パパLOVE

卯月青澄

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クラスの連中の中には彼女を良く思わない人間が少数いることは確かだった。

実際に、影で悪口を言っているのを何度も聞いたことがあった。

授業中に彼女をみんなで無視しようという手紙が出回ったこともあった。

クラスの全員がそれに賛同した訳ではないけど、半数の人間が彼女を無視することに手を上げて実際に行った。

自分だけやらないと、今度は自分がやられる番だという心理に至った為なのか、徐々に人数は増えていったように感じた。

スケープゴーティング…何かで目にした言葉である。

やはり、こんな小さな教室という社会の中でも、誰か一人を悪者にすることで、クラス全体の安定を図ろうとするくだらない心理が働いているようだった。

でも、もともと人と話さない彼女には無視するという行動自体無意味なことだった。

それが余計に腹を立て次なる行為へと発展へ繋がることが怖かった。

「櫻井さん、次は理科の授業で移動あるから俺等と一緒に行こう」

飯田くんは2時間目の授業が終わり休み時間になると、いつものように彼女に話しかけていた。

飯田くんは彼女が吃音症だということは未だに知らない。

教える必要が彼にはないと思ったから教えていない。

たとえ知ったとしても、彼は同情などしないし偏見の目で見ることもしない。

知っても知らなくても彼は何も変わらないのだろう。

そして、彼女を無視しようとクラス中に手紙が回ってきたあとも、何事もなかったかのように話しかけていた。

飯田くんはそういう人だった。

見た目は決して良いとは言えないけど、人の気持がわかる優しい人だった。

そんな彼だから僕は中学の時からずっと友達でいられたし、友達で居続けたかった。

「あ‥あ……り…が……と…う」

「よっしゃあ。じゃあ、行こう」

飯田くんがそう言うと彼女は恥ずかしそうに小さく頷いた。

その姿が僕の目にはたまらなくかわいく映り自然とニヤついてしまった。
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