上 下
45 / 123
第3章 幼子たちと子守役たちはモフモフ巡りをする

3-4

しおりを挟む



 幼子たちと若葉色の長・みかん色の尻尾同行付き・巨木の洞内散歩は、その範囲を外の枝にも向けることとなった。

だが、出入口付きの枝は、しっかりした太いものではあるが、内壁を巡る道や、巨木を支える太い根を使った根っこ道ほどではないし、何より揺れる。

しずくはみかん色の尻尾と手を繋いでいるし、かすみはもとより飛べるので、若葉色の長としてはどちらも安心だ。問題は、ゆきだった。

 『ふ~む、興奮して駆け回ると、揺れる枝から足を踏み外して、枝から落ち易いのだ。』

対応策として、長が抱えて歩こうと提案して皆が賛成し、ゆきはご機嫌斜めだ。

 「くう~ん…『だいじょぶなのに~』」と、独りとぼとぼと皆の後ろからついてきた。

 『ふ~む、駆けださない、行くなという所へ行かない、止まれと言われたらすぐ足を止める。約束できるか?』 

あまりにも不満げなゆきに、若葉色の長も渋々譲歩をしたが、まだ心配そうで、重ねて長から離れないことを約束させていた。


 若葉色の長との約束を取り付けてご機嫌を取り戻したゆきを先頭にして、お散歩の一行は外の枝元に出てきた。

巨木の根元と違い、目の前も頭上も枝葉が視界を遮るほど近い。なのにその枝葉もすべて巨木の物だけなので、不思議とすっきりとして見える。

木漏れ日が廻り中を淡い緑に輝かせて、どこを見ても同じような風景だ。そんな森の中とも異なる風景の中を、お散歩一行は枝先へと進んでいった。

風景に溶け込みそうな若葉色の長を先頭に、みかん色の尻尾のモフモフを手に握り込んだしずくが尻尾主と並んで歩く。ゆきはその間を歩く約束だ。


進むにつれて、枝が細く揺れが大きくなり、長の歩みはより慎重にゆっくりになっていった。しずくはさらにゆっくり恐る恐る、みかん色の尻尾にしがみついて歩いていく。

 「もっとしっぽ、いっぱいちゅかんで、いいでしゅか?こわくないでしゅか?」

一方でかすみは自由に枝から枝へと飛び渡り、今もゆきの鼻先近くの枝で、小枝と尾羽を揺らしている。

 「ぴぃ~『ここもへいき~』」

そのかすみに近付こうとしても枝は細すぎて、長からも離れられず、ゆきは行きつ戻りつ忙しく歩き回っている。

 「くう~ん『やくそく…』」


ゆきもかすみも枝の揺れなどお構いなしに動き回る中、若葉色の長の一歩で、枝が大きく揺れて一行の歩みが止められた。

 『ふむ、今回はここまでだな。ここからでも見えるが、あの枝が隣の巨木の物だ。小さき者たちは、間の小枝を伝って行き来している。

 ふむ、今は揺れが大きくて、落ち着くまで待っているのか?』

幼子たちが探してみると、小枝のあちこちで枝葉に何か隠れていた。

 「ぴぃ~っ!『こんにちは~』」早速ご挨拶しようと、かすみが飛んでいった。

 「わふっ!『あそぼー』」負けじとゆきも小枝に向かった。

 「『『ゆき、とまって!』』」長たちが、急いで止めるが間に合わず、ゆきの姿が枝葉に突っ込んでいき、沈んでいった。

慌てたしずくがゆきのもとへ行こうとするが、ミカン色の尻尾の毛が巻き付いて動けない。どうしたのかとみかん色を見上げるしずくを、ミカン色の尻尾は優しく同じく動かない若葉色に渡した。

 『後しばらくの間、止めておいて欲しいなのね、ついでにこの子もよろしくなのね~』そう言って、ミカン色の尻尾も枝葉に向かった。

今度は言葉も出さない若葉色の長の、長い尾毛に巻き付かれ、動けないしずくは見ているしかない。

ミカン色の尻尾が、枝葉の中に沈んでいったと同時に、
 『見つけた、放してなのね~』と、声がした。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女召喚で呼ばれた私は女神(仮)でした

ミツ
恋愛
高校に通う相沢美咲は、帰宅途中に目眩に襲われる。 一瞬、意識を刈り取られたが直ぐに覚醒する。 しかし、目の前には見知らぬ人々。 有無を言わさずその場を追い出された私は、その会場にいた一組の夫婦に救われる。 そして、知ったのは聖女召喚で呼ばれたが容姿が違う為に追い出された事実。 聖女の条件は……黒い髪に黒い瞳? えっ、私、そうだけど……えっ? この美少女は誰? えっ、私!?

魔王

覧都
ファンタジー
勇者は、もう一人の勇者と、教団の策略により人間の世界では不遇だった。 不遇の勇者は、人生のリセットすることを選び、魔王となる。 魔王になったあとは、静かに家族と暮らします。 静かに暮らす魔王に、再び教団の魔の手が伸びます。 家族として暮らしていた娘を、教団に拉致されたのです。 魔王はその救出を決意し……。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

英雄じゃなくて声優です!

榛名
ファンタジー
『大勢の人達に届く声量と、聞き取りやすい綺麗な発音と、人々の心を動かす演技力。 これらを全て兼ね備えた存在とは?』 新人声優、山田真弓は念願のアニメヒロイン役を得るも、無理な生活がたたって死んでしまう もし生まれ変わってもまた声優になりたい、声を武器にして生きていきたい・・・ 彼女の最期の願いを神は聞き届けた・・・しかし・・・ これは、新人声優の主人公が異世界転生して、声優のスキルだけを武器に、色々な役を演じて、ファンをたくさん作って、歌とか歌ったりもして、ファンクラブも出来たりして、最終的に自分の名前の国が出来るような人気声優になるお話です。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!

コスモクイーンハート
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生の合田結菜はある高難度ダンジョンで一人放置されていた。そんな結菜を冒険者育成クラン《炎樹の森》の冒険者達が保護してくれる。ダンジョンの大きな狼さんをもふもふしたり、テイムしちゃったり……。 何気にチートな結菜だが、本人は普通の生活がしたかった。 本人の望み通りしばらくは普通の生活をすることができたが……。勇者に担がれて早朝に誘拐された日を境にそんな生活も終わりを告げる。 何で⁉私を誘拐してもいいことないよ⁉ 何だかんだ、半分無意識にチートっぷりを炸裂しながらも己の普通の生活の(自分が自由に行動できるようにする)ために今日も元気に異世界を爆走します‼ ※現代の知識活かしちゃいます‼料理と物作りで改革します‼←地球と比べてむっちゃ不便だから。 #更新は不定期になりそう #一話だいたい2000字をめどにして書いています(長くも短くもなるかも……) #感想お待ちしてます‼どしどしカモン‼(誹謗中傷はNGだよ?) #頑張るので、暖かく見守ってください笑 #誤字脱字があれば指摘お願いします! #いいなと思ったらお気に入り登録してくれると幸いです(〃∇〃) #チートがずっとあるわけではないです。(何気なく時たまありますが……。)普通にファンタジーです。

ゼーレンヴァイス

朽木 堕葉
ファンタジー
廃棄区画の少年ロウェルは、錆びついた杭打ち機で今日もゴーレムを粉砕する。 一日百善の日課を掲げ、街を奔走しつづけていた。 謎の組織に追われていた不思議な少女を助け出し、 「アタシのお姉ちゃんを、一緒に捜してほしいの」 願い出た彼女のために、尽力することを仲間たちと誓う。 敵味方――それぞれの思惑は錯綜し、物語が紡がれる。 素敵な表紙絵・挿絵は三月々希☘みつづき様に描いていただきました! (https://lit.link/mitsudzuki) ハーメルン様・カクヨム様でも掲載しています

宝箱の中のキラキラ ~悪役令嬢に仕立て上げられそうだけど回避します~

よーこ
ファンタジー
婚約者が男爵家の庶子に篭絡されていることには、前々から気付いていた伯爵令嬢マリアーナ。 しかもなぜか、やってもいない「マリアーナが嫉妬で男爵令嬢をイジメている」との噂が学園中に広まっている。 なんとかしなければならない、婚約者との関係も見直すべきかも、とマリアーナは思っていた。 そしたら婚約者がタイミングよく”あること”をやらかしてくれた。 この機会を逃す手はない! ということで、マリアーナが友人たちの力を借りて婚約者と男爵令嬢にやり返し、幸せを手に入れるお話。 よくある断罪劇からの反撃です。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

処理中です...