告白から始まるBL物語?

junhon

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全ては告白から始まる(笑)

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「なあ良明。おれ瑞希みずきに告白しようと思う」

 放課後、だれも居ない教室で立川高志たちかわたかしは親友の久保良明くぼよしあきにそう切り出した。
 
 高志にとって良明はたよりになる友人だ。高校へ入学した時に良明の席が後ろだったことをきっかけに親交を深め、一年以上経った今では何でも腹を割って話せる仲である。
 
「はぁ……やっとその気になったのか?」

 高志にとってはそれこそ女子に告白する並の打ち明け話だったのだが、良明はため息一つ、やれやれと言った表情をかべた。
 
「な、なんだよ。俺は重要な話をしてるんだぞ」

 その態度に少しムッとなる高志。
 
ぼくにとっては今さらの話だよ。なんで付き合わないのかってずっと思ってた」

 良明はかたをすくめて応える。

「いや、だって幼稚園ようちえんからのくさえんなんだぜ。それこそ今さら付き合うのなんだの……」

 そう言って言葉尻ことばじりにごす高志だった。
 
「あんな素敵な幼馴染おさななじみがいるってのに贅沢ぜいたくな話だ」

「はぁ? 瑞希なんてお節介だし暴力はるうし三ヶ月先に生まれたからって年上ぶるし……」

早瀬はやせさんは誰にでも親切だけど、高志に対してはさらに輪をかけて親身になるよね。それに君以外に手をあげるところは見たことないし、頼りない弟みたいに思っているんじゃないかな」

「ぐっ……」

 良明の指摘してきに高志は言葉をまらせる。痛いところをかれたのだろう。
 
「だからバシッと告白してだな。男を見せようと思うんだ」

「いいんじゃないか。きっとOKしてくれるよ」

「そこでお前にたのみたいことがある」

 高志は真剣しんけんな表情で良明を見た。

「まあ、僕に出来ることなら協力しよう」

「告白の練習台になってくれないか?」

「は?」

 高志の頼みに良明は間のけた声を返すのだった。
 
 
       ◆
 
 
 二人だけの教室の中、少年たちが向かい合って立つ。
 
 高志は中肉中背のどこにでもいそうな少年だ。動物に例えるならわんこ系。陽気で親しみやすい雰囲気ふんいきである。
 
 その対面に立つ良明は背が高く、眼鏡をかけた理知的な少年だった。動物に例えるならミステリアスなきつねと言ったところだろう。
 
 窓から差し込む夕日が二人を紅く照らしだし、遠くにグラウンドからの喧噪けんそうが聞こえる。
 
「大事な話があるんだけど……いいかな?」

 高志は意を決し、真剣な表情で良明を見上げた。
 
「なんだい?」

 良明は小首をかしげ、高志を見詰みつめ返す。
 
「俺、俺……ずっと前からお前のことが……」

「……」

 良明は静かに言葉の続きを待つ。
 
 高志はこぶしにぎりしめ、一歩前に踏み出す。そして一気呵成いつきかせいに告げた。
 
「俺はお前のことが好きだ! 俺と付き合ってくれ!」

 その時、パン! と何かが落ちる音がひびいた。
 
 二人がそちらに目をやれば、開け放たれた教室の入り口に愕然がくぜんとした表所の瑞希が立っている。長いかみをポニーテールにした快活そうな少女だ。
 
 その足下には日直の日誌が落ちていた。今日は瑞希の当番で、なにか教室に用事があったのだろう。
 
「み、瑞希……これはだな……」

 高志はあせりまくりながらも弁明しようとするが――
 
「ごめんなさい! 邪魔じやましちゃって!」

 そうさけぶと勢いよくきびすを返し、瑞希は廊下ろうかを駆け抜けていった。
 
「おい! ちがうんだって!」

 その背中に手をばす高志だったが、瑞希の姿はあっという間に小さくなるのだった。
 
 
       ◆
 
 
 その日の夜、高志は瑞希に電話をかけて誤解を解こうとしたのだが、返ってくる言葉は完全に二人の仲を勘違かんちがいしたものだ。どこかうれしそうな声音で「応援おうえんするからね!」とまで言い出す始末だった。
 
 電話ではらちが明かないと、高志は翌日学校で良明も交えて話をすることに決める。
 
 そして次の日――
 
 パン! パン! パン!
 
 高志と良明が教室のドアをくぐるとクラッカーの音が鳴り響いた。
 
「な!?」

 ビックリして身を引く二人に向かい、続けて大勢の拍手はくしゆが降り注ぐ。
 
「な、なんだ!?」

 見ればクラスメイトが輪になり、笑顔を浮かべて二人を取り囲んでいる。
 
「お、おい……」

 困惑こんわくする高志に向かい、輪の中から瑞希が出てきてその手をにぎった。
 
「おめでとう、二人共! クラスのみんなも祝福してくれているよ」

「……え!?」

「夕べ、クラスのLINEでみんなに二人を祝福してくれるようにたのんだの!」

 ニコニコしながら瑞希はとんでもない台詞を口にする。
 
「おめでとう!」

頑張がんばれよ!」

「応援してるぜ!」

 絶句する高志に向かい、クラスメイトたちは祝福の言葉の雨を降らせた。
 
 この分だとうわさは学校中に広がっている可能性がある。
 
 とんでもない事態に気が遠くなり、足をふらつかせた高志の身体を良明が支えた。その様子に女子からは黄色い歓声かんせいが上がる。
 
「これはもう……付き合うしかないか?」

 冷や汗を流しながら真剣な表情でいう良明。
 
 なにかをあきらめた様なその台詞を遠くに聞きながら、高志は意識を失うのだった。
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