パパLOVE

卯月青澄

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「柊木、フォークとナイフはないの?」

「なみちゃん、たこ焼きはこの楊枝を使って食べるんだよ」

「でも、この焼きそばという食べ物はフォークで食べるんじゃないの?」

「スパゲティじゃないよ。焼きそばは箸で食べるんだよ」

「生まれた時からそんなこと知ってるわ」

「うん、じゃあ冷めないうちに食べちゃおう」

それから楊枝という物を使ってたこ焼きを食べてみた。

「おっ‥おいしい」

初めて食べたたこ焼きは、見た目以上に柔らかくトロトロだった。

しかも秘伝のソースとマヨネーズの絶妙な味付けが余りにもマッチしていて絶品と言わざる得なかった。

あまりの美味しさに言葉を失ってしまった、

「どお?スゴくおいしいでしょ?」

「まっ‥まぁまぁね」

それから私は初めて口にしたたこ焼きが余りに美味しくて1人前をペロリと食べ終え、再び柊木に買いに行かせた。

最終的には私は3人前を軽く平らげていた。

「別に美味しいから、こんなに食べた訳じゃないから。お腹が空いてたの。決して美味しいから止められなかった訳じゃないから」

「僕もなみちゃんが美味しそうに食べてるのを見てたら箸が止まらなくなっちゃった」

「だから、美味しそうとかないから」

「なるほど」

「それより、妹さんにもお土産で買って行ってあげるんでしょ?」

「うん、食べさせてあげたい」

「柊木、たこ焼きを10人前買ってきてちょうだい」

「お嬢様、かしこまりました」

柊木はそう返事をするとたこ焼き屋に向けて歩きだした。

「なみちゃん、10人前ってどういうこと?」

「妹さん以外にも家族はいるわよね?みんなで食べるといいわ」

「嬉しいけど、そんなに買ってもらって何か悪いよ」

「子供が気にするようなことじゃないわ」

それから5分程して、たこ焼きを両手いっぱいに持った柊木が戻って来た。

「お嬢様、お待たせ致しました。では、さっそく帰りましょう」

帰りの車の中、試合で余程疲れていたのか彼は眠りに落ちて隣りにいる私の膝の上で眠っていた。

その寝顔を見ていたら、胸がキュンキュンと高鳴り、衝動を抑えることが出来なくなっていた。

私は眠っている彼の唇に恐る恐る触れてみた。

彼の唇は触っただけでプルンプルンと柔らかく、それ以上のことをしたくなっていた。

好きな人を眼の前にして我慢が出来なくなっていた。

自分で自分がセーブ出来ないのは生まれて初めてだった。

私は誰も見ていないのを確認すると、彼の唇に私の唇をゆっくりと重ねていった。

彼の唇は手で触った時よりも何十倍何百倍も柔らかく気持ち良かった。

何かの本で読んだことがあるけど、ファーストキスの味は甘酸っぱいフルーツの味がすると言ってたけど、全然違っていた。

私のファーストキスの味はとっても美味しいたこ焼きの味だった。
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