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西島香澄③
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トントンっ――
「香澄、まだ起きてる?」
お風呂から出て、パパのベッドの中でYouTubeを見ていると、寝室のドアをノックしたパパが声をかけてきた。
「起きてるけど、どうしたの?」
「電話なんだけど出られる?」
聞かなくても誰かなんて直ぐにわかった。
「ママだけど…」
「わかった」
私はドアを開けると、パパが持っているスマホを受け取ろうと手を伸ばした。
意外だったのだろう。
パパは驚きの表情を隠せないでいた。
「たまには出てやらないと悪いから…」
そう言って私はスマホを受け取った。
『もしもし…』
『香澄…』
『何?何かようがあって電話してきたんでしょ?』
『うっ‥うん…ズルズルズル――』
ママの鼻をすする音が聞こえてきた。
泣いてる?
かもしれない…
ホントに泣き虫…
『あのね、聞いてると思うけど、ママ明日、大勢の人の前でピアノを演奏するの。それでね…』
『行くかどうかわからないから。期待しないで』
『ママが日本でコンサートをするのは初めてなの。しかも大勢の人の前で演奏するのなんて8年ぶり。正直緊張してる』
『香澄には関係ない』
私のバカっ!
何言ってんのっ!
『1度でいいから大きな音楽ホールでピアノを演奏する姿を見て欲しいの』
『香澄が行こうが行くまいがママの演奏には全く関係ないじゃん』
あぁぁぁぁぁ~~
自分のバカさ加減に腹が立つ。
『そんなことないよ。香澄がいてくれるだけで勇気が出る。100%以上の力を発揮出来る』
『甘えないでよ』
『わかってるけど、見に来て欲しいの』
『話しはそれだけ?』
『うん…』
『だったら電話切るから。じゃあね』
『香澄…おやすみ』
そして私は電話を切った。
切って直ぐに頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。
自分で自分が情けない。
何でママに優しくしてあげられなかったんだろう?
何で頑張れの一言を言ってあげられなかったんだろう?
翌日。
ママのコンサートに行くのに何も着るものがなかったので、仕方なく制服に着替えることにした。
トントンっ――
脱衣所に行き着替えをしようとしていると「香澄、ちょっとリビングに来てくれるかな?」とパパに言われた。
制服に着替えるのをやめて私はパパの待つリビングに行ってみた。
「パパ、何?」
「これなんだけど…」
私に差し出したパパの手には黒色に水玉のワンピース?があった。
「どうしたのこれ?」
「この日のために用意しておいたんだ」
「香澄が着ていいの?」
「もちろんだよ。香澄のために作られたものだよ」
私のためって…
何変なことを言ってるんだろう?
「めっちゃ嬉しい。パパありがとう!もう最高ぉぉぉぉぉ~~」
私はパパに抱きつき、ドサクサに紛れて頬にキスをした。
「直ぐに着替えてくるから待ってて」
「どうぞごゆっくり」
それからもう1度脱衣所に行って、渡されたワンピースに着替えた。
着替えたあとに、かなりビックリした。
と言うかビビった。
なぜならあまりにも私の体にピッタリだったから。
しかもデザインがメチャメチャ可愛くて、一瞬で好きになった。
でもこんなデザイン売り物では見たことない。
デパートでも洋服屋にもなかったし、通販のカタログにも載っていたことはない。
一体どこでパパは買ってきたんだろう?
そして着替え終えた私はパパのところに戻って私の可愛いワンピース姿を披露した。
「どう?」
「おぉぉぉぉぉぉ~~スゴくいい。最高に似合ってる。超絶カワイイよ」
「でしょ?香澄って何着ても似合うんだよね。もとが可愛いから、逆に服を引き立てちゃうんだよね」
「本当にその通りだよ……」
パパは目を潤ませたかと思うと天井を見上げて涙を堪えているかのようだった。
そんなに私の姿を見て感動しちゃったの?
可愛いって罪だなぁ。
「香澄、まだ起きてる?」
お風呂から出て、パパのベッドの中でYouTubeを見ていると、寝室のドアをノックしたパパが声をかけてきた。
「起きてるけど、どうしたの?」
「電話なんだけど出られる?」
聞かなくても誰かなんて直ぐにわかった。
「ママだけど…」
「わかった」
私はドアを開けると、パパが持っているスマホを受け取ろうと手を伸ばした。
意外だったのだろう。
パパは驚きの表情を隠せないでいた。
「たまには出てやらないと悪いから…」
そう言って私はスマホを受け取った。
『もしもし…』
『香澄…』
『何?何かようがあって電話してきたんでしょ?』
『うっ‥うん…ズルズルズル――』
ママの鼻をすする音が聞こえてきた。
泣いてる?
かもしれない…
ホントに泣き虫…
『あのね、聞いてると思うけど、ママ明日、大勢の人の前でピアノを演奏するの。それでね…』
『行くかどうかわからないから。期待しないで』
『ママが日本でコンサートをするのは初めてなの。しかも大勢の人の前で演奏するのなんて8年ぶり。正直緊張してる』
『香澄には関係ない』
私のバカっ!
何言ってんのっ!
『1度でいいから大きな音楽ホールでピアノを演奏する姿を見て欲しいの』
『香澄が行こうが行くまいがママの演奏には全く関係ないじゃん』
あぁぁぁぁぁ~~
自分のバカさ加減に腹が立つ。
『そんなことないよ。香澄がいてくれるだけで勇気が出る。100%以上の力を発揮出来る』
『甘えないでよ』
『わかってるけど、見に来て欲しいの』
『話しはそれだけ?』
『うん…』
『だったら電話切るから。じゃあね』
『香澄…おやすみ』
そして私は電話を切った。
切って直ぐに頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。
自分で自分が情けない。
何でママに優しくしてあげられなかったんだろう?
何で頑張れの一言を言ってあげられなかったんだろう?
翌日。
ママのコンサートに行くのに何も着るものがなかったので、仕方なく制服に着替えることにした。
トントンっ――
脱衣所に行き着替えをしようとしていると「香澄、ちょっとリビングに来てくれるかな?」とパパに言われた。
制服に着替えるのをやめて私はパパの待つリビングに行ってみた。
「パパ、何?」
「これなんだけど…」
私に差し出したパパの手には黒色に水玉のワンピース?があった。
「どうしたのこれ?」
「この日のために用意しておいたんだ」
「香澄が着ていいの?」
「もちろんだよ。香澄のために作られたものだよ」
私のためって…
何変なことを言ってるんだろう?
「めっちゃ嬉しい。パパありがとう!もう最高ぉぉぉぉぉ~~」
私はパパに抱きつき、ドサクサに紛れて頬にキスをした。
「直ぐに着替えてくるから待ってて」
「どうぞごゆっくり」
それからもう1度脱衣所に行って、渡されたワンピースに着替えた。
着替えたあとに、かなりビックリした。
と言うかビビった。
なぜならあまりにも私の体にピッタリだったから。
しかもデザインがメチャメチャ可愛くて、一瞬で好きになった。
でもこんなデザイン売り物では見たことない。
デパートでも洋服屋にもなかったし、通販のカタログにも載っていたことはない。
一体どこでパパは買ってきたんだろう?
そして着替え終えた私はパパのところに戻って私の可愛いワンピース姿を披露した。
「どう?」
「おぉぉぉぉぉぉ~~スゴくいい。最高に似合ってる。超絶カワイイよ」
「でしょ?香澄って何着ても似合うんだよね。もとが可愛いから、逆に服を引き立てちゃうんだよね」
「本当にその通りだよ……」
パパは目を潤ませたかと思うと天井を見上げて涙を堪えているかのようだった。
そんなに私の姿を見て感動しちゃったの?
可愛いって罪だなぁ。
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