パパLOVE

卯月青澄

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私は彼と一緒にいる時の私を帽子をかぶった少年のようだったから、サトシと名付けた。

サトシはポケモンの主人公のサトシ。

私が毎週欠かさずに見ているアニメの主人公。

その日から、彼の練習終わりに外で出待ちをするようになった。

すると彼は練習で疲れているはずなのに、サトシ(私)を遊びに誘ってくれた。

色んなお店に行った。

テレビやネットで話題になっているお店にも連れて行ってもらった。

原宿の街中を歩いて、憧れの食べ歩きをした。

スイーツやたこ焼き、ハットグ、たい焼きなど色んなものを食べた。

私が出待ちをする時は、必ずどこかに行って沢山のものを食べた。

彼と一緒にいるだけで、心が落ち着き、幸せを感じることが出来た。

こんな気持初めてだった。

それでも、気をつけなきゃいけないこともあった。

何かを飲む時や食べる時は顔を隠して食べなくてはならなかった。

顔が見られて、私だとバレてしまうのだけは避けなければならなかった。

それに私は複雑な気持ちでもあった。

彼がサトシである私をファンとして?男子として?女子として?どう見ているのかわかっていないから。

それに学校では正体を隠してNさんとして私を助けてくれるし、彼自身も友達として私に接してきてくれてる。

でも私をどう思ってくれているのかはわからない。

連絡先を交換してプライベートで連絡取り合う仲でもなければ、遊びに行くこともない。

学校の外に出てしまえば、ただの赤の他人。

そんな関係を続けているのに、プレイベートの彼はファンの1人である何者なのかもわからないサトシ(私)と毎日のように出かけている。

私だけど私ではない人間と一緒にいる。

嫉妬しないわけない。

私はサトシ(私)に嫉妬した。

唯一の救いが、彼は私と訪れた場所や食べた物をリアルタイムで写真に撮って私に送ってきてくれること。

サトシ(私)といる時も私を忘れずにいてくれていることが嬉しかった。

私のことを考えてくれている彼が愛おしくてならなかった。

その写真がまさか隣にいるサトシ(私)に送られてきているなんて彼には全く想像も出来ないだろうけど…。

だから私は【私も食べたい】【私も行きたい】と返信をした。

すると彼は【是非、今度ご一緒に】と返してきた。

今、ご一緒していますと思いながら彼を見つめた。

【誰と食べに行ってるんですか?】【誰と一緒ですか?】と彼にメールしてみた。

何て彼が言ってくるのか知りたかったから。

【仲の良い友達だよ】

そんな当たり障りのない答えが返ってきた。

ちょっと期待外れだったけど、本当のことなんか言える訳ないよね…。
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