パパLOVE

卯月青澄

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私は人気のない場所を求めて外に出て、中庭にある1本の大きな木の下までやって来た。

プルルルルーープルルルルーー

『はい、吉野です』

『もしもし、櫻井さとみの娘の詩織と申します』

『病院に着いたんだね?』

『はい。あの…手術代のことなんですけど…』

『あなたは私だと思っているようだけど、私ではないですよ。あなた方が店に来た時に言ったと思うけど私もいくつか事業を立ち上げていて金銭的に人に貸すほど余裕はないんです』

『ホントに吉野さんじゃないんですか?』

『あぁ、断言します。私ではありません』

『だったら誰が?』

『それはわからない。本当にわからないんだ。わからないついでに言っておくと、さとみさんは1年くらいは仕事に復帰出来ないと思うんだが…』

『もしかしてクビですか?』

『そんな簡単な問題じゃないんだ。それに、さとみさんを辞めさせようとは私は思ってない。でも、その間の給料は支払うことは出来ないが…』

『それは当然のことです。その間は私が働いて家族を養って行きます。だから…だからもぅ1度お願いします。学校も辞めます。吉野さんにご迷惑はおかけしません。だから私をこの店で雇って下さい』

『それは出来ない。出来ないけど、あなたが学校を辞めてまで働く必要はないと思います』

『どういう意味ですか?』

『私は支払うことは出来ないが、さとみさんの給与と同じ…それに上乗せした金額の給与を支払うようにお願いされているんです。お金は受け取ってあって、毎月振り込ませてもらいます』

『一体誰が?』

『それがわかったら、私もこんなにも困惑していないんだけどね。あなた方家族は以前から誰かに守られているのかもしれないね』

『誰かに守られてる?そんな話し聞いたことないんですけど…その人の連絡先はわからないんですか?』

『わからないんです。連絡手段は向こうから一方的に送られてくるので顔も知らないし連絡方法すらないんです』

『だったら、その人にどうやったら話が出来るんですか?』

『それは無理かもしれない。それより、さとみさんに聞いてみるといい。今までにも助けてもらったことがあったはずだから。何か心当たりがあるかもしれない』

『わかりました…』

『じゃあ、何かあったら私に電話してくるんだよ』

『はい…』

電話を切ったあと、大きな木の下でしゃがみこんで心を落ち着かせた。
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