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第4章 もふもふな幼子たちと子守役は森にお出掛けする
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しおりを挟む二尾の長のお家の樹に招待されて、幼子たちはその中のうろに座って、ようやく気持ちも落ち着いてきた。
「わふっ『このうろ、おちつく、つかれとれる!』」
「ぴぃ~『ほんとに、おちつく、おもったより、つかれてたみたい!』」
「しじゅくたち、もうげんきになりまちた、ありがとでしゅ、だから、おさのおはなしの、つづき、ききたいでしゅ!」
お家の樹のお客の幼子たちに、うろの中を褒められたうえでお話をせがまれて、二尾の長も嬉しそうだったが、毛玉と羽玉のちびたちはそれ以上に得意げだった。
「くう~ん『そう、このおうち、とっても、すごい!おそとでの、つかれ、なおす!』」
「ちちっ『おさは、ものしり、なんでも、しってる、なんでも、きくといい!』」
あまりにも強いちびたちの信頼に、二尾の長も苦笑した。
『ちび共、褒めてくれて、ありがとな。でもさすがに何でもはわからんでな、知っとる事だけ、話しするな。
さて、この前のうちの御山の守護者様の話からすると、お友達の幼子らは、此処とは遠く離れた場所にある別の御山の幼子、なんやな?
確か、白い御山、ゆうたはずや。』
二尾の長に聞かれて、かすみが羽を広げて答えた。
「ぴぃ~『かすみたちが、うまれたのは、しろいおやま、そうきいた。かすみたちの、ししょうが、おやまのしゅごしゃさまたちだ、ともきいた。』」
「わふっ『ゆきたちは、いまはもりで、しゅぎょうちゅう!』」
『さよか、それで色々納得した。御山から出たもんやから、守護の力が弱くなっとったんやろ、そんで迷子になった、いう事やな。これはワイらにはどうも出来ん。
そのうち守護の力が働くやろから、幼子らもその時帰れるやろ、のんびり待っとこうな。』
二尾の長に、念を押されて、幼子たちは大人しくうなずいた。
『よしよし、良い子らや、ほんなら質問に答えよかね。
ワイが聞いた話やと、白い御山は此処よりずっと寒い場所や、その周りの森もここより涼しいんやろ。そやから、この森に来た時から、白い御山の幼子らは、この辺りの慣れん暑さで、疲れたんやな。
この辺りの森は、ただでもいつも暑いのに、特に長雨が降った後からは、草原に吹く風までが熱うなるんや。
しかも、森や草原を歩いていただけでも、この時期何時の間にか全身濡れて、ビショビショになるんやで。
せやからワイらでも疲れてしまうんで、この時期外にはあんまり長くは出られんのや。
ここで外での話の続きやが、この樹はすごいで!実は、このうろの中は、何時でも外より涼しいんや。今の時期なら、外よりかなり涼しくなっとるはずや。
しかも、この中で黙って座っとるだけでも、濡れた毛も羽も乾くんや。そりゃあ、体も軽う感じるわな。
白い御山の幼子らがこのうろの中では落ち着く、疲れが取れた云うんは、このお家の樹の特徴のお陰やな。』
二尾の長は、変なのと言われたお返しに、たっぷりとお家の樹の自慢話を語った。
だが別に悪気も無かった幼子たちは素直に感心して、更に聞いた。
「このおうち、しゅごい、あんしんできるでしゅね。あめよけは、このままつけておくでしゅか?」
『もちろんや、それがないと、外の熱い風と水が、中に入ってくるんや。ちび共も、それをずらしたり外したりしたら、あかんで!』
二尾の長が厳しく言うと、もちろん幼子たちは、白い御山の子もこの森のちびも、皆即座に頷いた。
「ぴぃ~『どーして、このなかは、すずしくなる?』」
話を替えようと、かすみが長に問いかけた。
『この時期、長雨のせいで、森や草原だけやなく、土の中まで水が溜まっとるんや。川も拡がる位や、歩くのも無理なとこもできるんやで。
その土の中の水を、この樹がほとんど吸い取っとるみたいでな、この樹の周りだけ、土が乾いとるんや。
特にこの丘の広場は丸岩の樹が囲んどるからなぁ、歩いとってもなんとも無かったやろう?
丸岩の樹の生えてない丘は、ぐちゃぐちゃで、歩かれんようになっとるで、お出掛けには注意やな。』
「わふっ『そんなに、おみずすって、このきは、へいき?』」
『大丈夫みたいやで。この樹の幹に触ってみたらわかるけど、外側は普通に硬いんやけど、うろの側はいつもはふわふわなんや。
これが雨の後やと、ぶよぶよになってなぁ、ど-やらここに、水を溜めとるみたいやな。
雨が降らん時期になると、だんだん元のふわふわに戻るんや、不思議な樹やで。』
二尾の長は、しみじみと語った。
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