上 下
15 / 123
第1章 幼子は、もふもふな幼子たちと子守役に出会う

1-15

しおりを挟む

         

   
 ここの水は濡れても大丈夫と聞いて、幼子たち特にしずくは安心した。

しずくが、ゆきをなでなでしたり、かすみの尾羽で撫でられたり、ゆきとかすみが運んできた水を飲んだりと、皆ではしゃいでいた。

そうやって遊びながら、幼子たちは岩の上で座ったままたっぷりと景色を楽しんでいた。

しばらくして、師匠から質問が来た。


 『そなたら、花の木を見に行かないのか?

 それとも水辺で食べられる草を探すか?』


 「おはにゃのき、みたいでしゅ!

 かしゅみのくえちゃおはにゃ、ちれーでちた~

 だいじょぶでしゅ、わちゅれてまてん!」


幼子たちは慌てて岩から降りて、立ち上がった。

 (お花の木見たい、忘れてない!

 決して草に飽きたわけではない!

 でも、今はたべたくないな~)

そしてお花の木を探して、歩き出した。


 
 今度はゆきが案内してくれるらしく、しっぽをふりふり先頭をしっかりした足取りで歩いていく。

時々振り向いて、しずくの頭上に座り込んだかすみに、お伺いを立てる姿も安定感があってかわいい。


かすみの方は、しずくの頭上からどっしり動かず、時々鳴き声と尾羽の動きで、方向を教えているらしい。


 「ぴぃーぴるぴる~」「ぴぃー」

などと鳴きながら尾羽を揺らせるのみで、体を安定させている。


その様子にしずくは感心していた。

 『短い間に上達したわね~

 いっぱい練習したのね、いい子ね~』

師匠たちの注目もこちらに集まっているのを感じる。

 (ゆきとかすみが、とっても褒められてる~)

自分まで褒められているようでくすぐったいが、しずくはとてもうれしかった。

ニコニコして聞いていると、


 『そうだな、先ずは転ばなくなった。

 まっすぐ前を向いて歩いているし、なのに躓かぬようになった。

 片足でもまっすぐに立てるな。

 ずいぶんと、上達したな!』


しずくの話だった?!


 「しじゅくのこちょ、でしゅか?

 しじゅく、あゆくにょ、へたでしゅちゃか?」


驚いたしずくが質問するが、その拍子に足元がお留守になり躓いて転びそうになったのを、何とか耐えた。

その代わりにかすみがしずくの頭上からずり落ちそうになっていた。

かすみは羽をばたつかせていたが、ついに我慢できずに飛び上がった。

そしてその際、しずくの頭を蹴飛ばしていった。

 (いたいよ、かすみ、ひどい~))


姿勢を戻して、しずくが頭を自分で撫でていると、師匠が答えてくれた。


 『そうね、かすみも揺れに逆らわずに姿勢を保てるようになってるわ~

 力を使わずにできてるのもいいわね~』


 『しずくははじめは足元をにらみながら、一歩ずつそろそろと歩いて、それでも躓いていたわね~

 力がきれいに流れるようになって、使い方にも慣れてくるにつれて、姿勢がよくなっていったわ~

一歩一歩がしっかりと脚を持ち上げて前に出せるようになったのね~』


 (そうだった、始めは歩き難くて困ってた。)


 『体が力の扱いに慣れ始めたのだろう。

 考えずとも使いこなし始めたのだな。

 ゆきも走っていて、急に止まったり曲がったりできていたな。

 あれも使いこなす一例だ。』


頭上に戻ってきたかすみを、しずくは落とさぬように気を付けながら水溜りを避ける

そんなしずくを見てか、師匠が付け加えた。


 『片足で立てるなら、跳んだり跳ねたりも転ばずにできそうだ。

 まあ順番に少しずつ試そう。

 さあ、ゆきが待ちくたびれているぞ。』


振り返ったまましっぽを振って待っていたゆきに向かって、しずくは手を振り返して、岩や水たまりを避けながら、湖を大きく回るように歩いていった。


向かった先はやはり草原だったが、疎らに木が生えていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ディメオ~首切り魔術師は返り咲く~

わらべ
ファンタジー
ここは魔導大国・リザーナ帝国。 上級貴族の嫡男として生まれたジャック・グレースは、魔力が庶民程度しかなく、一族の者から『疫病神』と呼ばれていた。 誰からも存在を認められず、誰からも愛されない……。ずっと孤独と向き合いながら生きてきた。 そんなある日、ジャックが街を散歩していると、ある魔導具店のおっさんが声をかけてきた。すると、おっさんは『ディメオ』という魔石をジャックに紹介する。この出会いによって、ジャックの運命は大きく変わっていく。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

ヒロインさん観察日記

蒼碧翠
ファンタジー
あまりのお腹の痛さに気が付くと、たくさんの正統派メイドさんに囲まれて、出産の真っ最中?! ココどこよ? 分娩の最中に前世を思い出した私。今生での名前は、聞き覚えのあるような、ないような・・・ ま、いずれわかるでしょう って、私が好んで読んでた、ラノベに近い世界でした。 でも、何かおかしい気が?

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

魔王

覧都
ファンタジー
勇者は、もう一人の勇者と、教団の策略により人間の世界では不遇だった。 不遇の勇者は、人生のリセットすることを選び、魔王となる。 魔王になったあとは、静かに家族と暮らします。 静かに暮らす魔王に、再び教団の魔の手が伸びます。 家族として暮らしていた娘を、教団に拉致されたのです。 魔王はその救出を決意し……。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

手持ちキッチンで異世界暮らしを快適に!

榊原モンショー
ファンタジー
ある日、買い出し直後に異世界に飛んでしまった嘉市達也(かいち・たつや)のそばにあったのは住んでいたアパートにあるキッチンだった。 タツヤは現状を把握した後に、とてつもなく燃費が悪い獣人族のルーナに餌付けしつつ、そしてルーナになつき、タツヤを毛嫌いする龍族であるウェイブと共に、タツヤは異世界をのんびりぶらぶら暮らしていくことを決意する。 ※小説家になろうの方にも載せています。

処理中です...