ギャル子さんと地味子さん

junhon

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地味子とおかっぱ少女①

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「あ……部室に忘れ物をしました」
 部室棟を出たところで、小町は読みかけの小説を忘れてきた事に気付く。
「ん? じゃあ、ここで待ってるから」
「すみません。すぐに戻りますんで」
 時子にそう告げて、小町は踵を返して駆け出した。
 ――と、部室棟の角を曲がったところで、そこから出てきた人影にぶつかる。
「きゃっ」
「うわっ、すみません」
 相手はおかっぱ頭の小柄な少女だ。見れば同じクラスの結城友理ゆうきゆうりである。
「……ごめん、なさい」
 友理は消え入りそうな声で謝る。その声は涙に濡れていた。
「え? え? え? どこかぶつけちゃいましたか? 大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫、です……すみません、でした」
 慌てる小町を残し、友理は走り去る。
「あっ、結城さん?」
 小町はその背に手を伸ばしたが、宙を掴むだけだった。
 遠くなる友理の背中を見つめ、小町は呟く。
「……泣いてた、よね」


「結城さん、ちょっといいかしら?」
 放課後、和花は結城友理に声をかけた。
「なん、でしょうか?」
「最近男子の間で出回っているビデオがあるんだけど、あなた何か知らないかしら?」
 ガタリ――大きな音を立てて友理は立ち上がる。
「何のこと、ですか……私は何も、知りません」
「そのビデオに出てる子があなたに似てる気がするんだけど」
「知り、ません! 部活が、あるので、失礼、します」
 鞄を手にすると、友理はそそくさと教室を出る。
「……ふぅ、困ったわね」
「わかちゃん、結城さんがどうかしたの?」
 その様子を見ていた小町は、ため息をつく和花に訊ねる。
「う~ん、ちょっとね」
 言葉を濁す和花。
「私さ、昨日結城さんが泣いてるところ見ちゃったんだよね。ちょっと気になっちゃってるんだけど」
「そう……ここじゃあ何だから、場所を移しましょうか」
 和花は視聴覚室に移動した。小町と一緒に時子もついてくる。
「ここで話す事、見た事は他言無用よ。これは先日の風紀委員による持ち物検査で没収されたDVDなんだけど」
 そう言って、和花はパソコンの中にDVDを挿入する。
「観ていてあまり気持ちのいいものじゃないから」
 断りを入れてから和花はそれを再生した。
「こ、これは……アダルトビデオ!? しかも無修正……」
 映し出されたのは一人の少女を何人もの男達が犯している映像だ。様々な体位で嫌がる少女を犯していく。繋がっている箇所をアップにした部分にもモザイクがかけられていない。
「なんかカメラワークが素人臭いわね。というかろくに編集もしてないみたいだし」
 時子が冷静に映像を分析する。
「これレイプじゃないの!?」
「そういうプレイなのかも」
 小町の言葉に時子が答える。
「この子、結城さんに似てない?」
 男女ともに顔の部分にはぼかしがかかっているが、和花の言うとおり、おかっぱ頭に小柄で華奢な体格は結城友理に似ていた。
「いや、でもそんな……まさか」
「これを見て」
 信じられないと首を振る小町に、和花は映像を巻き戻すとある場面で止めた。画面の中の一部を拡大する。それは壁に掛けられたカレンダーだった。
「これがどうしたの?」
「これはうちの写真部が制作して各クラブや委員会に配ったものよ。それも今年のもの。この映像がうちの学校の関係者の手によって撮られたのは間違いないわ」
「……」
 小町は言葉に詰まる。本当に結城さんがこんな目にあっているのだろうか。
「持ち主を問い詰めたところ、この動画はとあるサイトから有料でダウンロードできるの。指定のアドレスに金券を送るとパスワードがメールで送られてくるシステムね。友達に教えてもらったって言っていたわ」
「これ、学校とかには……」
「モノがモノだけにまだ報告していないわ。でもこのサイトの事は口コミで広まっているみたい。それにダウンロードした映像をさらに友達に売りつけたりね」
「もしこれが結城さんだとしたら……許せません!!」
「でも、合意の上なのかも」
 憤慨する小町に時子が水を差す。
「私は結城さんが泣いているのを見ました! 助けましょう!」
「私の時もそうだったけど、小町はお節介よね」
「こんなの見せられたら放っておけませんよ」
「で、どうするの?」
「えーと、とりあえず結城さんに会って話を聞きましょう。――結城さんって部活に入ってましたっけ?」
「パソコン部に所属してるわ」
 小町の問いに和花が答える。
「では行きましょう!」
 その言葉に時子と和花も頷くのだった。
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