籠の中の令嬢

ワゾースキー

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第二章

捜索と思考

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 ジャラ…ジャラ…

 歩くたびに冷たい金属音がする。しかし、ミカエラは最大どこまで自ら歩くことが出来るのか、いっぱいいっぱいまで伸ばす様に歩き続ける。

ぴんっ

「っと。 ここまで…ね。 ドアノブまで届くけど、外へは出れない…か。 見送りや出迎えの為の長さって感じね。 えっと…じゃあこっちは…」

 またジャラジャラと鎖を引きづりながら歩く。

「トイレは…いける。 でも鎖が邪魔で少し開けないと出来ないわ。 あと…お風呂もいけるわね。 でも湯船には鎖を取らないと浸かれなさそう。 湯船に入れてくれるか分からないけれど、チャンス…があるかもしれないわね。」

 顎に手を置き、考えながらまた歩き出す。

「窓は…そうよね。開かないし、外から鉄格子がはめられてるわ。 まるで鳥籠みたい。」

 ふっと自分の例えに悲しくなった。

「後は…暖炉…だけど、そこには届かない。 火事を起こしたり、自傷しないようにかしら。 用意周到な事。元々誰かを閉じ込める用に作られてるみたい。
…まさか…ね…」

 嫌な想像を巡らせ、ぶるっと身体を震わすと、両手で自らを抱きしめる。

「クローゼットは…まぁ、何もないわよね。」

 パタンとドアを閉めて、ふぅっと溜息を吐く。

「はぁ…逃げるのは結構大変ね…。
 窓も鉄格子があるし、ドアも外から鍵がかかってる。
 そもそも鎖をなんとかしないと…。 彼らは私をどうするつもりなのかしら。 閉じ込めて…殺す…は、ないわね。 それならとっくに殺されてるわ。 じゃあ…愛人か娼婦みたいになれってことかしら? まぁ、後者の線が妥当ね。 4人同時の愛人なんて聞いたことがないもの。 でも…」

 椅子に腰掛けて考えを巡らす。

「そもそもフレッド兄様とエレン兄様はなぜこんな事を? いくら異父でも家族に違いないのに。 それにクラウドは…ただの幼なじみだし、ルイズ様もただ、勉強を一緒にしたってだけだわ。 私を囲う意味が分からない…」

 うぅーんと、頭を抱え悩む。ミカエラにとって彼らは家族愛や友達や知人の中では好きではあるが、元々男性が苦手ということもあり、彼らを特別好きという感情もなければ、好かれるような行動もとったつもりがないため、身に覚えがなかった。

 ミカエラは全く自覚がなかった。今の彼女は、身長が160㎝ほどのスラっとした長身で、腰は細く、くびれが美しい。胸は溢れんばかりの膨よかさで、魅惑的な身体付きな上、余り外に出ないため、色白できめ細やかな肌をしており、顔立ちは美しくまさに美女である。
 腰まであるプラチナブロンドはキラキラと輝き、彼女を見たものは、ため息を漏らす。
 また、男性が苦手ということもあり、浮いた噂一つなく、また少し下がって立ち回る姿は、まさにこの国の女性には考えられない行動であり、教養だけでなく、学問にまで精通しており、理想の女性の集大成だった。

 自分が男性たちから高嶺の花の様に扱われていることに気付くこともなく毎日を過ごした。

 ミカエラは、極端に社交を避けていたので、他の女性達の強気の態度、ギラギラと着飾って香水を振り撒く姿、獲物を狩る狩人のような熱の籠った瞳、自分と周りの令嬢との見目の美しさの違い、どれだけ多くの違いがあるのか知らなかった。

 噂を聞いた貴族の男性達は、一目見たいとパーティーに参加してみたり、お茶会に呼ばれる様に根回しなどするものの、兄達に邪魔され、一向に会えず、たまたま見かけることが出来た男性は、どれだけミカエラ嬢が美しかったか、自慢して回るため、ミカエラに求婚が絶えず、それをクラウドやルイズたちが牽制して回っていた。
 
 彼女はそこに存在しているだけで多くの男性を虜にしてしまっていた。
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