パパLOVE

卯月青澄

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小学5年生の春。

「快斗、授業中にスマホ見てたよね?」

5時間目の休み時間、僕の席に来るなり結菜がムッとした様子で話しかけてきた。

「見てたけど何?」

「女の子の写真だよね?」

結菜は僕の斜めうしろの席に座っているから、僕の様子が丸見えだった。

「まっ‥まぁね」

「誰?」

「誰って言われても…」

「言えないの?」

「そういう訳じゃないけどさ」

「だったら誰なのか教えて?」

「それは…写真の女の子はぼっ‥」

「言う必要なんてあれへんで。誰にでも言いたないことはあるやん」

僕が「写真の子は妹だよ」と言いかけた時、月が横から僕の言葉を遮ってきた。

「今、快斗は教えてくれようとしたじゃない。月、邪魔しないで!」

結菜は喧嘩腰に月に向かってそう言った。

「ねぇ、もしかして月は写真の子が誰だか知ってるの?」

「わしだって知れへんで。知れへんけど、聞いたらあかんことだってある思うんや」

「ウソつかないで。本当は知ってるんでしょ?」

月もこの件に関しては何も知らなかった。

月と結菜には頃合いを見計らって話そうと思っていたけど、中々タイミングがなくて今日になってしまった。

だからこの機会に2人には話してしまおうと思った。

「ほんまに知れへんって」

「私だけ仲間はずれ?」

「そんなんじゃないって」

「せや、快斗の言うとおりやで」

「ウソつき!ウソつき、ウソつき、ウソつき!2年間もいつもずっと一緒にいたのに私だけ隠し事をされてたなんて絶対に許せない!」

「結菜、落ち着きなって。ホントに月は何も知らないんだ。僕が隠してたから悪いんだ。ゴメン、2人ともゴメン」

「何謝ってるの?それじゃ何か私が悪いみたいじゃん」

「結菜は悪くないよ。悪いのは僕だよ」

「いいよ、どうせ私が悪者なんでしょ?2人だってそう思ってるんでしょ?結構です。私は悪者です。極悪非道の悪者です。最低最悪の悪者です。宇宙一の悪者です」

結菜は普段は明るくて穏やかで優しいけど、1度怒らせると手がつけられなくなる。

「どうせ私が悪者なんでしょう」が口癖で機嫌が良くなるまで数日かかることもある。

今回も相当ヤバ目かもしれない。
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