ギャル子さんと地味子さん

junhon

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地味子と懊悩

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「ぎゃ、ギャル子さん?」
 小町は突然の告白に戸惑いながら時子を見返す。
「えーと……何かの冗談ですか?」
「ううん。私は本気よ」
 そう言って時子は小町の身体をさらに引き寄せた。
「この前小町がさらわれた時、ものすごく胸がざわざわしたの。私は小町のことが好き。愛しているわ」
 時子の目は真剣マジだった。
「もちろん性的な意味も含めて」
 そう言って時子は小町の唇に己の唇を重ねた。
「んんっ、んんんっ」
 情熱的なキスに小町は目を白黒させる。舌を差し込まんばかりの勢いで時子は小町の唇を貪った。
「好き。大好き」
 唇を離し、時子は熱い瞳で小町を見つめる。
「い、い、いやぁあああああーーーーー!」
 小町は顔を真っ赤にしながら脱兎のごとく駆け出したのだった。
 
 
 
「お邪魔します」
「いらっしゃい、ギャル子さん」
 いつものように隣の部屋、小町の家を訪れた時子を小町の母が迎える。
「あの……小町帰ってきていますか?」
「あら、小町は和花ちゃんの家に泊まるって言って出て行ったのだけど……ギャル子さんも一緒だと思っていたわ」
「……そうですか」
 時子はいつもの無表情で応じる。しかし、その肩が力なく落ちているのだった。
 
 
 
「ああっ、あああっ、どうしたらいいの!?」
 和花の部屋で小町は悶絶しながらゴロゴロと床を転がった。
 家に居れば時子と顔を合わせることになる。それが気まずくて小町は和花の家に転がり込んだのだった。
「……鬱陶しいわね」
 和花はそんな小町の様子を半眼で眺める。
「だってギャル子さんに好きだって言われちゃったんだよ。女同士なのにっ。どうしたらいいの!? どうしたらいいの!? それにキスを……うわぁあああああっ」
 小町は真っ赤な顔を押さえながら床の上でローリングを繰り返す。
「はぁ……」
 和花はため息一つ、床の上で転がる小町に歩み寄り、その上に覆い被さる。和花が小町を押し倒しているような体勢になった。
「実はね……私も小町のことがずっと好きだったの。ギャル子さんなんかにあなたを渡さないわ」
「あ、ごめんなさい。ずっといいお友達でいましょう。ズッ友ですよ」
 小町はなんの動揺も見せずに真顔で答える。
「何よ、私は眼中にないってわけ?」
「長い付き合いだからわかちゃんにそんな趣味がないのは分かってるって。なんの冗談?」
 小町は和花の下から這い出し、身を起こして訊ねる。
「私の時は冷静に応じられるのに、ギャル子さんは違うみたいね」
「だってギャル子さんは本気みたいだし……」
 時子の唇の感触を思い出し、小町は再び顔を赤くする。
「小町はギャル子さんのことをどう思っているの?」
「そりゃあ好きだよ。でもそれは友達としてであって……」
「いいじゃない。好きだって事が確かなら付き合っちゃえば?」
「ええ!? わかちゃんは女同士なんて不潔って言いそうなのに!?」
「そう? 私は結構リベラルなつもりよ。同性愛を公に認めている国もあるくらいだし、今の時代そんなにおかしくもないでしょう?」
「それに好きって気持ちは友達同士や家族の間にもあって、恋人との違いってそこに性的なものがあるかどうかだと思うのよね。小町はギャル子さんを押し倒したい? それとも押し倒されたい?」
「な、な、な、何言ってるの!?」
 小町はさらに顔を赤くする。
「あらあら、意外とそのケがあるのかしら?」
 和花は目を細めてニヤニヤ笑いを浮かべる。
「でもね。ギャル子さんの好きは恋人同士の好きとちょっと違う気がするのよね」
 真顔に戻り、和花は続けた。
「ギャル子さんにとって小町はお母さんなんじゃないかしら?」
「は? 私なんかギャル子さんに比べたら全然頼りないよ?」
「確かにギャル子さんは一人で何でも出来ちゃう感じなんだけど、どこかこう……危なっかしいところがない?」
「う、うん……」
 和花の言葉には頷ける部分がある。小町が時子と友達になろうと思ったのも、どこかほっとけない気がしたからだ。
「ま、私からアドバイス出来るのはこのくらいよ。明日明後日と土日で休みなんだし、ゆっくり考えたら?」
 そう言って和花は話を締めくくるのだった。
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