する様子を配信していくことにした。まあ俺が情報発信していくことで、衝撃的な情報に対する耐性でもつけていってほしい。
******
「というわけで今日からちょっと遠出します」
“どういうわけで?”
“まだ人集まって無いんですが”
「君らチャンネル登録者10人ちょいしかいないのに結構みんないっつも集まるな? 通知とかで来てる感じ?」
配信開始1分ほどで視聴者が2人ほど来たので、思わずそう問いかける。俺告知みたいなのとか一切してないんだが、WeTubeの通知ってそんな細かく来てたか?
“WeTubeの通知で、今登録してる人全員で共有してる”
“通知に気づいた人が声かける感じ”
「ああ、そっちで何か繋がってんのか。なるほど」
道理で、集合率が高いわけである。まあ今現在は10人程度しかいないチャンネルだし、視聴者間での連絡も簡単に出来るだろう。
「ああ、それと一応報告? みたいなもんか。しばらくは限定公開で配信して、今回遠出から戻ったあたりから配信は全体公開にするつもり。いつまでも少人数で心地いい、ってのもいいけど、一応多少の情報発信も俺の目的だからな」
“あーい”
“むしろここまで限定公開にしてくれてるのがおかしい。いやこっちはありがたいけど”
“今来たー。是非是非有名になってくれ”
これは以前から決めていたことだ。どこかのタイミングでチャンネルを広げていく。今は限定公開にしているので登録者以外は気づいていないが、公開範囲を広げればより多くの人が気づくようになるだろう。宣伝なんかをしなくても、少しずつ人は増えていくはずだ。
そんな話をしていると、ある程度人が集まってきたので今日の本題を話すことにする。
「ここ数日は買ってきたものの整理とかでここにいたけど、実際俺がここにいる期間ってそこまで長くなくてな。普段はこの世界をあちこち冒険して回って、その場でモンスター狩ったり仮拠点組んだりしてしばらく過ごして、ってのが俺の生活」
“ほーん?”
“じゃあ冒険に出発するってことか”
“楽しみ”
“何があるんやろなあ。ダンジョンの先の世界”
ここは俺の家ではあるし、どこかに行った後に帰ってくる場所である。でも戻ってきて何か作ったりするとき以外は、1日滞在してすぐ次に出発して、っていうのがほとんどだ。ここしばらくは予定が狂っているが、ダンジョン内で欲しかったアイテムを回収し終えたら再び旅に出るつもりだったのである。
「さて、んじゃあその行き先だけど……」
正面から俺を撮影しているドローンを呼び寄せて一度手に掴む。ちなみにドローンの操作だが、スマホを介さなくても魔力の波長を変化させることで操作ができた。魔力操作スキル英雄級のカンストを舐めてはいけない。
そのまま、一足で駆け上がるように、今の我が家の裏手にある5メートルほどの崖を登る。
その崖を登った先でドローンを離し、俺からその行き先へ。遥か彼方に天をつく大樹を映し出す。
「俺は世界樹って呼んでる。まあとんでもないサイズの木だ。幹の真っ直ぐなところが直系1キロ以上。根は更に広範囲に複雑に広がってる」
以前訪れた際には、外は見て回ったものの内部までは細かくは覗けなかった。これは時間がかかるぞと判断して後回しにしていたのである。前回のダンジョンでの素材集めはその前準備でもあったのだ。
「今回の探索、期間は2週間。移動を除いてな。さて、そんじゃあ準備を始めよう」
~~~~~~~~~~~
アルファポリスからの書籍化ってぶっちゃけどうなんですかね。
目指しやすそうだから目指したいけど、他の文庫のコンテストの応募に響くのかなと思っちゃったり。
誰か有識者はいないでしょうか。
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──【いずれ配信要素あり】死んで覚える異世界探索~幾度倒れても目指す道は最強のみ~https://www.alphapolis.co.jp/novel/444931402/316872226作者の別小説です。こちらはアルファポリスで書籍化にチャレンジしてみようと思って出しております。序盤数話一気に投稿していますので、是非読んでみてください。
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