パパLOVE

卯月青澄

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彼は忙しそうにもかかわらず嫌な顔1つせずに真剣に話しを聞いてくれた。

私の苦悩や葛藤を受け止めてくれて相談に乗ってくれた。

芝居についてのアドバイスもしてくれたし、今の私の境遇についても助言をしてくれた。

ますます彼のことが好きになった。

どんどん気持ちは大きくなって、その気持ちを抑えることも制御することも出来なくなっていた。

だから定期的に彼に会いに行った。

相談に乗ってもらうという名目で彼に会いに行き話をした。

色んな話をした。

CM撮影や雑誌の取材や写真撮影、ドラマや映画の撮影の話をした。

彼は楽しそうに私の話しを聞いてくれた。

彼の笑顔が見たくて色んな話しをした。

彼の声が聞きたくて沢山の質問をした。

彼の意見が聞きたくて多くの質問をした。

彼と繋がっていたくて連絡先の電話番号を聞いて、メールのアドレスも教えてもらった。

彼と会いたくて食事に誘って話しを聞いてもらったりもした。

私は彼のことが好きで、自分のことばかりしか考えていないのもわかっていた。

彼はいずみんのことが好きで、いずみんも彼のことが好きで、2人は付き合っていることもわかっていた。

でも、私は彼のことが好きで、どうしようもなくて、自分がいけないことをしているのもわかっているけど、それを正当化して彼に電話をして、彼に会って、彼と食事をした。

私は彼の2番目でもいい。

2番目でもいいから彼に好きになってもらいたかった。

彼に相談に乗ってもらうようになってから、嫌々ではあったもののピアノ以外の仕事も頑張れるようになっていた。

彼のおかげで芝居も少しは上手くなって人様に見せられるくらいにはなっていた。

全てが順風満帆だった。

彼とそういう関係になってから1年近くが経っていた。

「詩織さん、出版会社から仕事のオファーがきています」

自宅に送ってもらっている車の中で坂本さんにそう言われた。

「了解です。雑誌の取材ですか?」

「ではないです」

「また週間少年雑誌の写真撮影ですか?」

「いぇ、今回のは違います。写真集を出したいという依頼です」

「写真集ですか?別にいいですよ」

「ただの写真集ではありません。水着の写真集です」

「水着…ですか…」

今までは可愛くて素敵な洋服を着ての撮影だったし、ロケで海に行ったり山に行ったり出来たので、わりかし写真撮影は好きな方だった。

でも水着となったら話しは別…

「嫌なら今回はこの仕事はなかったことにしましょう。私は断ってもいいと思っています。これはあなたの仕事ではないような気がします」

「最初で最後の水着の写真集ということなら、やってもいいです」

きっとこれも、私のピプロのアニストとしての道を切り開くのに役立つと信じてオファーを受けることにした。

やりたくなどない。

出来ればやりたくない。

私の水着の写真を嫌らしい目で見て、変なことをしている男たちの姿を想像しただけで吐き気をもよおす。

気持ち悪くて仕方ない。
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