パパLOVE

卯月青澄

文字の大きさ
上 下
361 / 404

361

しおりを挟む
翌日。

「しっ‥しお…りん…きょう…はど…こか…いく…の?」

朝食を食べていると、隣に座っているいずみんが滅多に聞かないような質問を投げかけてきた。

「どこにも行かないけど、何で?」

「きっ‥きに…なった…から…きい…た…だけ…」

「家でグウたらする予定」

「そっ‥そう…」

何か気になることがあるというのだろうか?

私の様子がおかしいことに疑惑を抱いているのかもしれない。

それから朝食を食べ終えたいずみんは支度を終えると、「いっ‥いって…きま…す」と言って玄関を飛び出した。

料理の出来ない私は朝食の後片付けが担当になっていたので食器を手洗いしてから病院に行く準備をした。

そして戸締まりをしてから外に出て駐輪場に停めてある原付きにまたがりエンジンをつけた。

その瞬間…誰かが私のうしろに座った。

「ちょっと誰!えっ…」

怖いけど思い切ってうしろを振り返りながら声を荒らげて言うと、そこには学校に行ったはずのいずみんが何故かいた。

「いずみん、何してるの?学校は?」

「わっ‥わた…しの…ことは…いい…の…しお…りん…こそ…どこに…いく…の?」

「私?私は………ちょっと原付きでドライブしようかなと思って…」

「だっ‥だった…ら…わた…しも…いく」

「いいよ来なくて。いずみんが行くようなところじゃないから」

「いっ‥いっ…しょに…いく…」

こうなってしまうと、私が首を縦に振るまではいずみんは意地でも動かない。

いずみんは意外にも昔から頑固なところがあった。

「わかった。振り落とされないように、ちゃんと捕まっててよ」

「うっ‥うん」

ここまで来たら隠しておけない。

薄々だけど、いずみんは何かに気づき始めているみたいだ。

だから今がいずみんに伝える絶好のタイミングなのかもしれない。

それにもし、お母さんの病気を知ったいずみんがショックを受けて絶望したとしても私の全てでいずみんを支えようと覚悟した。

私は目的地を告げないまま、原チャで2ケツして病院に向かった。

「いずみん、着いたよ」

「こっ‥ここ…って…」

「病院だよ。お母さんが入院してる」

「おっ‥おか…あさん…が?」

「2日前に職場で倒れて病院に搬送されたの。隠しててゴメン」

「おっ‥おかあ…さんっ」

「いずみんっ」

突然慌てて走り出したいずみんを追いかけて腕を掴んで制止した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

100000累計pt突破!アルファポリスの収益 確定スコア 見込みスコアについて

ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
皆様が気になる(ちゃぼ茶も)収益や確定スコア、見込みスコアについてわかる範囲、推測や経験談も含めて記してみました。参考になれればと思います。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

ファミリーヒストリア~あなたの家族、書きます~

摂津いの
ライト文芸
「ファミリーヒストリア」それは、依頼者の家族の物語を本に綴るという仕事。 紆余曲折を経て、それを生業とする女性と依頼者や周囲の人たちとの心の交流。 あなたの家族の物語、知りたくありませんか?

百々五十六の小問集合

百々 五十六
ライト文芸
不定期に短編を上げるよ ランキング頑張りたい!!! 作品内で、章分けが必要ないような作品は全て、ここに入れていきます。 毎日投稿頑張るのでぜひぜひ、いいね、しおり、お気に入り登録、よろしくお願いします。

僕の彼女はアイツの親友

みつ光男
ライト文芸
~僕は今日も授業中に 全く椅子をずらすことができない、 居眠りしたくても 少し後ろにすら移動させてもらえないんだ~ とある新設校で退屈な1年目を過ごした ごくフツーの高校生、高村コウ。 高校2年の新学期が始まってから常に コウの近くの席にいるのは 一言も口を聞いてくれない塩対応女子の煌子 彼女がコウに近づいた真の目的とは? そしてある日の些細な出来事をきっかけに 少しずつ二人の距離が縮まるのだが 煌子の秘められた悪夢のような過去が再び幕を開けた時 二人の想いと裏腹にその距離が再び離れてゆく。 そして煌子を取り巻く二人の親友、 コウに仄かな思いを寄せる美月の想いは? 遠巻きに二人を見守る由里は果たして…どちらに? 恋愛と友情の狭間で揺れ動く 不器用な男女の恋の結末は 果たして何処へ向かうのやら?

処理中です...