パパLOVE

卯月青澄

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櫻井詩織

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日本に着いたのはそれから6時間後のことだった。

既に陽は登り始めて明るくなっていた。

そして羽田空港からタクシーで東京都内の病院に向かった。

病院に着いたのは午前9時を過ぎていた。

病院の中に入り受付を済ませたあと、霊安室に足を運んだ。

霊安室の10メートル手前から足が動かなくなった。

いずみんに会うのが怖くてそれ以上進めなかった。

足がすくんで動かない。

「詩織、大丈夫?」

「怖い…いずみんに会うのが怖い…」

「一緒に行くから大丈夫よ。ゆっくりでいいから…」

桜子さんは私の腰に手を回すと私を支えながら歩き始めた。

「やっぱり無理…怖くて歩けない…」

「そう…少し外の風にあたってこようか?」

「うん…」

桜子さんに支えながら振り返り外に向かって歩き始めた…

その瞬間だった。

『しっ‥しお…りん…あり…が…とう…』

『えっ…』

いずみんの声が聞こえたような気がした。

それが気のせいなのか廊下を吹き抜ける風の音なのかはわからないけど、私にはいずみんが近くに来ているような気がした。

「いずみん?いずみん、どこ?」

「詩織、大丈夫?どうしたの?」

「いずみんが近くにいるような気がしたの…」

「もしかしたら近くにいるんじゃないかしら。詩織が来てくれたことを喜んでくれてるのかも…」

「私、いずみんに会いに行く」

私は再び霊安室に向かって歩き出した。

そしてドアに手をかけると、ゆっくりスライドして開けた。

部屋は薄暗く、部屋の奥の方にはベッドに寝かされ、顔には白い布をかけられた…いずみん…がいた。

「いずみんっ!」

私はいずみんのもとに走った。

そして白い布を震える手をおさえながらどかしてみた。

「いゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――」

私はいずみんの真っ白で冷たくなった顔に私の顔をくっつけて悲鳴をあげた。
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