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第1章 幼子は、もふもふな幼子たちと子守役に出会う

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 照れたり慌てたりのしずくが落ち着き、ようやく一息ついて幼子たちはしっかりと体を休めた。

その後散策の続きを始めて進んでいると、ゆきが掘った穴まで戻ってきた。


そこまでゆきは、しずくの足元をうろちょろして、蹴飛ばされそうなところで飛びのいて遊んでいた。

かすみの方はしずくの頭の上に載って、羽でバランスを取り落ちないようにして遊んでいた。

 (ゆきとかすみが、じゃれついてきてかわいい!

 ウロチョロしたり、見てるだけでうれしい…)

 「あぶにゃいでしゅよ~けが、ちないでにぇ~」

しずくもあまり力の事は気にせず、きちんと歩くことだけ考えて楽しんでいた。


 穴まで来た時、ゆきとかすみが揃ってそのふちに座り込んだ。

なんとなく気になって、しずくもその後ろからそろって穴を見下ろした。

幼子たちが穴を覗いていると、落ち着いた声の師匠がおもむろに話を始めた。


 『草木と云うモノは、このように根っこを外にさらすとすぐに枯れてしまうものでな。

 この草の芽ももうすぐ枯れるだろう。

 そして一度根ごと枯れた草木は、もう育たない。

 また掘り出されて乾いた土も、草木を育てる力を失う。

 この場は、しばらくの間なにも育たんだろう。』


この話を聞いて、幼子たちは怖くなった。

 (何時か、山から草や木がなくなるのかな?

 でも草も木もなくなったら困るよね…

 何とか無くさない方法があるのかな?)


しずくは、師匠にはっきりと聞いてみた。


 「はっぱ、とったらだめてしか?

 とってなくなたら、こまいましゅ…

 なくなたら、たべらえまてん‥

 でもとやないと、たべやえまてん‥

 おちえてくあたい、どしたや、いいでしか?」


師匠たちは、今度はゆっくりと話をしてくれた。

 『うむ、よくきいてくれた。

 ゆきもかすみも、驚かせてしまったな。

 皆が採って食べていても、無くなる心配のない方法があるから、安心してくれ。』


 『簡単なのよ~採りすぎないことよ!

 食べるはっぱや芽だけ取るの~

 それも必ず少しは取らずに残すのよ~

 食べない根っこや枝も取らずに残すのよ~

 これだけでも、無くならないわ~』


 「じぇんぶとやない、たべゆだてとゆ、

 しゅこちのこしゅ、でしゅか?」


 『あとは、なるべく元に戻す、と云うのもある。

 ゆきとかすみが掘り上げた土と草の芽なら、例えば食べない根っこと土は穴に戻して埋めておく等だ。

 そうすれば、その内また芽を出すだろう。』


 「なゆべきゅ、もとにもじょしゅ、でしゅか?」


試してみようとなって、まずしずくが草の芽を根元でぽきんと折って根っこと分けた。

早速かすみが根っこを浮かべて、深くなった穴の底に飛ばしてそっと置いた。

ゆきが、その上に土の小山を崩して落としていく。

しずくも手伝おうとして、

 「あっちゃかぽかぽか、おててもぽかぽか…」

手で土を穴の底に押し出そうとすると、手が動くより早くたくさんの土が、穴に落ちていく。


しずくがぼーっと落ちていく土を見ていると、師匠の明るい声がした。


 『今度は上手にできたわね~

   壱:しずくの手に集まった力が、

   弐:きちんと土に流れていって、

   参:それで土を動かしているのよ~

 もう大丈夫だから、そう心配しないでね~

 そのまま続けて慣れてしまいましょう~』


しずくが、どんどんと土を落としていく。

ゆきと二人で争うように落としたせいか、穴はすぐに埋められた。

ついでに、穴の上に盛り上がった土がこぼれないように穴の奥に押し込んでいた。

そこにいつの間にかいなくなっていたかすみが、水玉を運んで戻ってきて、私たちにそれをくれた。


 『かすみも、水玉を上手く扱えているな。

 せっかくの水だ、ゆきもしずくも頂きなさい。』

 
 「かしゅみありあとごじゃましゅ、いたきましゅ!

 こくこくこく...おいちいね~」

 
 (やっぱり力が湧いてくるような気がするな~)


おいしく飲み終わったころになって、師匠がポロリと一言こぼした。

 
 『一度掘り上げた土でも根っこでも、元に戻した後に水をあげると、力も早く戻るわよ~』


 (もっと早く聞きたかったです、師匠!

 ぜんぶ飲んでしまいました~)


 「ごふっつ…」

しずくは、最後の一口でむせてしまった!
 
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