パパLOVE

卯月青澄

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ファミレスの店長はお母さんが殺された時に犯人のナイフを素手で必死に掴んで僕らを守ろうとしてくれた中山さんだった。

中山さんは舞台俳優であるお父さんの昔からの熱狂的な大ファンで、あの事件のあとも劇場で何度か顔を合わせたことがあった。

しかも高校に通うのに都内に引っ越してからは、お父さんと一緒に中山さんの店で何度も食事をしたこともあった。

僕たちの秘密を唯一知っている数少ない人の1人だった。

だから僕とお父さんが前々からこの店を利用していることや中山さんと顔見知りであることを香澄には内緒にしてくれた。

最近は香澄の働いている姿を見にファミレスに寄ると、香澄に会いに来ているお父さんにバッタリ会う機会が増えた。

もちろん他人のフリはするけど…。

また、再会を果たした香澄とお父さんは次の日からまめに会うようになった。

食事に行ったり、出掛けたり、お父さんの家に泊まったりと良好な関係を続けていた。

嫉妬してしまうくらい仲の良い親子と言うか、恋人の同士のような距離感で香澄は接していた。

見ていて思ったのが、危険な香りがするように感じた。

香澄の悪い部分が出なければいいけど…。

更に学校では香澄に2度頬を叩かれることがあったり、奈未ちゃんとキスをすることになったりと、てんやわんやの大騒ぎが僕の周りでは起きていた。


7月、期末テストも終わり、あと数日で夏休に入る。

8月になれば東京都の全国サッカー選手権が開始する。

香澄のことやら奈未ちゃんのことで雑念が多すぎて心が乱れがちだけど、試合に集中して冬の決勝リーグに勝ち進んで必ず優勝する。

部活の練習をしていると監督に呼び出された。

「監督、何ですか?何かプレーで問題でも?」

「いや、プレーは何の問題もない。呼んだのは君に電話がかかってきていたらしい。1年の白川奈未さん、わかるだろ?」

「はい、わかります」

「校長が大至急、三枝くんにかけ直すように言ってくれって連絡があったんだ」

「わかりました。直ぐにかけ直します」

1生徒である奈未ちゃんの電話を校長直々に言ってくるなんて、流石は白川家だなと感心した。

なんて呑気なことを考えてる場合ではなく、奈未ちゃんがわざわざ学校に電話してくるくらいだから余程緊急なことに違いない。

それから部室に行ってスマホで奈未ちゃんに電話をした。

プルルルルル――プルルルルル――

『もしもし、三枝くん?』

電話に出た奈未ちゃんの声は震えていて泣いてるようだった。

『そうだけど、何かあったの?』

『ごめんなさい…』

『奈未ちゃん、何で謝るの?どうしたって言うのさ?』

『私のせいで、私のせいで…うぅぅぅぅぅ…』

奈未ちゃんは突然声を上げて泣き出してしまった。

ただ事ではないと思った。
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