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第4章 もふもふな幼子たちと子守役は森にお出掛けする

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 最初の味見は二尾の長森と草原の長にお願いしたいと、森の毛玉たちが総出で訴えた。
キラキラとした何かを期待している目に囲まれては、流石に辞退し難くて、二尾の長が大毛玉から大きな切り株を受け取ると、すかさずそこに良い匂いのモノが移し入れられた。
 『『…さあ、あじみをどーぞ、だニィ。おさの、しょうじきなきもちを、ききたいニィ~』』
入れ物は、大きさの割に底が浅い皿型だったので、長は緊張して、皿底を舐めるように舌先で味をみた。
 『…あぁ、この味や、昔食べたモンと同じ味や、毛玉ら、よう頑張ったなぁ。
 せっかく頑張って作ったんや、毛玉らも味見して見んか。』
二尾の長が味に合格を出したことで、ほっと一息つくと、小毛玉たちはいそいそと小さな皿を持って列を作った。
 『…あぁ、幼子たちゆき・かすみ・しずく用の入れ物は、こっちだに~ちびたち二尾の長の森の幼子たちの分もあるに~中に味見分の美味しいモノが入ってるから、零さないように気を付けるに~』
身軽なほっそりした大毛玉いたちたちは、長い枝が付いた切り株を使って、大きな切り株の中身を器用に掬い上げて、それぞれの皿に分け入れていった。
 「・たけ・のきりかぶは、べんりでしゅね、そこがあさくても、えだがついてても、ちゅかえる、でしゅね~」
しずくは、力持ちで丸いお腹の大毛玉たぬきが抱えている、たっぷりと中身が入った重そうな切り株と見比べて言った。
 『ホンマにそうやなぁ。この美味いもんかて、そもそもの話、このいれもん無しでは、作られんかったしなぁ。
 さて、皆に美味いモンが行き渡ったな。ほな皆の努力の結果や、味を確かめてくれや。』
 『『…いただきますニィ~おいしいニィ~』』
 『『頂きますだに~美味しいに~これが、御山で長が食べていた、美味しい物なのかに~』』
手元の皿をひとなめした毛玉たちは、努力が報われたと、感動していた。
毛玉と羽玉のちびたち二尾の長の森の幼子たちも、美味しい美味しいと夢中で舐めていたが、あっという間に嘗め尽くしてしまった。物足りないのか、お代わりを探してキョロキョロしていた。
一方で、白い御山の幼子たちゆき・かすみ・しずくはじっくりと味見をして、美味しくて喜びながらも、作り方に興味が尽きないらしかった。
 「わふっ『いいにおいだし、とてもおいしい!でも、あのくさのみとは、ぜんぜんにおいが、ちがってる!ほんとに、あのくさのみで、つくった?』」
 『ホンマやで~ただし、一つだけや無くて、二つの草の実で作るんや。幼子らにも手伝ってもろうた草の実が一つ目やな。それから二つ目は、まだ実を付けとらん草があったやろ、あの草の実やな。』
 「ぴぃ~『そのふたつをまぜても、このいいにおいに、ならないし、あれは、かたい!
 それなのに、このおいしいものは、やわらかくて、あまい。よくうれた、おいしいきのみ、みたい!』」
 『ホンマによう見とるな~草の実は、そのままでは使わんのや。一つ目の実は、綺麗な水に浸して芽を出させてな、それから乾かして細かい粉にするんや。
二つ目の実も、乾かして固い殻を剥くんや、それからこれも粉にするんやで。時間も手間もかかるんやで。ホンマ、めんどくさいんや。』
 「でも、くさのみのこな、ふたつまぜても、おいしくない、でしゅよね~?おみじゅに、いれても、おいしくなさそうでしゅ。
 それに、このおいしいものは、とろとろしてましゅ、おみじゅとも、ちがいましゅ~」
 『そのとーりや、草の実を粉にするまでは、準備なんや。この後、粉をトロトロにするんが、味の決め手なんや。
 この美味いもんは、あそこに見える御山黒い(火)御山でよう作っとる食いモンでな、草の実を粉にするンも、トロトロにするンも、御山でなら簡単なんや。実は御山には、ものすごく岩が熱うなった場所があってな、そこの近くの岩に乗せて置くだけで、草の実なんぞすぐに乾くんや。しかも岩の窪みに水を入れれば、すぐに熱くなるんや。それでその熱い水に二つ目の草の粉を入れてよく混ぜて、少し冷ましてからもう一つの粉を入れて更に混ぜると、だんだんトロトロになってどんどん美味しくなるんや。
ところが、この森では岩がそこまで熱くはならんからなぁ。熱い水も、なかったから、上手いことトロトロにできんかって、難儀しとったんや。』
 『ところが、この度その問題が、解決したんだに~』
二尾の長がためを作ったところで、横から合いの手が入った。





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