パパLOVE

三枝快斗

２３６

「もう帰ろう？」

「帰りたくない」

「何で？」

「帰りたくないの」

「だから何で？」

「女性には帰りたくない時だってあるの。それが女心なの」

「でも帰らなきゃ」

「そばにいてよ。私だって女子なんだからね。寂しい時だってツラい時だって苦しい時だってあるの」

「僕でいいの？結菜がそんな時に？」

「いいの。今はこうしていられるだけでいいの」

結菜は隣に座る僕に寄りかかり、肩に頭をのせてきた。

何か変な感じがした。

今までに感じたことのない不思議な気持ちにさせられた。

でも悪い気持ちはしなかった。

「あっ‥まただ」

何分くらいそうしていただろう？

突然、結菜は僕の肩にのせていた頭をどけると、姿勢をもとに戻してそう言った。

「どうかした？」

「鼻血が…」

結菜は上を向きながら指で鼻を押さえていた。

手にはベッタリ赤い血がついていた。

「大丈夫？」

「うん、大丈夫。最近、鼻血が出ることが多いの。貧血になることも増えたし。鉄分不足かな？」

「とりあえず、このティッシュ使って」

「ありがとう」

思い返せば、最近の結菜は体調が悪そうにしていることが度々あった。

明るく元気に振る舞っていたから、さほど心配はしていなかったけど、無理していたし無理をさせていたのかもしれない。

「結菜、あまり無理するなよ。大事な体なんだからさ」

「心配してくれるの？」

「当たり前じゃないか。親友が具合が悪いのに心配しないヤツがどこにいるんだよ。結菜は僕と月にとって本当に大切でかけがえのない親友なんだから」

「親友か…」

「えっ‥何？」

結菜は上を向きながら何かをボヤッと呟いていた。