14 / 34
ギャル子と海②
しおりを挟む
そんなこんなで波打ち際へやって来た三人。
「うおおおおお!」
沖の方では早知が思いっきり泳いでいた。
「……海水浴場でマジ泳ぎしている人初めて見たよ」
「ま、私たちはマッタリ楽しみましょう」
小町と和花は浮き輪を手に海へと入る。
「ギャル子さん、行かないんですか?」
「ふふ、私は今波を感じている」
足を波に浸して呟く時子。どうやら波が寄せるたび、足下の砂が崩れていく感触を楽しんでいるようだ。
「……じゃ、私たちは先に行きますんで」
小町は和花と二人、浮き輪に入って波に揺られる。
見上げれば青い空に白いカモメが飛んでいる。遠くに聞こえる喧噪も心地いい。和花とたわいないお喋りをしながらゆっくりと時を過ごした。
ふと海岸に目を向けると、何やら人だかりが出来ている。
「何だろ?」
気になった小町は海岸へ引き返した。人だかりの後ろから爪先を伸ばしてみれば、時子が真剣な表情で砂の山と向き合っている。
「ギャル子さん、何やってるんですか?」
「砂遊び」
見れば砂の山はお城の形になっていた。しかも西洋の城ではなく日本の城だ。立派な天守閣が出来上がっている。
「そこで寝ている人たちは?」
何故か周囲にはチャラい男が三人、寝転がっていた。
「しつこかったから寝てもらったの」
事も無げに答える時子。今度は二の丸に着手し始める。
「あら、サンドアートね。すごいじゃない」
「おー、ギャル子器用だな」
和花と早知も戻ってきて感嘆の声を上げた。
「よし、私たちも定番のアレをやりましょうか」と、小町は提案した。
じゃんけんで生贄は早知となる。二人は寝転んだ早知の身体を砂で覆っていく。
「ふふふ、巨乳にしてあげますよ。橘さん」
盛り上がった砂の上、胸に二つの山を作る小町だった。
「イヤミかっ、おいコラ」
と、三の丸まで完成させた時子がやって来た。早知の股間の辺りに砂を盛り上げ始める。
「巨根、巨根」
「やめろーーー!! ショッ〇ー!!」
本気で嫌がる早知であった。
「ふぅ、遊んだ、遊んだ」
「そろそろお昼にしない?」
「そうだね。おーい、ギャル子さん」
和花の提案に、小町は早知をもてあそぶ時子に声をかける。
「ふふ、橘さんたらこんなに大きくしちゃって」
「うう……もうお嫁に行けない」
砂に埋まってさめざめと泣く早知。
「二人とも、お昼ご飯にしましょう」
「うん」
「つーか、オレは動けないっつーの。助けろ」
三人がかりで早知を掘り起こし、海の家へと向かった。
「いらっしゃいませだべ」
水着にエプロンを着けた少女が迎えてくれる。
「ラーメンお願いします」
「私も」
「カレー、超辛で」
「オレは甘口カレーだ」
各々好きなものを注文する。少し待つと料理が運ばれてきた。
「お、美味しい」
「ほんと」
「辛い、けど美味しい」
「マジ美味いな」
あまり期待していなかったのだが、料理はとても美味しかった。
「お姉さん方、みんな美人だべな。良かったらこれに出ないだべか?」
食器を下げに来た少女が一枚のチラシを差し出した。
「白崎海水浴場ミスコンテスト?」と、首を傾げる小町。
「そうだべ。ちょうど今日の昼過ぎから開催されるべ。優勝賞品は家族での温泉旅行だべ」
「おお、なら出るぜ」
瞳を輝かせる早知。
「私はパス」
和花は興味なさげに応える。
「小町、一緒に出ましょう」
「え!? いやいや、私なんか無理ですって。ギャル子さんお一人でどうぞ」
時子の誘いをやんわり断る小町だったが――
「大丈夫。変身しよう」
時子がどこからともなくヘアブラシを取り出す。
「ギャル子クリスタルパワーメイクアッープ!」
次の瞬間、そこには髪を下ろした小町ロングヘアバージョンが現れた。
「よし、いける」と、親指を立てる時子。
「えええーーーーー」
小町は素っ頓狂な叫びを上げるのだった。
小町は時子に引きずられ、ミスコンテストにエントリーした。
集まった女性は総勢二十一名。さすがコンテストに出場するだけあって、みな美人揃いだ。場違い感に小町は小さくなっていた。
「さあ、いよいよ始まりました白崎海水浴場ミスコンテスト! いずれ劣らぬ美女揃い。勝ち残るのは一体誰だ? 知力体力時の運。最初の種目は〇Xクイズです!」
司会の男がマイクを手に宣言する。
ルールは簡単。問題の答えが〇かXかを選びそれぞれの陣地に分かれる。ここで早くも早知が脱落した。
「続いては体力! 反復横跳びをしてもらいます!」
次はステージ上で二人ずつ組となり、それぞれに審判がついた。――揺れる揺れる、オッパイが揺れる。
ここで脱落するかと思われた小町だったが――
「勝者、エントリーナンバー18、藤見小町さん!」
「ちょっと、明らかに私の方が跳んだ回数多かったでしょ!」
小町の対戦相手が審判に抗議する。
「抗議は認めません。――藤見さん、素晴らしい揺れと弾力でした」
「はぁ……」
どうやら競うのは回数ではなかったようだ。
「最後は時の運! ジャンケンで勝負して貰います!」
ここでも小町はなんとか生き残った。そして最終選考に選ばれたのは、当然のように時子も含めた五人である。
「では順にインタビューして参りましょう」
司会が端からマイクを向ける。そして時子の順番が回ってきた。
「外国の方ですか? お名前は?」
「ギャリソン時子ことギャル子です。父がイギリス人のハーフです」
「ギャル子さん、それ逆」
つっこむのを忘れない小町であった。
「何か特技とかはありますか」
「そうですね。得意技は御所車です」
「えーと、何ですかそれ?」
「四十八手の一つです」
皆がスマホでその言葉を検索する。少しの間を置き、男性の見物客から歓声が上がった。
(くっ、なんてあざといアピールを……)
そう唇をかむのは時子の隣、三住澄子であった。フェロモンバリバリの女子大生である。数々のミスコンで優勝してきた彼女だったが、このままでは時子にその座を奪われてしまいそうだ。
(ならば、恥をかかせてやる)
三住澄子は勝つためなら手段を選ばない女であった。
「では、お次の方、お名前は?」
「は、はいっ。藤見小町です」と、小町が名前を言った瞬間――
「やんっ、足がもつれちゃった」
澄子の手が時子の胸へと伸びるが、時子はそれをひょいとかわす。
たたらを踏んだ澄子の手はその隣の小町のブラを掴み、引きずり下ろした。
「え?」
ぷるんと揺れる大きな胸が衆目に晒された。
10点!
10点!
10点!
審査員達が一斉に手にした札を上げる。
「ひっ、ひっ、いやあああああーーーーー!!」
小町の絶叫がほとばしった。
「やったね小町。優勝だよ」
「うう……もうお嫁に行けない」
海に沈む夕日を眺めながら、さめざめと泣く小町に時子が声をかける。
「大丈夫。私がもらってあげるから」
「ちょっ、なに言ってるんですかギャル子さん!?」
「冗談冗談。――さ、帰ろう。みんな待ってるよ」
小町に手を差し出す時子。夕日の加減だろうか、その顔は笑っているように見えるのだった。
「うおおおおお!」
沖の方では早知が思いっきり泳いでいた。
「……海水浴場でマジ泳ぎしている人初めて見たよ」
「ま、私たちはマッタリ楽しみましょう」
小町と和花は浮き輪を手に海へと入る。
「ギャル子さん、行かないんですか?」
「ふふ、私は今波を感じている」
足を波に浸して呟く時子。どうやら波が寄せるたび、足下の砂が崩れていく感触を楽しんでいるようだ。
「……じゃ、私たちは先に行きますんで」
小町は和花と二人、浮き輪に入って波に揺られる。
見上げれば青い空に白いカモメが飛んでいる。遠くに聞こえる喧噪も心地いい。和花とたわいないお喋りをしながらゆっくりと時を過ごした。
ふと海岸に目を向けると、何やら人だかりが出来ている。
「何だろ?」
気になった小町は海岸へ引き返した。人だかりの後ろから爪先を伸ばしてみれば、時子が真剣な表情で砂の山と向き合っている。
「ギャル子さん、何やってるんですか?」
「砂遊び」
見れば砂の山はお城の形になっていた。しかも西洋の城ではなく日本の城だ。立派な天守閣が出来上がっている。
「そこで寝ている人たちは?」
何故か周囲にはチャラい男が三人、寝転がっていた。
「しつこかったから寝てもらったの」
事も無げに答える時子。今度は二の丸に着手し始める。
「あら、サンドアートね。すごいじゃない」
「おー、ギャル子器用だな」
和花と早知も戻ってきて感嘆の声を上げた。
「よし、私たちも定番のアレをやりましょうか」と、小町は提案した。
じゃんけんで生贄は早知となる。二人は寝転んだ早知の身体を砂で覆っていく。
「ふふふ、巨乳にしてあげますよ。橘さん」
盛り上がった砂の上、胸に二つの山を作る小町だった。
「イヤミかっ、おいコラ」
と、三の丸まで完成させた時子がやって来た。早知の股間の辺りに砂を盛り上げ始める。
「巨根、巨根」
「やめろーーー!! ショッ〇ー!!」
本気で嫌がる早知であった。
「ふぅ、遊んだ、遊んだ」
「そろそろお昼にしない?」
「そうだね。おーい、ギャル子さん」
和花の提案に、小町は早知をもてあそぶ時子に声をかける。
「ふふ、橘さんたらこんなに大きくしちゃって」
「うう……もうお嫁に行けない」
砂に埋まってさめざめと泣く早知。
「二人とも、お昼ご飯にしましょう」
「うん」
「つーか、オレは動けないっつーの。助けろ」
三人がかりで早知を掘り起こし、海の家へと向かった。
「いらっしゃいませだべ」
水着にエプロンを着けた少女が迎えてくれる。
「ラーメンお願いします」
「私も」
「カレー、超辛で」
「オレは甘口カレーだ」
各々好きなものを注文する。少し待つと料理が運ばれてきた。
「お、美味しい」
「ほんと」
「辛い、けど美味しい」
「マジ美味いな」
あまり期待していなかったのだが、料理はとても美味しかった。
「お姉さん方、みんな美人だべな。良かったらこれに出ないだべか?」
食器を下げに来た少女が一枚のチラシを差し出した。
「白崎海水浴場ミスコンテスト?」と、首を傾げる小町。
「そうだべ。ちょうど今日の昼過ぎから開催されるべ。優勝賞品は家族での温泉旅行だべ」
「おお、なら出るぜ」
瞳を輝かせる早知。
「私はパス」
和花は興味なさげに応える。
「小町、一緒に出ましょう」
「え!? いやいや、私なんか無理ですって。ギャル子さんお一人でどうぞ」
時子の誘いをやんわり断る小町だったが――
「大丈夫。変身しよう」
時子がどこからともなくヘアブラシを取り出す。
「ギャル子クリスタルパワーメイクアッープ!」
次の瞬間、そこには髪を下ろした小町ロングヘアバージョンが現れた。
「よし、いける」と、親指を立てる時子。
「えええーーーーー」
小町は素っ頓狂な叫びを上げるのだった。
小町は時子に引きずられ、ミスコンテストにエントリーした。
集まった女性は総勢二十一名。さすがコンテストに出場するだけあって、みな美人揃いだ。場違い感に小町は小さくなっていた。
「さあ、いよいよ始まりました白崎海水浴場ミスコンテスト! いずれ劣らぬ美女揃い。勝ち残るのは一体誰だ? 知力体力時の運。最初の種目は〇Xクイズです!」
司会の男がマイクを手に宣言する。
ルールは簡単。問題の答えが〇かXかを選びそれぞれの陣地に分かれる。ここで早くも早知が脱落した。
「続いては体力! 反復横跳びをしてもらいます!」
次はステージ上で二人ずつ組となり、それぞれに審判がついた。――揺れる揺れる、オッパイが揺れる。
ここで脱落するかと思われた小町だったが――
「勝者、エントリーナンバー18、藤見小町さん!」
「ちょっと、明らかに私の方が跳んだ回数多かったでしょ!」
小町の対戦相手が審判に抗議する。
「抗議は認めません。――藤見さん、素晴らしい揺れと弾力でした」
「はぁ……」
どうやら競うのは回数ではなかったようだ。
「最後は時の運! ジャンケンで勝負して貰います!」
ここでも小町はなんとか生き残った。そして最終選考に選ばれたのは、当然のように時子も含めた五人である。
「では順にインタビューして参りましょう」
司会が端からマイクを向ける。そして時子の順番が回ってきた。
「外国の方ですか? お名前は?」
「ギャリソン時子ことギャル子です。父がイギリス人のハーフです」
「ギャル子さん、それ逆」
つっこむのを忘れない小町であった。
「何か特技とかはありますか」
「そうですね。得意技は御所車です」
「えーと、何ですかそれ?」
「四十八手の一つです」
皆がスマホでその言葉を検索する。少しの間を置き、男性の見物客から歓声が上がった。
(くっ、なんてあざといアピールを……)
そう唇をかむのは時子の隣、三住澄子であった。フェロモンバリバリの女子大生である。数々のミスコンで優勝してきた彼女だったが、このままでは時子にその座を奪われてしまいそうだ。
(ならば、恥をかかせてやる)
三住澄子は勝つためなら手段を選ばない女であった。
「では、お次の方、お名前は?」
「は、はいっ。藤見小町です」と、小町が名前を言った瞬間――
「やんっ、足がもつれちゃった」
澄子の手が時子の胸へと伸びるが、時子はそれをひょいとかわす。
たたらを踏んだ澄子の手はその隣の小町のブラを掴み、引きずり下ろした。
「え?」
ぷるんと揺れる大きな胸が衆目に晒された。
10点!
10点!
10点!
審査員達が一斉に手にした札を上げる。
「ひっ、ひっ、いやあああああーーーーー!!」
小町の絶叫がほとばしった。
「やったね小町。優勝だよ」
「うう……もうお嫁に行けない」
海に沈む夕日を眺めながら、さめざめと泣く小町に時子が声をかける。
「大丈夫。私がもらってあげるから」
「ちょっ、なに言ってるんですかギャル子さん!?」
「冗談冗談。――さ、帰ろう。みんな待ってるよ」
小町に手を差し出す時子。夕日の加減だろうか、その顔は笑っているように見えるのだった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
天才jk現る!
Zawaka
青春
オシャレで可愛い今どきjkが多い高校に
4月から新入生がやってきた。
名前は屋根津 果歩 。
彼女は普通の女の子とは違う天才。
みなさんも屋根津さんのこと絶対好きになるはず…!
どう凄いのか読んで確かめて下さい!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。
僕は 彼女の彼氏のはずなんだ
すんのはじめ
青春
昔、つぶれていった父のレストランを復活させるために その娘は
僕等4人の仲好しグループは同じ小学校を出て、中学校も同じで、地域では有名な進学高校を目指していた。中でも、中道美鈴には特別な想いがあったが、中学を卒業する時、彼女の消息が突然消えてしまった。僕は、彼女のことを忘れることが出来なくて、大学3年になって、ようやく探し出せた。それからの彼女は、高校進学を犠牲にしてまでも、昔、つぶされた様な形になった父のレストランを復活させるため、その思いを秘め、色々と奮闘してゆく

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる