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猫耳モード(笑)
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猫が、鳴いた。
「にゃーん」と言う鳴き声に俺は目を覚ます。
家の中から聞こえてきたのだが、ウチでは猫を飼っていない。
「まさか!?」
俺はベッドから飛び起きるとすぐさま部屋を出た。
部屋のすぐそば、廊下にピンク色のパジャマを着た妹、七海が背中を向けてうずくまっている。
いつもツインテールにしている黒髪は下ろしたまま。そしてその上には黒い毛を生やした猫の耳があった。ついでにパジャマの隙間からこれも黒い尻尾が伸びている。
「にゃーん」と七海が鳴く。
それは流行りの伝染病「猫耳シンドローム」だった。
🐱
「さて、困ったな」
「にゃんにゃんにゃん」
俺は七海にじゃれつかれながら途方に暮れる。
ちょうど昨日から両親は三泊四日の旅行に出かけていた。幸い春休み中なので俺が七海を看病することはできるのだが。
数年前から流行りだしたこの奇病、猫耳シンドロームは人間に猫耳と猫尻尾が生えるというものだった。そして猫みたいな鳴き声しか発せられなくなる。
一応、人としての理性は残っているのだが、感情のタガが緩んで性格も猫っぽく気まぐれになった。ついでに熱いものが苦手な猫舌にもなる。
感染力は風邪と同程度で、薬を飲めば治りも早く二三日で完治する。一応、俺はマスクをしていた。
食事は手で持って食べられるような物なら問題ないが、猫と同じく水が嫌いになるので風呂は無理だな。俺が中学生の妹を無理矢理風呂に入れるわけにもいかないし。
「にゃあーーん」
中学生辺りからロクに口も利かなくなった七海だが、やたらと「かまえかまえ」とアピールしてくる。
……懐かしいな、昔はいつも俺にひっついていたのに。
そんな七海の世話をし、病院で薬も貰ってきてなんとか飲ませることができた。
――その日の夜、眠っていた俺は違和感に目を覚ます。
「ん……な、七海!?」
いつの間にやらベッドに七海が忍び込み、身体を丸めて寝息を立てていた。
……こ、これはまずい。妹とはいえこれはまずい。いや、妹だからこそまずいかもしれない。
とにかく身体を離そうとすると、逃がさないとばかりに七海が抱きついてくる。
「……うにゃん」
まずい、非常にまずい! なんかいろいろと柔らかいし女の子のいい匂いがするし!
俺は理性をフル動員して夜を明かした。
次の日は寝不足ながらも七海の世話と遊び相手をする。
この日も七海がベッドに忍び込んできたのだが、疲れと寝不足でいつの間にか眠りに落ちてしまった。
そして朝の光と身体の上の柔らかな重みに目を覚ます。
胸の上に乗った七海の頭に猫耳は生えていなかった。
「ふぅ……治ったか」
俺は安堵のため息を漏らす。
「んん……んっ」
と、七海がゆっくりと頭を上げた。
数秒間見つめ合う俺と七海。
そしてこの状況に七海は顔を真っ赤にして跳ね起きる。
「い、いいか七海。よく聞け。これはだな――ぎゃあああああ!!」
そして死刑が執行されるのだった。
~END~
「にゃーん」と言う鳴き声に俺は目を覚ます。
家の中から聞こえてきたのだが、ウチでは猫を飼っていない。
「まさか!?」
俺はベッドから飛び起きるとすぐさま部屋を出た。
部屋のすぐそば、廊下にピンク色のパジャマを着た妹、七海が背中を向けてうずくまっている。
いつもツインテールにしている黒髪は下ろしたまま。そしてその上には黒い毛を生やした猫の耳があった。ついでにパジャマの隙間からこれも黒い尻尾が伸びている。
「にゃーん」と七海が鳴く。
それは流行りの伝染病「猫耳シンドローム」だった。
🐱
「さて、困ったな」
「にゃんにゃんにゃん」
俺は七海にじゃれつかれながら途方に暮れる。
ちょうど昨日から両親は三泊四日の旅行に出かけていた。幸い春休み中なので俺が七海を看病することはできるのだが。
数年前から流行りだしたこの奇病、猫耳シンドロームは人間に猫耳と猫尻尾が生えるというものだった。そして猫みたいな鳴き声しか発せられなくなる。
一応、人としての理性は残っているのだが、感情のタガが緩んで性格も猫っぽく気まぐれになった。ついでに熱いものが苦手な猫舌にもなる。
感染力は風邪と同程度で、薬を飲めば治りも早く二三日で完治する。一応、俺はマスクをしていた。
食事は手で持って食べられるような物なら問題ないが、猫と同じく水が嫌いになるので風呂は無理だな。俺が中学生の妹を無理矢理風呂に入れるわけにもいかないし。
「にゃあーーん」
中学生辺りからロクに口も利かなくなった七海だが、やたらと「かまえかまえ」とアピールしてくる。
……懐かしいな、昔はいつも俺にひっついていたのに。
そんな七海の世話をし、病院で薬も貰ってきてなんとか飲ませることができた。
――その日の夜、眠っていた俺は違和感に目を覚ます。
「ん……な、七海!?」
いつの間にやらベッドに七海が忍び込み、身体を丸めて寝息を立てていた。
……こ、これはまずい。妹とはいえこれはまずい。いや、妹だからこそまずいかもしれない。
とにかく身体を離そうとすると、逃がさないとばかりに七海が抱きついてくる。
「……うにゃん」
まずい、非常にまずい! なんかいろいろと柔らかいし女の子のいい匂いがするし!
俺は理性をフル動員して夜を明かした。
次の日は寝不足ながらも七海の世話と遊び相手をする。
この日も七海がベッドに忍び込んできたのだが、疲れと寝不足でいつの間にか眠りに落ちてしまった。
そして朝の光と身体の上の柔らかな重みに目を覚ます。
胸の上に乗った七海の頭に猫耳は生えていなかった。
「ふぅ……治ったか」
俺は安堵のため息を漏らす。
「んん……んっ」
と、七海がゆっくりと頭を上げた。
数秒間見つめ合う俺と七海。
そしてこの状況に七海は顔を真っ赤にして跳ね起きる。
「い、いいか七海。よく聞け。これはだな――ぎゃあああああ!!」
そして死刑が執行されるのだった。
~END~
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