パパLOVE

卯月青澄

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西島香澄②

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「きれ…いに…なっ……たね」

ママは私の頭を撫でながらそう言っていた。

違和感しかなかった。

夢の中のママはどういう訳か言葉が上手く話せていなかった。

話せていないけど楽しそうに話をしていた。

そんなママが話しているのをパパも私も口を挟むことなく聞いていた。

ママが話しているのを嬉しそうに聞いている2人がいた。

もう一人の人物の様子はわからないけど、ママが話している間は静かに聞いているようだった。

何なんだろうこの状況…。

あっ…

過去のママに触れて、ほんの少しだけ記憶が蘇った。

そうだった。

確かにそうだった。

ママは決して……決して上手に話が出来なかった。

ママは話すのが極端に苦手だった。

人前で話すのは苦手で、家から一歩外に出ると余り人とは関わらないようにしていた。

話すのが嫌いな訳ではなくて、周りの人が話すスピードについていけないし、話すのが遅いので周りの人の迷惑になってしまうと考え、人と接しないようにしていた。

でも、外に出かけるのは好きで、よく外に連れて行ってもらったような気がする。

ママ…私の大好きなママ。

いつから今のように上手に話が出来るようになったんだろう?

話せなかったママと話せるようになったママの境目がわからない。

その記憶はない。

気付いた時にはママは今のように上手に話が出来るようになっていた。

積極的に人と接するようになったし、人前で話すのも苦手ではなくなっていた。

相当な努力をして今のようになったんだと思う。

別に私にはどちらのママも大好き。

前のように話が苦手で大人しそうに見えるけど実は話すのが大好きでユーモアがあるママと外交的で誰とでも仲良く話せる明るいママのどちらも好き。

どちらも私のママ。

死ぬまで一緒にいたい。

ママが死んだら生きていけない。

ママにもしものことがあったら私もあとを追って死ぬ。


目を開けると、部屋の入口で横になっていた。

ふと頬に触れてみるとグッショリと濡れていた。

あんな夢を見たから、眠りながら涙を流したのかもしれない。

それにしても変な夢だった。

でも、夢で見たものは過去の私たち家族の姿だった。
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