パパLOVE

卯月青澄

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家に帰って玄関のドアを開けると、ママがすっ飛んで来た。

「香澄、どこ行ってたの?」

「店長のアパートに行ってた。店に電話したら店長がインフルにかかって休んでるって聞いたから」

「何にも言わないでいなくなるから色んなところを探したんだから」

「ごめん」

「あんまり心配かけないで。命がいくつあっても足りないわ」

ママは私を抱きしめたあと、私の頬に何度も何度もキスをしてきた。

リビングのソファーに座らせられてからも、ずっと抱きしめられながら髪を撫でられていた。

私はママにされるがままジッとしていた。

「ママ、店長とは前からの知り合いだったの?」

「うぅん、香澄がファミレスで働くようになって初めて挨拶したのよ」

「写真撮ったことはない?」

「ないわよ。何で?」

ママは店長と知り合いだったことを簡単に否定した。

嘘をつく理由は見当たらない。

隠す必要もないと思う。

なのに何でしらばっくれるのだろう?

「別に…」

「香澄、今日の晩ごはんは何が食べたい?」

「う~ん、お肉が食べたい」

「わかった。これからスーパーで美味しいお肉を買ってくるからね。ちょっと遅くなるかもしれないけど、夕飯の支度までには戻ってくるから」

「わかった。美味しいお肉をよろしくね」

それから間もなくして、ママは近くのスーパーまで買い物に出かけた。

私は確認したいことがあったので、押し入れからママのアルバム3冊を引っ張り出して居間に移動した。

数年前に開いたきり今日まで1度も開かなかったアルバム。

見ると悲しくなってしまうから2度と開かないと思っていたアルバム。

それを開くと若かりし頃のパパとママが写っていた。

高校生の時に撮った制服姿の写真もあれば、遊びに出かけたり旅行に行ったりした時の写真が沢山残っていた。

この中には私の写っている写真はない。

私の写真は別に保管されている。

このアルバムはパパとママの思い出のアルバム。

どの写真も素敵で幸せそう。

この写真を見る限り、数年後に離婚してしまうような関係にはとても見えない。

悲しくて気付くと涙が溢れてアルバムの上にポタポタと流れ落ちた。

「ふぅ~」

泣いている場合じゃない。

確認しなきゃいけないことがあったんだ。

アルバムの中を片っ端から調べて行くと、ある場所でページをめくる手が止まった。

店長とママとパパが写っている写真だった。

そしてもう1人写っていた。

幼かった頃の私が…店長と一緒に写真に写っていた。

やっぱり店長とママとパパは知り合いで、ママが店長を知らないと言ったのは嘘だった。

憶えていないけど、私も過去に店長に会っていた。

でも何で?

店長と知り合いだという事実は隠さなきゃいけない問題があるのだろうか?

店長もなぜ隠す必要があったのか?

何で店長はパパがファミレスにお客として来た時に、初めて会ったような挨拶をしなきゃいけなかったのか?

何かとてつもなく大きな事実が隠されているようで怖くなった。
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