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「そうか…そんなことが…」
「何て男なのかしら。信じられないわ」
「詩織さん、先ほど佐渡さんと今後のことについてお話をしました。詩織さんはプロのピアニストになって活躍したくて、うちの事務所のスカウトの話にのって芸能人になりました」
「そうです」
「でも、最近の仕事はピアノとは無縁のものばかりです。しかもやりたくもない水着の仕事までやっています。詩織さんはどう思ってますか?」
「どうって?」
「このまま今の事務所にいても、あなたはプロのピアニストには何年経ってもなれないわ。しかも大貫社長の怒りを買って、今後日本でピアノの仕事をするのも難しくなったわ」
「詩織さん、今の仕事を続けますか?それとも辞めますか?」
私だって今の仕事を続けるべきかいつも考えてる。
考えてるけど、今の私の力じゃどうすることも出来ないし決断する勇気もない。
「ピアノの仕事がしたいです。ピアノが弾きたいです」
「でも、この日本にいる限り詩織さんはピアノの仕事は出来ませんよ」
「だったらどうしたらいいの?」
「詩織、あなたのピアノは本当に素晴らしいと思う。世界のプロのピアニストを何人も見てきたけど、あなたほど華麗でキレイなピアノを弾く人を見たことない。あなたなら日本という小さい枠の中じゃなく、もっと大きな世界に飛び立つ選択をしてもいいと思うの」
「でも、私1人じゃ…」
「僕がいるじゃないですか。僕はあなたについていきます。あなたのマネージャーとして、あなたが世界に挑戦するお手伝いをさせて頂きます」
「坂本さん…こんな大きな会社を辞めてまで私についてくる価値はありますか?」
「ありますとも。あなたは世界で活躍するピアニストになれると確信しています。だから僕の人生をあなたに賭けてみます」
「私もあなたについて行くわ。詩織には私がいないと、直ぐにピアノの練習をサボろうとするし、全然上手くもならない。私がいれば世界のピアニストと肩を並べられる。いいえ、世界をも超越することが出来るわ」
「桜子さん、いいの?私なんかで」
「あなたがいいのよ。あなたじゃなきゃ駄目なの」
「ありがとう。2人とも本当にありがとう」
嬉しくて、2人がスゴく頼もしくて、病院のベッドにいることを忘れてワンワン泣いてしまった。
翌日。
本社に行って社長に会った。
「櫻井さん、大貫社長から電話があった。相当、ご立腹だったよ。自分が生きている限り日本では絶対にピアノの仕事はさせないと。何をしたら、あの温厚で面倒見の良い大貫社長を怒らせることが出来るんだ?」
うちの社長は大貫社長のことを何も知らないんだ。
何も知らないから友達でいられるんだ。
知ってたら絶対に友達なんてならないだろう。
「何て男なのかしら。信じられないわ」
「詩織さん、先ほど佐渡さんと今後のことについてお話をしました。詩織さんはプロのピアニストになって活躍したくて、うちの事務所のスカウトの話にのって芸能人になりました」
「そうです」
「でも、最近の仕事はピアノとは無縁のものばかりです。しかもやりたくもない水着の仕事までやっています。詩織さんはどう思ってますか?」
「どうって?」
「このまま今の事務所にいても、あなたはプロのピアニストには何年経ってもなれないわ。しかも大貫社長の怒りを買って、今後日本でピアノの仕事をするのも難しくなったわ」
「詩織さん、今の仕事を続けますか?それとも辞めますか?」
私だって今の仕事を続けるべきかいつも考えてる。
考えてるけど、今の私の力じゃどうすることも出来ないし決断する勇気もない。
「ピアノの仕事がしたいです。ピアノが弾きたいです」
「でも、この日本にいる限り詩織さんはピアノの仕事は出来ませんよ」
「だったらどうしたらいいの?」
「詩織、あなたのピアノは本当に素晴らしいと思う。世界のプロのピアニストを何人も見てきたけど、あなたほど華麗でキレイなピアノを弾く人を見たことない。あなたなら日本という小さい枠の中じゃなく、もっと大きな世界に飛び立つ選択をしてもいいと思うの」
「でも、私1人じゃ…」
「僕がいるじゃないですか。僕はあなたについていきます。あなたのマネージャーとして、あなたが世界に挑戦するお手伝いをさせて頂きます」
「坂本さん…こんな大きな会社を辞めてまで私についてくる価値はありますか?」
「ありますとも。あなたは世界で活躍するピアニストになれると確信しています。だから僕の人生をあなたに賭けてみます」
「私もあなたについて行くわ。詩織には私がいないと、直ぐにピアノの練習をサボろうとするし、全然上手くもならない。私がいれば世界のピアニストと肩を並べられる。いいえ、世界をも超越することが出来るわ」
「桜子さん、いいの?私なんかで」
「あなたがいいのよ。あなたじゃなきゃ駄目なの」
「ありがとう。2人とも本当にありがとう」
嬉しくて、2人がスゴく頼もしくて、病院のベッドにいることを忘れてワンワン泣いてしまった。
翌日。
本社に行って社長に会った。
「櫻井さん、大貫社長から電話があった。相当、ご立腹だったよ。自分が生きている限り日本では絶対にピアノの仕事はさせないと。何をしたら、あの温厚で面倒見の良い大貫社長を怒らせることが出来るんだ?」
うちの社長は大貫社長のことを何も知らないんだ。
何も知らないから友達でいられるんだ。
知ってたら絶対に友達なんてならないだろう。
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