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ギャル子とデート①
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「わかちゃん、幸せって何だっけ?」
「ポン酢醤油のある家じゃないかな」
「あんたは明石家さ○まかいっ」
と、二人は何故か生まれる前のCMネタを応酬する。
放課後の教室にて、小町は和花に相談を持ちかけていた。
「小町にとっての幸せって何なのよ?」
「そうだなぁ、好きな本に囲まれて暮らす事?」
「枯れてるわね。あんた彼氏が欲しいとか思わないの?」
「いやいや、私のような地味子がそんな大それたこと……」
「でも、欲しいでしょ?」
「めっちゃ欲しいです」
身を乗り出して小町は答える。
「でもなぁ、男関係はちょっとなぁ。色々あったわけだし」
「何の話?」
「ん~。実はさ、最近ギャル子――じゃなくてギャリソンさんと友達になったんだよね」
「へぇ、近頃付き合いが悪いと思っていたらそういうことか。あんたが友達を作るなんて珍しい」
「でね、詳しくは言えないけど、ギャリソンさんは色々不幸な人なんだよ。だから力になってあげたいんだけど」
「そうは言っても、幸せなんて人それぞれだし」
「そうなんだよね~。どうしたらいいのかな?」
「……小町、人間の三大欲求は知ってるわよね」
「食欲、睡眠欲、性欲でしょ」
「まずはそれを満たしてみたらどうかしら」
「さぁギャル子さん。今日は私のおごりです。何でも好きなものを食べて下さい」
小町と時子はファミレスに来ていた。
「どうしたの? 急に」
いきなりの歓待に時子は首を傾げる。
「なんと言うか、色々問題が解決したそのお祝いです」
「だったら、お礼に私がおごらなくちゃいけない気がするけど」
「いいんです。とにかく遠慮なさらずに」
「じゃあ、遠慮なく」
時子は次々とメニューを注文し、端から平らげていく。
食べる、食べる、どんどん食べる。さすがに小町は財布の中身が心配になってきた。
「ギャル子さん、勧めておいて何ですが、そんなに食べると太りますよ」
「大丈夫、私いくら食べても太らない体質だから」
「……正直に言います。もう勘弁して下さい」
小町はテーブルに平伏した。
「――どうですかギャル子さん。幸せですか?」
「う~ん、そこそこお腹いっぱいになったけど、別にこれと言って……」
作戦その一、失敗!
「さぁギャル子さん。今夜は起こしませんよ!」
小町は部屋にパジャマパーティーと称して時子を呼んだ。
「普通寝かさないじゃないのかな?」
「とにかく寝て下さい。電気消しますね」
明日は休日だ。時子には昼過ぎまで惰眠を貪って貰おう。
「――ギャル子さん寝ましたか?」
「ううん」
「――ギャル子さん寝ましたか?」
「ううん」
そんなやりとりを繰り返すうち、先に小町の方が眠りに落ちていた。
――翌朝、起きてみるとすでに時子の姿がない。
「ギャル子さん?」
部屋を出ると、キッチンで時子と母親が楽しげに会話しながら朝食の支度をしている。
作戦その二、失敗!
「となると後は性欲か。しかし、ギャル子さん不感症だしな」
ならば性欲抜きにしても男女交際を楽しんでもらいたいと小町は考える。
とは言え、小町には紹介できるような男友達もいなかった。
「ふぁあ、おはよー」
朝食の後、リビングで悩んでいると兄の大悟が起きてきて顔を見せる。
――いた、男が一人。
小町は値踏みするように大悟を眺める。
小町と同じく黒髪に黒縁眼鏡。兄妹そろって地味な顔立ち。身長はそこそこだが、ひょろりと痩せていてあまり頼りになりそうにない。……まあ、ここは妥協しよう。
「お兄ちゃん、変な性癖とか持ってないよね?」
「……お前は朝っぱらからなに言ってるんだ?」
「いいから、お兄ちゃんの理想の女性は?」
「う~ん、今期はやっぱりヒナコちゃんだね」
「誰それ?」
「ヒナコ・ノーマン。いやぁ、萌えるなぁ」
小町はその名前をスマホで検索してみる。出てきたのはアニメのキャラクターだ。
「……お兄ちゃん、そんなんだから彼女が出来ないんだよ」
哀れみの視線で兄を見る。
「ほっとけ! お前だって彼氏いないくせに」
とは言え、そのヒナコとやらは黒髪ロングで巨乳の大人しそうな顔をした女の子である。時子とは正反対とも言えるが、まあいいだろう。
「お兄ちゃん、今日はギャル子さんとデートして」
「はぁ? いきなり何を」
「いいでしょ。女子高生とデートできる機会なんて多分もう一生ないよ」
「酷いなおい! でもな、相手の気持ちだって……」
「――私は構いませんが」
話が聞こえていたらしく、後片付けをしていたキッチンから時子が顔を見せる。
「よし、決まり。そうとなったらさっさとヒゲを剃ってくる!」
小町は兄の背中を押すのだった。
「ポン酢醤油のある家じゃないかな」
「あんたは明石家さ○まかいっ」
と、二人は何故か生まれる前のCMネタを応酬する。
放課後の教室にて、小町は和花に相談を持ちかけていた。
「小町にとっての幸せって何なのよ?」
「そうだなぁ、好きな本に囲まれて暮らす事?」
「枯れてるわね。あんた彼氏が欲しいとか思わないの?」
「いやいや、私のような地味子がそんな大それたこと……」
「でも、欲しいでしょ?」
「めっちゃ欲しいです」
身を乗り出して小町は答える。
「でもなぁ、男関係はちょっとなぁ。色々あったわけだし」
「何の話?」
「ん~。実はさ、最近ギャル子――じゃなくてギャリソンさんと友達になったんだよね」
「へぇ、近頃付き合いが悪いと思っていたらそういうことか。あんたが友達を作るなんて珍しい」
「でね、詳しくは言えないけど、ギャリソンさんは色々不幸な人なんだよ。だから力になってあげたいんだけど」
「そうは言っても、幸せなんて人それぞれだし」
「そうなんだよね~。どうしたらいいのかな?」
「……小町、人間の三大欲求は知ってるわよね」
「食欲、睡眠欲、性欲でしょ」
「まずはそれを満たしてみたらどうかしら」
「さぁギャル子さん。今日は私のおごりです。何でも好きなものを食べて下さい」
小町と時子はファミレスに来ていた。
「どうしたの? 急に」
いきなりの歓待に時子は首を傾げる。
「なんと言うか、色々問題が解決したそのお祝いです」
「だったら、お礼に私がおごらなくちゃいけない気がするけど」
「いいんです。とにかく遠慮なさらずに」
「じゃあ、遠慮なく」
時子は次々とメニューを注文し、端から平らげていく。
食べる、食べる、どんどん食べる。さすがに小町は財布の中身が心配になってきた。
「ギャル子さん、勧めておいて何ですが、そんなに食べると太りますよ」
「大丈夫、私いくら食べても太らない体質だから」
「……正直に言います。もう勘弁して下さい」
小町はテーブルに平伏した。
「――どうですかギャル子さん。幸せですか?」
「う~ん、そこそこお腹いっぱいになったけど、別にこれと言って……」
作戦その一、失敗!
「さぁギャル子さん。今夜は起こしませんよ!」
小町は部屋にパジャマパーティーと称して時子を呼んだ。
「普通寝かさないじゃないのかな?」
「とにかく寝て下さい。電気消しますね」
明日は休日だ。時子には昼過ぎまで惰眠を貪って貰おう。
「――ギャル子さん寝ましたか?」
「ううん」
「――ギャル子さん寝ましたか?」
「ううん」
そんなやりとりを繰り返すうち、先に小町の方が眠りに落ちていた。
――翌朝、起きてみるとすでに時子の姿がない。
「ギャル子さん?」
部屋を出ると、キッチンで時子と母親が楽しげに会話しながら朝食の支度をしている。
作戦その二、失敗!
「となると後は性欲か。しかし、ギャル子さん不感症だしな」
ならば性欲抜きにしても男女交際を楽しんでもらいたいと小町は考える。
とは言え、小町には紹介できるような男友達もいなかった。
「ふぁあ、おはよー」
朝食の後、リビングで悩んでいると兄の大悟が起きてきて顔を見せる。
――いた、男が一人。
小町は値踏みするように大悟を眺める。
小町と同じく黒髪に黒縁眼鏡。兄妹そろって地味な顔立ち。身長はそこそこだが、ひょろりと痩せていてあまり頼りになりそうにない。……まあ、ここは妥協しよう。
「お兄ちゃん、変な性癖とか持ってないよね?」
「……お前は朝っぱらからなに言ってるんだ?」
「いいから、お兄ちゃんの理想の女性は?」
「う~ん、今期はやっぱりヒナコちゃんだね」
「誰それ?」
「ヒナコ・ノーマン。いやぁ、萌えるなぁ」
小町はその名前をスマホで検索してみる。出てきたのはアニメのキャラクターだ。
「……お兄ちゃん、そんなんだから彼女が出来ないんだよ」
哀れみの視線で兄を見る。
「ほっとけ! お前だって彼氏いないくせに」
とは言え、そのヒナコとやらは黒髪ロングで巨乳の大人しそうな顔をした女の子である。時子とは正反対とも言えるが、まあいいだろう。
「お兄ちゃん、今日はギャル子さんとデートして」
「はぁ? いきなり何を」
「いいでしょ。女子高生とデートできる機会なんて多分もう一生ないよ」
「酷いなおい! でもな、相手の気持ちだって……」
「――私は構いませんが」
話が聞こえていたらしく、後片付けをしていたキッチンから時子が顔を見せる。
「よし、決まり。そうとなったらさっさとヒゲを剃ってくる!」
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