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赤頭巾vs大神党
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「赤頭巾、参上いたしました」
どこからともなく、一瞬にしてその場に現れた赤い影が言葉を発する。
薄暗い板張りの部屋、頭を垂れて片膝をついているのは赤い頭巾で顔を隠した忍びだった。ただ、その体つきから女――くノ一だということが分かる。
「来たか、赤頭巾よ。そなたにこの密書を届けてもらいたい」
一段高くなった上座に座る影が厳かに告げる。床が割れ、三方|(神饌を載せる木製の台)の上に載った巻物が下からせり上がった。
「はっ、一命に替えましても」
赤頭巾は恭しく密書を受け取って胸元へと仕舞うと、現れた時と同じく一瞬で姿を消す。
「頼んだぞ、赤頭巾」
影はそう呟くのだった。
◆
夜の森を赤い影が走る。その色彩は枝葉の間から漏れる僅かな月光だけでも、闇に生きる忍びたちにとっては鮮烈だった。赤頭巾の持つ密書の情報は敵方の忍者に察知されており、その赤い影をいくつもの黒影が追う。
――カカカッ!
樹の幹に手裏剣が突き刺さり、闇夜に刃がぶつかる火花が浮かび金属音が響く。敵の忍びの数は十人以上。赤頭巾には知る由もないが、密書の情報は余程重要なものらしい。
さすがの赤頭巾も周りを囲まれ、足止めされることになる。
「くくくっ、赤頭巾よ。観念するんだな。さすがのお前でもこの数には敵うまい」
少し離れてその様子を眺めるのは大神小太狼、忍びの一族「大神党」の首領だった。
しかし、赤頭巾は艶を含んだ笑みを浮かべて言う。
「私の頭巾が赤い理由を知ってる?」
答える間もなく、赤頭巾を囲んでいた忍びたち次々切り伏せられて鮮血をほとばしらせた。
「あなた達の血で染まっているからよ」
そう言った時には、赤頭巾の苦無が小太狼の首筋を切り裂いていたのだった。
どこからともなく、一瞬にしてその場に現れた赤い影が言葉を発する。
薄暗い板張りの部屋、頭を垂れて片膝をついているのは赤い頭巾で顔を隠した忍びだった。ただ、その体つきから女――くノ一だということが分かる。
「来たか、赤頭巾よ。そなたにこの密書を届けてもらいたい」
一段高くなった上座に座る影が厳かに告げる。床が割れ、三方|(神饌を載せる木製の台)の上に載った巻物が下からせり上がった。
「はっ、一命に替えましても」
赤頭巾は恭しく密書を受け取って胸元へと仕舞うと、現れた時と同じく一瞬で姿を消す。
「頼んだぞ、赤頭巾」
影はそう呟くのだった。
◆
夜の森を赤い影が走る。その色彩は枝葉の間から漏れる僅かな月光だけでも、闇に生きる忍びたちにとっては鮮烈だった。赤頭巾の持つ密書の情報は敵方の忍者に察知されており、その赤い影をいくつもの黒影が追う。
――カカカッ!
樹の幹に手裏剣が突き刺さり、闇夜に刃がぶつかる火花が浮かび金属音が響く。敵の忍びの数は十人以上。赤頭巾には知る由もないが、密書の情報は余程重要なものらしい。
さすがの赤頭巾も周りを囲まれ、足止めされることになる。
「くくくっ、赤頭巾よ。観念するんだな。さすがのお前でもこの数には敵うまい」
少し離れてその様子を眺めるのは大神小太狼、忍びの一族「大神党」の首領だった。
しかし、赤頭巾は艶を含んだ笑みを浮かべて言う。
「私の頭巾が赤い理由を知ってる?」
答える間もなく、赤頭巾を囲んでいた忍びたち次々切り伏せられて鮮血をほとばしらせた。
「あなた達の血で染まっているからよ」
そう言った時には、赤頭巾の苦無が小太狼の首筋を切り裂いていたのだった。
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