パパLOVE

卯月青澄

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それからはCMの反響のおかげもあって、CMのオファーが幾つか来た。

雑誌の取材もあったり、週間少年雑誌の表紙を飾ることになったりもした。

私の知らないところで、私の人気は信じられないくらいドンドン上がっていった。

数ヶ月前までは天才ピアニストと呼ばれていたけど、世間一般には名前さえ知られていないタダの女子高生だった。

それが1本のCM出演をキッカケに一気に人気者になり、あっちこっちから引っ張りだこになった。

ちょっとしたシンデレラガールになっていた。

一旦階段を上がり始めると、その足を止めることは出来ないし、許されなかった。

走り続けるしかなかった。

走るのを辞めたら転落し地獄の底に落ちて行くしかなかった。

また、私が芸能人として活動を始めて少しずつ人気が高まって行くと、学校での私への態度はゴロッと360度変わっていた。

今までは散々私のことを不良と言って毛嫌いしてきた連中が私に言い寄ってきた。

私を罵り白い目で見てきた連中が握手やサインを求めて私のところにやって来た。

本当に調子のいい奴らだと思った。

思ったけど、私を売り出してくれている芸能事務所の顔に泥を塗る訳にもいかず、丁重に応えてやった。


1年後。

私はピアノとは無縁の芸能活動をずっと続けていた。

高校を無事卒業して芸能人としてやってきていた。

一方、いずみんは高校を卒業後は服飾の専門学校に進学し、デザイナーになるための勉強をしていた。

私がピアノコンサートをする時に着るドレスを生涯作るのが夢だとか言って日々デザインの勉強に励んでいた。

私のために自分の将来を捧げようとしてくれるいずみんが愛おしいし、心から愛していた。

私もいずみんのためなら自分の生涯の全てを捧げる覚悟はある。

いずみんのためなら私の全ててあるピアノだって捨てることだって出来る。

大袈裟かもしれないけど、これが私のいずみんに対する愛の形。


話しは戻るけど、私の方はピアノ演奏の動画も配信していたけど、それ以外のピアノの仕事は何一つなかった。

世の中が私に求めるものはピアニストとしての私ではなくて、アイドルというかタレントというか、そう言った類のものとして求められていた。

芸能事務所も私をピアニストとしてではなく、そういうものとして使いたかったようだった。

だから次第にドラマや映画の話が多くなっていった。

それに歌も決して上手くないのにCDデビューもさせられた。

テンポの良い、元気になれるアイドルソングのような曲だった。

そこそこ売れたみたいだった。

それに伴ってピアノ演奏の動画配信は少しずつ減っていき、しまいには2ヶ月に1回くらいの撮影になっていた。

私が本当にやりたいことがやれなくなっていた。

でも、私が夢見る仕事はプロのピアニストとして日本全国で私のソロコンサートをすること。

そしていずれは世界に飛び立ち、世界中でコンサートを開くこと。

これに尽きる。

だから仕事がない時は、桜子さんのピアノレッスンを受けていたし、自宅でもピアノの練習は死ぬほどした。

ピアノの腕は落ちてはいないし、逆に悔しさをバネに前以上に成長していると思う。

それでもドラマや映画で芝居をしなくてはならなくなり、私の心は次第に荒んで行ったし思い悩んでいる日々が続いていた。

そして誰かに相談しようと考えた時、1番最初に頭に浮かんだのは舞台俳優の西島彰だった。

初めて彼に相談したのはまだ私が高校生の時で、彼の舞台を観に行った帰りに楽屋に訪れた時だった。
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