ギャル子さんと地味子さん

junhon

文字の大きさ
上 下
13 / 34

ギャル子と海①

しおりを挟む
「ギャル子さん、夏休みに海に行きましょう」
 夕食の場で小町が話を切り出す。
 隣に越してきて以来、時子は小町の家に毎日入り浸っていた。一人で食べる夕飯は味気なかろうと小町が誘ったのだ。風呂も沸かすのが勿体ないと小町の家で入っている。自分の部屋に帰るのはほぼ寝る時だけだった。
「海?」
「そうですよ、夏と言えば海、海と言えば夏です。一夏の思い出を作りましょう」
「うん、いいよ」
「じゃあ、お兄ちゃん、運転手ね。休みの日に合わせるから」
 珍しく早く帰ってきていた兄の大悟に向かって頼む。
「え~、休みの日くらいゆっくり寝かせろよ」
「……ギャル子さんとラブホに入ったのをお母さんにばらすわよ」
 小町は大悟の耳元で囁いた。
「……はい、運転させていただきます」
「いやぁ、楽しみですねぇ」
「小町、その前に期末テストがあるのを忘れないでね?」
 そこへ母が嫌な現実を思い出させる。
「うっ、もちろん。――ギャル子さん、勉強教えてもらえないでしょうか?」
 こう見えて時子は成績優秀だった。
「いいよ。みっちり教えてあげる」
「……程々でお願いします」



 次の日の昼休み、小町は和花にも声をかけた。
「ええ、いいわよ」
「よし。――そうだ、橘さんも誘ってみましょうか」
「そうね」
「うん」
 二人の了承を得、学食から帰ってきた早知に声をかける。
「馬鹿野郎、こちとらバイトで忙しいってのっ」
「そうですか……それなら仕方ないですね」
 小町は早知に背中を向けた。
「……まあ待て、そこまで言うなら行ってやらない事もない」
 その肩に手を置いて引き留め、早知は言う。
「いえ、無理しなくても」
「そ・こ・ま・で・言うなら行ってやらない事もない」
「えーと、じゃあ是非一緒に行きましょう」
「仕方ねぇなぁ」
「それはそうと、橘さん期末テストは大丈夫ですか? 赤点だと補習ですよ」
「任せろ、オレは『ライン際の魔術師』と呼ばれているんだ。ギリギリ赤点を回避する事には自信がある」
 そう自慢げに言う早知だった。



 その言葉通り、早知は見事にギリギリで赤点を回避し、大悟の運転するレンタカーで四人は海へとやって来た。
 元々インドア派の小町は海など小学生以来だ。時子も同じく小学生以来という事で、二人とも先日買ったおニューの水着を身につける。
 時子はセクシーな黒のビキニ、小町は逆に白のビキニだ。スレンダーながら出るところはしっかり出ているグラマーな肢体の時子、ぽっちゃりめながら見事な巨乳の小町。
 そして意外な事に情熱的な赤の水着の和花。均整のとれた健康的な体つきである。残る早知はと言うと――
「なんだよ? 可愛いだろ」
「いや、確かに可愛いですが……」
 小町は何とも言えない表情を浮かべる。
 早知の水着は胸と腰にひらひらのフリルのついたピンクのビキニだった。似合っていない事はないのだが、普段のヤンキースタイルとのギャップが激しすぎる。
「橘さんて何でヤンキーぽく振る舞ってるんですか?」
「女だって舐められないためだ」
「はぁ……」
 普段からこういう格好をしていれば可愛いのになぁ――と思う小町だった。
 と、時子がいきなり後ろから早知の胸に手を回した。
「ひゃん」
 意外と可愛い声を上げる早知。
「……どんまい。需要はあるよ」
「うるせーよ! お前らの発育が良すぎるんだよ!」
 フリルは胸の小ささを隠すためのものでもあったのだ。
「んじゃ、俺は荷物番をしてるんで」
 女子高生達の水着姿に目もくれず、パラソルの下へ入って寝転ぶ大悟。
「んじゃ、早速泳ぐとするか」
 早知が準備運動を始める。
「待って、日焼け止め塗らないと」
 と、時子はバックの中をまさぐる。
「んだよ。夏らしく焼きゃあいいじゃねぇか」
「私、肌が弱いから。小町、塗ってくれる?」
「はい、じゃあ横になって下さい」
「オレは先に行くからな」
 そう言って早知は海へ向かって駆け出した。
 小町はレジャーシートの上に横になった時子の背に日焼け止めを塗る。
「ギャル子さん、肌白くて綺麗ですね」
「おかげで日に当たるとすぐ赤くなっちゃうけど。――ありがと。今度は小町に塗ってあげる」
「じゃ、お願いします」
 時子と交代で小町はシートに寝そべった。
「小町の肌もすべすべね」
「はぁ、どうも」
「ブラ外すわね」
 と、時子がいきなりブラの紐をほどく。
「ちょっ、何するんですか!?」
「こうしないとちゃんと濡れないでしょ?」
「いや、そこは紐の下に手を入れるとか……」
「いいから、いいから」
 ブラを外された事で心細いものを感じながら時子に身を任せる。
 何だろう……日焼け止めを塗る時子の手が気持ちいい。それになんか手つきがいやらしいような……。
「ひゃっ!?」
 背中に日焼け止めを塗り終えた時子の手が前へ――胸へと回される。
「ちょっ!? ギャル子さんっ」
「こっちも塗ってあげる」
「いや、そこはいいですって!」
「遠慮しなくていいよ」
「あ……やめ……」
「ふふ、小町の胸すっごく柔らかい。これはF、いやG?」
 時子の手が小町の胸を揉みしだく。
「やめ……あ、あ……」
 抵抗しようにも起き上がれば胸が見えてしまう。もはや小町は時子のなすがままだった。
「ふふ、感じてるの? 小町。先っちょ硬くなってきた」
「だめ……そこは……あ」
「やめなさい!!」
 時子の頭を和花がはたく。
「……痛いじゃないの」
「女の子同士で何やってるのよ!」
 顔を赤くしながら和花が言う。ちなみに隣の大悟は寝息を立てていた。
「はぁ、はぁ……助かったよ。わかちゃん」
 水着を付け直し、小町は身を起こす。
「あんた達、もしかしてそういう関係とか?」
「違うから!!」
 和花の言葉を精一杯否定する小町であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~

kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

俯く俺たちに告ぐ

青春
【第13回ドリーム小説大賞優秀賞受賞しました。有難う御座います!】 仕事に悩む翔には、唯一頼りにしている八代先輩がいた。 ある朝聞いたのは八代先輩の訃報。しかし、葬式の帰り、自分の部屋には八代先輩(幽霊)が! 幽霊になっても頼もしい先輩とともに、仕事を次々に突っ走り前を向くまでの青春社会人ストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

坊主の誓い

S.H.L
青春
新任教師・高橋真由子は、生徒たちと共に挑む野球部設立の道で、かけがえのない絆と覚悟を手に入れていく。試合に勝てば坊主になるという約束を交わした真由子は、生徒たちの成長を見守りながら、自らも変わり始める。試合で勝利を掴んだその先に待つのは、髪を失うことで得る新たな自分。坊主という覚悟が、教師と生徒の絆をさらに深め、彼らの未来への新たな一歩を導く。青春の汗と涙、そして覚悟を描く感動の物語。

彗星と遭う

皆川大輔
青春
【✨青春カテゴリ最高4位✨】 中学野球世界大会で〝世界一〟という称号を手にした。 その時、投手だった空野彗は中学生ながら152キロを記録し、怪物と呼ばれた。 その時、捕手だった武山一星は全試合でマスクを被ってリードを、打っては四番とマルチの才能を発揮し、天才と呼ばれた。 突出した実力を持っていながら世界一という実績をも手に入れた二人は、瞬く間にお茶の間を賑わせる存在となった。 もちろん、新しいスターを常に欲している強豪校がその卵たる二人を放っておく訳もなく。 二人の元には、多数の高校からオファーが届いた――しかし二人が選んだのは、地元埼玉の県立高校、彩星高校だった。 部員数は70名弱だが、その実は三年連続一回戦負けの弱小校一歩手前な崖っぷち中堅高校。 怪物は、ある困難を乗り越えるためにその高校へ。 天才は、ある理由で野球を諦めるためにその高校へ入学した。 各々の別の意思を持って選んだ高校で、本来会うはずのなかった運命が交差する。 衝突もしながら協力もし、共に高校野球の頂へ挑む二人。 圧倒的な実績と衝撃的な結果で、二人は〝彗星バッテリー〟と呼ばれるようになり、高校野球だけではなく野球界を賑わせることとなる。 彗星――怪しげな尾と共に現れるそれは、ある人には願いを叶える吉兆となり、ある人には夢を奪う凶兆となる。 この物語は、そんな彗星と呼ばれた二人の少年と、人を惑わす光と遭ってしまった人達の物語。        ☆ 第一部表紙絵制作者様→紫苑*Shion様《https://pixiv.net/users/43889070》 第二部表紙絵制作者様→和輝こころ様《https://twitter.com/honeybanana1》 第三部表紙絵制作者様→NYAZU様《https://skima.jp/profile?id=156412》 登場人物集です→https://jiechuandazhu.webnode.jp/%e5%bd%97%e6%98%9f%e3%81%a8%e9%81%ad%e3%81%86%e3%80%90%e7%99%bb%e5%a0%b4%e4%ba%ba%e7%89%a9%e3%80%91/

亡き少女のためのベルガマスク

二階堂シア
青春
春若 杏梨(はるわか あんり)は聖ヴェリーヌ高等学校音楽科ピアノ専攻の1年生。 彼女はある日を境に、人前でピアノが弾けなくなってしまった。 風紀の厳しい高校で、髪を金色に染めて校則を破る杏梨は、クラスでも浮いている存在だ。 何度注意しても全く聞き入れる様子のない杏梨に業を煮やした教師は、彼女に『一ヶ月礼拝堂で祈りを捧げる』よう反省を促す。 仕方なく訪れた礼拝堂の告解室には、謎の男がいて……? 互いに顔は見ずに会話を交わすだけの、一ヶ月限定の不思議な関係が始まる。 これは、彼女の『再生』と彼の『贖罪』の物語。

処理中です...