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ギャル子と告白①
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「大変です! ギャル子番長!」
放課後、いつものように文芸部の活動をしているところに魚津が飛び込んできた。
「……番長はやめて」
編集者モードの眼鏡をかけた時子は半眼で魚津を迎える。この男、どうしても時子を番長に祭り上げたいらしい。
「そんな事を言っている場合ではありません! ギャル子番長! 烈怒馬論の総長・赤井が校門前に来てるんですよ!」
「え!? もしかしてお礼参りに……」
その言葉に小町が不安げな声を上げる。赤井は先日時子にぶちのめされたのだ。その事を恨みに思っているのかもしれない。
「いいわ。ちょっと行ってくる」
時子は顔色一つ変えずに立ち上がる。眼鏡を胸ポケットに仕舞った。
「おお! それでこそギャル子番長です」
魚津は喜びを露わにする。魚津にとってはこれでまた一つ、時子の番長としての既成事実を作ることになるのだ。
「ちょっ、ギャル子さん。大丈夫ですか?」
小町は時子の背中に声をかけた。
「ま、パンツを見せればイチコロでしょ」
「……それはそうかもしれませんが。って言うかギャル子さん、もう少し恥じらいを持ちましょうよ」
「でも、実力はあっちの方が上だしね」
そう言って時子は部室を出て行った。
「う~、心配ですね。私もちょっと様子を見に行ってきます」
小町は友理や渚に声をかけ、時子の後に続いた。魚津も一緒についてくる。
時子が玄関を出ると、赤井は腕を組んで校門の真ん中に立っていた。強面に獅子の鬣のような赤く染めた蓬髪の赤井に、帰宅する生徒たちは怯えながら校門の隅を通っていく。
時子の姿を見つけると、赤井は視線を逸らさずに時子が近付いてくるのを待つ。
「もしかして私に用なのかしら?」
赤井の前に来た時子は臆することなくその顔を見上げた。
「ああ、今日はお前に用があってきた」
「この間の仕返しかしら?」
「俺をそんな小さな男だと思うなよ。烈怒馬論は解散した。女とジジイにやられたとあっては面目が立たないからな。その事はもういい」
「じゃあ、何の用なの?」
「……ギャル子さん」
赤井は真剣な目で時子を見つめる。
「あなたに惚れました! 俺と付き合って下さい!」
一気呵成に告げると赤井は頭を下げて手を差し出した。
「なんですとーーー!?」
校門の陰に隠れて様子をうかがっていた小町は思わず声を上げる。予想を裏切る展開である。
「……」
時子が言葉に詰まっているところに小町が飛び出す。
「ちょっと待ったぁー-ー!」
小町は時子を庇うかのように前に出た。
「ギャル子さんと付き合いたいなら、まずは私に話を通してもらいましょうか」
「何だお前は? 関係ない奴は引っ込んでいろ」
「私はギャル子さんの……マネージャーみたいなものです。あなたがギャル子さんに相応しい男かどうか判断させてもらいます」
「ま、そう言う事だから」
困惑の表情を浮かべる赤井に、時子はさらりと告げる。
「まずは自己紹介でもしてもらいましょうか」
「……来堂学園二年、赤井健一郎だ」
偉そうに胸を張りながら見上げる小町に憮然としながら赤井が名乗る。
「来堂っていいところの学校じゃないですか。なんで暴走族なんてやってたんです?」
「元々は一人で走ってたんだがな……いつの間にか仲間が増えたんだ」
ふむ――と小町は胸中で頷く。族の頭をやっていただけあってリーダーシップはあるだろうし、人を惹きつける魅力もあるのだろう。確か元暴走族がビジネスマンとして成り上がっていくマンガがあったような……。
族からは足を洗ったことだし、将来は有望かもしれないと小町は判断を下す。
「いいでしょう。ではギャル子さんと付き合いたいという覚悟のほどを見せてもらいましょうか」
小町は赤井を試すことにした。
「まずはその鬱陶しい頭を坊主にしてきなさい!」
ビシリと赤井の頭に指を突きつけ、小町は告げる。
「なっ!?」
小町の言葉に赤井は気色ばむ。しかし、グッと堪えて頷いた。
「……分かった。ではまた明日」
そう言って赤井は背中を向ける。
小町と時子はその後ろ姿を見送るのだった。
「これでいいだろう」
次の日の放課後、再び校門前に現れた赤井の頭は見事な坊主頭だった。
赤毛の坊主頭、そして強面――
「ちょっと『左手はそえるだけ……』って言ってみて下さい」
「何を言ってるんだ? お前は」
わけの分からないことを言う小町に赤井は半眼で返す。
「こほん……いいでしょう。あなたの覚悟は分かりました」
正直小町もこんなにあっさりと赤井が坊主にしてくるとは思わなかった。本気で時子に惚れているようだ。
「次はあなたがギャル子さんを幸せに出来る男かどうか見せてもらいます」
小町はキラリと眼鏡を光らせる。
「アウトローの社会不適合者では困りますからね。あなたにはバイトをしてもらいましょう」
「バイトなら経験があるぞ。バイクを買うためにやったからな」
「ふっ、あんな頭で出来るバイトなんて肉体労働系でしょう。しかし、あなたには接客業をやってもらいます」
「なに!?」
「あなたがプライドを捨ててお客様に媚びへつらえるか――見せてもらいましょうか」
小町は不敵に微笑むのだった。
放課後、いつものように文芸部の活動をしているところに魚津が飛び込んできた。
「……番長はやめて」
編集者モードの眼鏡をかけた時子は半眼で魚津を迎える。この男、どうしても時子を番長に祭り上げたいらしい。
「そんな事を言っている場合ではありません! ギャル子番長! 烈怒馬論の総長・赤井が校門前に来てるんですよ!」
「え!? もしかしてお礼参りに……」
その言葉に小町が不安げな声を上げる。赤井は先日時子にぶちのめされたのだ。その事を恨みに思っているのかもしれない。
「いいわ。ちょっと行ってくる」
時子は顔色一つ変えずに立ち上がる。眼鏡を胸ポケットに仕舞った。
「おお! それでこそギャル子番長です」
魚津は喜びを露わにする。魚津にとってはこれでまた一つ、時子の番長としての既成事実を作ることになるのだ。
「ちょっ、ギャル子さん。大丈夫ですか?」
小町は時子の背中に声をかけた。
「ま、パンツを見せればイチコロでしょ」
「……それはそうかもしれませんが。って言うかギャル子さん、もう少し恥じらいを持ちましょうよ」
「でも、実力はあっちの方が上だしね」
そう言って時子は部室を出て行った。
「う~、心配ですね。私もちょっと様子を見に行ってきます」
小町は友理や渚に声をかけ、時子の後に続いた。魚津も一緒についてくる。
時子が玄関を出ると、赤井は腕を組んで校門の真ん中に立っていた。強面に獅子の鬣のような赤く染めた蓬髪の赤井に、帰宅する生徒たちは怯えながら校門の隅を通っていく。
時子の姿を見つけると、赤井は視線を逸らさずに時子が近付いてくるのを待つ。
「もしかして私に用なのかしら?」
赤井の前に来た時子は臆することなくその顔を見上げた。
「ああ、今日はお前に用があってきた」
「この間の仕返しかしら?」
「俺をそんな小さな男だと思うなよ。烈怒馬論は解散した。女とジジイにやられたとあっては面目が立たないからな。その事はもういい」
「じゃあ、何の用なの?」
「……ギャル子さん」
赤井は真剣な目で時子を見つめる。
「あなたに惚れました! 俺と付き合って下さい!」
一気呵成に告げると赤井は頭を下げて手を差し出した。
「なんですとーーー!?」
校門の陰に隠れて様子をうかがっていた小町は思わず声を上げる。予想を裏切る展開である。
「……」
時子が言葉に詰まっているところに小町が飛び出す。
「ちょっと待ったぁー-ー!」
小町は時子を庇うかのように前に出た。
「ギャル子さんと付き合いたいなら、まずは私に話を通してもらいましょうか」
「何だお前は? 関係ない奴は引っ込んでいろ」
「私はギャル子さんの……マネージャーみたいなものです。あなたがギャル子さんに相応しい男かどうか判断させてもらいます」
「ま、そう言う事だから」
困惑の表情を浮かべる赤井に、時子はさらりと告げる。
「まずは自己紹介でもしてもらいましょうか」
「……来堂学園二年、赤井健一郎だ」
偉そうに胸を張りながら見上げる小町に憮然としながら赤井が名乗る。
「来堂っていいところの学校じゃないですか。なんで暴走族なんてやってたんです?」
「元々は一人で走ってたんだがな……いつの間にか仲間が増えたんだ」
ふむ――と小町は胸中で頷く。族の頭をやっていただけあってリーダーシップはあるだろうし、人を惹きつける魅力もあるのだろう。確か元暴走族がビジネスマンとして成り上がっていくマンガがあったような……。
族からは足を洗ったことだし、将来は有望かもしれないと小町は判断を下す。
「いいでしょう。ではギャル子さんと付き合いたいという覚悟のほどを見せてもらいましょうか」
小町は赤井を試すことにした。
「まずはその鬱陶しい頭を坊主にしてきなさい!」
ビシリと赤井の頭に指を突きつけ、小町は告げる。
「なっ!?」
小町の言葉に赤井は気色ばむ。しかし、グッと堪えて頷いた。
「……分かった。ではまた明日」
そう言って赤井は背中を向ける。
小町と時子はその後ろ姿を見送るのだった。
「これでいいだろう」
次の日の放課後、再び校門前に現れた赤井の頭は見事な坊主頭だった。
赤毛の坊主頭、そして強面――
「ちょっと『左手はそえるだけ……』って言ってみて下さい」
「何を言ってるんだ? お前は」
わけの分からないことを言う小町に赤井は半眼で返す。
「こほん……いいでしょう。あなたの覚悟は分かりました」
正直小町もこんなにあっさりと赤井が坊主にしてくるとは思わなかった。本気で時子に惚れているようだ。
「次はあなたがギャル子さんを幸せに出来る男かどうか見せてもらいます」
小町はキラリと眼鏡を光らせる。
「アウトローの社会不適合者では困りますからね。あなたにはバイトをしてもらいましょう」
「バイトなら経験があるぞ。バイクを買うためにやったからな」
「ふっ、あんな頭で出来るバイトなんて肉体労働系でしょう。しかし、あなたには接客業をやってもらいます」
「なに!?」
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小町は不敵に微笑むのだった。
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