3 / 3
女子大生・美樹の場合
しおりを挟む
「なんて読むのかしら? ワケアリ? ブンユウ?」
美樹は頭上の看板を見上げて呟いた。そこには「分有不動産」と書かれている。
しかし、その疑問はすぐに解消した。
自動ドアをくぐれば「いらっしゃいませ! ようこそワケアリ不動産へ!」と元気な声が美樹を迎える。
カウンターの女性がにっこりと微笑む。二十代後半くらいの美人だった。
「こんにちは。あの……部屋を探しているんですけど」
補欠合格で大学に受かった美樹は、出遅れて部屋探しに苦労している。
「はい、承りました。わたくし吉沢と申します。よろしくお願いいたします」
「あ、はい。こちらこそ」
「どのようなお部屋をお探しですか?」
「出来れば大学の近くがいいんですが……」
美樹としては贅沢を言う気はない。家賃が安くてお風呂が付いていればいい。
「かしこまりました。では候補にご案内しましょう」
◆
「……え?」
吉沢に案内された部屋に美樹は目を丸くする。
建物の外観も立派だったが、部屋も広くて綺麗。いかにも家賃が高そうだ。
「あの……予算はお伝えしましたよね?」
「ご安心ください。こちらの家賃は月1万です」
「ええ!?」
おかしい、話がうますぎる。と、いぶかしむ美樹に思い当たることがあった。
「もしかして、事故物件ってやつですか?」
「そうではないんですが……土地が悪かったのか、出るんですよ」
「……出るって、まさか」
「そのまさかです。夜な夜なボウ霊が現れるとか」
「……」
美樹は熟考する。そんな眉唾な話は信じられない。単なる噂だろう。だったら――
「いいです。ここにします!」
美樹は吉沢にそう告げるのだった。
◆
その日の夜、美樹はさっそく泊まっていたホテルからその部屋へと移った。生活に必要な荷物は後日田舎から送ってもらう予定だ。
前の住人が残したソファーがあったので、そこで横になり買ってきた毛布を身体に掛ける。
そうして眠りに落ちたのだが――
ドンドコドンドコドンドコ。
小刻みな太鼓のリズムに美樹は目を覚ました。
「……な、何の音?」
寝ぼけまなこを擦って音の方へと目を向ければ、部屋に一人の男の姿があった。浅黒い肌にエキゾチックな服をまとっている。
そして部屋には無かったはずの棒が二本立っていた。その棒の間にも棒が渡されている。
男は上体を反らして渡された棒の下をくぐろうとしていた。いわゆる「リンボーダンス」だ。
ドンドコドンドコドンドコ。
どこからか響く太鼓のリズムに乗せ、男は棒を落とすことなくその下をくぐり抜ける。
「YEAH!」
ガッツポーズをとる男は、今さら気づいたように美樹に視線を向けた。
顎を反らしたその表情はドヤ顔。「どうだい? 俺ってすごいだろう?」と得意満面だ。
ムカッときた美樹はソファーから起き上がると、渡された棒の前に立つ。
そして自分も上体を反らし、見事棒の下をくぐり抜けた。
「どう?」
高校時代新体操部だった美樹は、身体の柔らかさに自信がある。
こうして二人のリンボーダンス勝負が始まった。
バーの高さを少しずつ低くしながら、交互にその下をくぐり抜ける。
しかし、美樹には致命的な弱点があった。それは豊満な巨乳である。
「……くっ」
いくら上体を反らしても、このままでは胸がバーに当たってしまう。
「ならば!」
美樹はその身体を左右に振り出した。寝ていたのでブラは着けていない。プルンプルンと揺れるオッパイが横に引っ張られて平たく形を変える。
「どうだぁあああ!」
美樹は見事バーを落とすことなくその下をくぐり抜けた。
先攻後攻を交互に入れ替えていたので、次は男の番である。
男もバーをくぐり抜けようとするが、揺れるオッパイを目にしたせいで股間の棒が膨張していた。
「Ouch!」
自身の巨根が災いし、男はバーを落としてしまう。
「OH MY GOD!」
そう叫び、勝負に負けた男は姿を消した。
以来、部屋に男――棒霊が現れることはなかった。
こうして、美樹は格安の部屋を手に入れることが出来たのだった。
~END~
美樹は頭上の看板を見上げて呟いた。そこには「分有不動産」と書かれている。
しかし、その疑問はすぐに解消した。
自動ドアをくぐれば「いらっしゃいませ! ようこそワケアリ不動産へ!」と元気な声が美樹を迎える。
カウンターの女性がにっこりと微笑む。二十代後半くらいの美人だった。
「こんにちは。あの……部屋を探しているんですけど」
補欠合格で大学に受かった美樹は、出遅れて部屋探しに苦労している。
「はい、承りました。わたくし吉沢と申します。よろしくお願いいたします」
「あ、はい。こちらこそ」
「どのようなお部屋をお探しですか?」
「出来れば大学の近くがいいんですが……」
美樹としては贅沢を言う気はない。家賃が安くてお風呂が付いていればいい。
「かしこまりました。では候補にご案内しましょう」
◆
「……え?」
吉沢に案内された部屋に美樹は目を丸くする。
建物の外観も立派だったが、部屋も広くて綺麗。いかにも家賃が高そうだ。
「あの……予算はお伝えしましたよね?」
「ご安心ください。こちらの家賃は月1万です」
「ええ!?」
おかしい、話がうますぎる。と、いぶかしむ美樹に思い当たることがあった。
「もしかして、事故物件ってやつですか?」
「そうではないんですが……土地が悪かったのか、出るんですよ」
「……出るって、まさか」
「そのまさかです。夜な夜なボウ霊が現れるとか」
「……」
美樹は熟考する。そんな眉唾な話は信じられない。単なる噂だろう。だったら――
「いいです。ここにします!」
美樹は吉沢にそう告げるのだった。
◆
その日の夜、美樹はさっそく泊まっていたホテルからその部屋へと移った。生活に必要な荷物は後日田舎から送ってもらう予定だ。
前の住人が残したソファーがあったので、そこで横になり買ってきた毛布を身体に掛ける。
そうして眠りに落ちたのだが――
ドンドコドンドコドンドコ。
小刻みな太鼓のリズムに美樹は目を覚ました。
「……な、何の音?」
寝ぼけまなこを擦って音の方へと目を向ければ、部屋に一人の男の姿があった。浅黒い肌にエキゾチックな服をまとっている。
そして部屋には無かったはずの棒が二本立っていた。その棒の間にも棒が渡されている。
男は上体を反らして渡された棒の下をくぐろうとしていた。いわゆる「リンボーダンス」だ。
ドンドコドンドコドンドコ。
どこからか響く太鼓のリズムに乗せ、男は棒を落とすことなくその下をくぐり抜ける。
「YEAH!」
ガッツポーズをとる男は、今さら気づいたように美樹に視線を向けた。
顎を反らしたその表情はドヤ顔。「どうだい? 俺ってすごいだろう?」と得意満面だ。
ムカッときた美樹はソファーから起き上がると、渡された棒の前に立つ。
そして自分も上体を反らし、見事棒の下をくぐり抜けた。
「どう?」
高校時代新体操部だった美樹は、身体の柔らかさに自信がある。
こうして二人のリンボーダンス勝負が始まった。
バーの高さを少しずつ低くしながら、交互にその下をくぐり抜ける。
しかし、美樹には致命的な弱点があった。それは豊満な巨乳である。
「……くっ」
いくら上体を反らしても、このままでは胸がバーに当たってしまう。
「ならば!」
美樹はその身体を左右に振り出した。寝ていたのでブラは着けていない。プルンプルンと揺れるオッパイが横に引っ張られて平たく形を変える。
「どうだぁあああ!」
美樹は見事バーを落とすことなくその下をくぐり抜けた。
先攻後攻を交互に入れ替えていたので、次は男の番である。
男もバーをくぐり抜けようとするが、揺れるオッパイを目にしたせいで股間の棒が膨張していた。
「Ouch!」
自身の巨根が災いし、男はバーを落としてしまう。
「OH MY GOD!」
そう叫び、勝負に負けた男は姿を消した。
以来、部屋に男――棒霊が現れることはなかった。
こうして、美樹は格安の部屋を手に入れることが出来たのだった。
~END~
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

声劇・シチュボ台本たち
ぐーすか
大衆娯楽
フリー台本たちです。
声劇、ボイスドラマ、シチュエーションボイス、朗読などにご使用ください。
使用許可不要です。(配信、商用、収益化などの際は 作者表記:ぐーすか を添えてください。できれば一報いただけると助かります)
自作発言・過度な改変は許可していません。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる