パパLOVE

卯月青澄

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どれくらい泣いていただろうか…

ようやく落ち着きを取り戻した私は、机の文字を消そうと掃除ロッカーの中からぞうきんを取り出し、流しまで歩いて行った。

そして雑巾を濡らして教室に戻り中に入ろうとした。

えっ…

そこには、西島くんがいて、片手には雑巾、片手には何かの液体が入ったプラスチック製のボトルを持っていた。

どうして彼が…

私が困惑していると、彼は雑巾に液体を染み込ませると、何の迷いもなく私の机を拭き始めた。

私の机に書いてある【死ね】という落書きを拭き始めた。

そんな彼に声をかけることなど出来るはずもなく、私は黙ってその様子を見ていることしか出来なかった。

「ふぅ~よし、終わった」

彼はそう言ったあと、なぜか私の机の中を覗き込み手を入れ始めた。

えっ…何やってるの?

そして私の手紙を取り出すのと同時に、彼は自分の鞄から封筒を取り出し私の机の中にそれを入れた。

心臓がドックンドックンと激しく鼓動していた。

顔が燃えるように熱く、口から熱線を吐き出せそうだった。

西島くん…

あなたが…

あなたがNさんだったのね…

そして私は走った。

もしかしたらと思い、下駄箱に向かって走った。

そして、下駄箱までやって来て私の靴箱を覗いてみると、そこには先ほどまであった砂が敷き詰められた上履きがなくなっていた。

その代わりに、私の字で書かれた正真正銘の私の上履きが置いてあった。

彼がやってくれていたんだと直ぐにわかった。

わかったのと同時にどこに向かうでもなく、ひたすら階段を上へ上へと駆け上がって行った。

とにかく全力で走りたかった。

この感動と喜びを抑えることが出来ず、ひたすら走った。

いつの間にか屋上へ出る扉の前まで来ていた。

そのまま屋上へ飛び出すと四方を取り囲むフェンスまで思い切り走って捕まった。

興奮冷めやらぬ中、とりあえず冷静になろうと深呼吸をした。

それでも現実とも思えない事実に頭の中は混乱していた。

まず1つずつ頭の中を整理しなきゃいけない。
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