パパLOVE

２５５

それから１０分後に救急隊員がやって来て、結菜をストレッチャーに乗せて運び始めた。

僕と月もそのあとを追って、一緒に救急車に乗った。

病院に到着すると結菜はストレッチャーに乗せられたまま、処置室に運ばれた。

それから３０分経たないで、結菜の両親と姉の七海さんが到着した。

月が機転を利かせて事前に結菜の家に電話してくれたおかげだった。

「今、処置室で検査やらしてるみたいです」

「そうなのね…月くん、快斗くん、本当にありがとね」


結菜の母親は泣きながら僕と月の手を順番に握りしめてお礼を言ってきた。

「何でもなかったらええねんけど」

「あの子はきっと大丈夫。絶対に大丈夫だから心配しないで」

母親は自分に言い聞かせるようにそう呟いていた。

本当はここにいる誰もが結菜の体の異変には気付いていたし、良くない病気に侵されているかもしれないと思っていた。

思ってはいたけど、信じたくない、何かの間違いだと願わずにはいられなかった。

それから１５分くらい経った頃、処置室から医師が出てきて、家族が診察室に招かれたので僕らもついていった。

「先生、うちの娘の具合はどうなんでしょうか？」

母親は医師の服を掴みながら食い入るようにそう言った。

「先ほど検査の結果が出ました。娘さんの病気は急性リンパ性白血病です。しかも病気はかなり進行しています。相当体がツラかったはずです」

「そっ‥そんな…あの子が白血病…」

余りのショックで椅子から転げ落ちそうになった母親を近くにいた父親が慌てて受け止めた。

「先生、結菜は…娘は治るんですか？」

「白血病は現代の医学であれば６０％の確率で治るとされています。ただ…」

「ただ何ですか？どれくらい生きれるんですか？何年？何十年？生きられますか？」

父親は母親の体を支えながら涙ながらにそう尋ねていた。