パパLOVE

卯月青澄

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この日を堺に、櫻井さんへの嫌がらせはなくなった。

なくなったけど、前と変わらず誰も櫻井さんに話しかけることはなかった。

それでも良かった。

櫻井さんが平和にこのクラスで卒業を迎えられるなら。

全ては飯田くんのおかげだった。

飯田くんがありもしない罪を被ってくれたおかげで、学校側の人間を巻き込み動かした。

たった1人の勇気ある行動がいじめという問題を解決に向かわせた。

尊敬に値する人物であり、親友として誇りに思う。

それに飯田くんがいたから彼女に嫌がらせを気付かせることなく救うことが出来た。

僕一人だったら彼女を守ることは出来なかった。

全ては飯田くんの協力があったからだ。

飯田くんにはいくつかお願いをして行動してもらった。

放課後に下駄箱にある彼女の上履きと僕が用意した上履きを毎日すり替えてもらい、ある秘密の場所に隠してもらった。

そして朝一番に登校してきた僕が秘密の場所から彼女の上履きを取り出して彼女の下駄箱に戻した。

つまり嫌がらせをしていた人間は、櫻井さんの上履きではなく僕が用意した上履きに砂を敷き詰めて、やった気になっていたということだ。

この作戦を実行するにあたって、櫻井さんの上履きをもう1足用意する必要があった。

だから僕は彼女と同じサイズの同じ上履きをもう1足用意した。

かかととゴム部分に名前を書かなくてはならなかったので似せて書いた。

気付いてはいないようだ。

また、体操着が問題だった。

彼女は身の回りの物は殆んど鞄に詰めて持って帰るけど、体操着だけは持って帰らなかった。

嫌な予感はしていた。

そしてある日の朝、学校に行くと彼女のジャージが破かれていたことがあった。

予感はしていたから驚きもしなかった。

予感はしていたから対策はしていた。

こんな日がいつか来るんじゃないかと思って、彼女の体操着を僕は買って用意しておいた。

その日から学校が終わって彼女が教室を出て行ったあと、僕は彼女の体操着を毎日持って帰った。

そして次の日の朝、彼女の体操着を元の位置に戻した。

彼女が持って帰る日はない訳ではないけど、持って帰ることは殆んどなかった。

ここでも問題があって、体操着も僕が買った一着では足りなかった。

出来る限り清潔でキレイな体操着を着てもらいたかったので、こまめに洗濯をする必要があったからだ。

そうすると翌日には乾かないのでもう一着が必要になるという訳だ。

だからもう一着用意した。

こうして僕が用意した2着の体操着を上手くローテンションすることで、常に清潔な体操着を着てもらうことと、嫌がらせから守るということに成功した。

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