ギャル子さんと地味子さん

junhon

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ガール・ミーツ・ガール②

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「ごめん、わかちゃん。今日私ギャリソンさんと一緒に食べるから」
 次の日の昼休み、いつものごとくどこかへ行こうとする時子を小町は追いかけた。
「ギャル子さーん」
「なに?」
「一緒にお弁当を食べましょう」
「いいよ、ついてきて」
 そう言って時子は階段を上へ上へと登っていく。着いた先は屋上だ。
「いつもここでご飯食べているんですか?」
「うん、私友達いないしね」
「違いますよ。私がいるじゃないですか」
「そうだったわね」
 二人で屋上の縁に腰掛け、お弁当を広げる。時子のお弁当は色鮮やかでいかにも美味しそうだった。
「美味しそうですね。お母さんが作ってくれるんですか?」
「ううん、自分で作ってる。うち、ママいないし」
 また一つ重い話を聞いてしまった。
「あ……すみません」
「いいよ、別に」
 何か話しかけようと思う小町だったが、上手く話題を切り出せず、二人で黙々と食事を口に運ぶ。
 二人ともお弁当を食べ終えた頃、時子がおもむろに口を開いた。
「藤見さん。なんで私の友達になろうなんて思ったの?」
「だって、ギャル子さん。何か危なっかしくて、ほっとけないんですよ」
「そうかな?」
 首を捻る時子。自覚症状がないって恐ろしい。
「私、まずは男関係をどうにかした方がいいと思うんですよ。とにかく、簡単に身体を許すなんてもってのほかです」
「でも、付き合ってるわけだし。今時の高校生なら普通じゃないかな」
「五人同時は普通じゃないですよっ」
「藤見さんは身持ちが堅いね。やっぱり処女?」
「う……まぁ、そうなんですけど」
「ふーん」
 時子が小町を眺め回す。その手がいきなり小町の胸を鷲掴みにした。
「ひゃっ」
「……大きい」
「いきなり何するんですか!」
「その胸で誘惑すれば男の子なんてイチコロなのに」
「だから、そう言う身体目当てなのが駄目なんです!」
「でも、いつかはするわけだし、遅いか早いかの違いなんじゃないのかな」
「違います。大事なのは心。お互いを好きだと思う気持ちです」
「うーん、そこが私には分かんないんだよね」
 時子は空を見上げて呟いた。
「そうみたいですね」
 一体どうすればいいのか、小町にも分からなかった。



 悩んだ末、小町はとにかく時子に接する事が大事と考えた。
 普通に友達付き合いをし、まずは友情を育まなければならない。
「ギャル子さん、一緒に帰りましょう」
 授業が終わり、帰り支度をしている時子に声をかける。
「ごめん、これから約束があるんだ」
「もしかして、男の人ですか?」
「うん、そう。だから先に帰ってて」
「じゃあ、私教室で待ってますんで」
 本当は行くなと言いたかった。しかし、どうやって時子を説得すればいいのか思いつかない。
「遅くなるかもしれないよ」
「大丈夫です。本を読んでますので」
「ごめんね。じゃあ、後で」
「はい」
 時子の背中を見送った後、席について本を読む。しかし、時子の事が心配で集中できない。
 ふと窓の外に目をやると、階下に金色の髪が見えた。時子である。
 一緒にいるのはこちらも金髪の男子生徒。多分、図書館で会ったチャラ男だろう。
 そしてもう一人、丸々と太った男子生徒が一緒である。
「……」
 何か嫌な予感がする。
 小町は本を放り出して教室を出た。



「ほ、ほんとにギャリソンさんとヤらしてくれるナリか」
 薄暗い体育用具室の中、鼻息を荒くし、太った男子生徒――太田が訊ねる。
「もちろんだとも、ただし一回五千円な」
 金髪のチャラ男――金城きんじようは答えた。
「うう、高いナリよ」
「なに言ってるんだよ。お前みたいなキモオタがこんな上玉とヤれる機会なんて、これを逃せば一生ないぜ」
 太田の肩に手を回し、金城はニヤニヤと笑いながら言う。
「分かったナリ。払うナリ」
「毎度あり。よーし時子。服を脱げよ」
 金城に言われるまま、時子は服を脱いで全裸となった。
「脚を開いて見せてやりな」
 こんな辱めを受けているというのに、無表情なまま時子が脚を開く。
「はぁ、はぁ、はぁ……ギャリソンさんの生まん……」
 興奮に息を切らしながら、太田は時子の秘所に見入っていた。
「見たろ、こいつはオレの言う事なら何でも聞くんだ。どこでも使っていいぜ。口だろうとアソコだろうと、ケツの穴でもオッケーだ」
「じ、じゃあ、さっそく……」
 太田はズボンを下ろし、股間を晒す。そこはすでに興奮でいきりっていた。
「ぼ、ぼ、僕の童貞をギャリソンさんに捧げるナリ~~~!」
 そう叫んで太田は時子を押し倒す。その時――
「そこまでです!」
 薄暗い体育用具室に光が差し込む。ドアを開け放ったのは小町だった。
「淫行の現場を撮影しました。学校に報告させてもらいます!」
 スマホをかざし、小町は言った。その脚はガクガクと震えている。
「ぼ、僕は知らないナリ。誘われただけナリよ~」
 ズボンを抱え、入り口の小町を押しのけて太田が外へと飛び出す。その拍子に小町が転び、手からスマホが落ちた。
 慌てて拾おうとする小町だったが、そのスマホを金城の足が踏みつける。
「ふん、まずいところを見られちまったな。まぁいいや、学校なんかにチクれないよう、アンタの恥ずかしい写真でも撮らせてもらおう」
 金城は小町の髪を掴んで体育用具室に引きずり込むと、その扉を閉めた。
「さーて、どんな目に遭わせてやろうか」
 小町の身体を押し倒し、両手で腕の自由を奪う。
「いやぁ! 離せ! 離せ!」
 足をばたつかせて小町が暴れる。
「ちっ、おい時子! お前も手伝え」
 そう言って振り返った金城の顔を時子は思いっきり蹴りつけた。
「が! つ……てめえ、何しやがる」
「私の友達に触らないでくれる」
 冷え冷えとした表情で時子は言った。
「ああ? オレに逆らおうってのか!」
 立ち上がり、金城は拳を振り上げて時子に殴りかかる。
 時子はその手首を取り、華麗な体捌きを見せた。次の瞬間、金城は仰向けに転がされている。
 金城の顔のすぐ横に足を叩きつけ、時子は言った。
「あなたとはもうこれっきりにするわ。二度と私に近づかないでちょうだい」
「……ちっ、覚えてろよ」
 捨て台詞を残し、金城が去る。
「……ギャル子さん」
「ごめんね。大丈夫だった?」
「ギャル子さーん」
 小町が泣きながら時子に抱きつく。
「無茶するんだから。私の事なんかほっとけば良かったのに」
「なに言ってるんですか。友達でしょう」
「ありがとう。小町」
 無表情だった時子の頬が緩む。唇が少しつり上がった。
「ギャル子さん……笑った?」
「え!? そう?」
 自分の顔を撫でる時子だったが、すでにその微笑は消え、いつもの無表情に戻っている。
「笑いましたよ!」
 そう言って、小町も笑顔を見せるのだった。
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